この件は以前に「592市場における都市美とは?」で書いた。
http://datey.blogspot.jp/2012/03/592.html
まだ、審議会議事録も変更デザインもウェブ検索では出てこないので、ここでは景観瓢論の域をでないが、興味をかきたてられる。
1月の審議会の部会につづいて3月23日に開催、「テーマパークのようで抵抗がある」、「これを通すなら都市美審議会はを解散したほうがいい」などと委員からの過激な発言があったことを新聞(朝日新聞2012年3月24日横浜版)が伝えている。
高さと色の一部変更があったらしいが、審議会の委員たちが最も問題とした(らしい)あのゴチャマゼ様式建築デザインに関しては変わることはなかった模様である。
たしかにこれはテーマパークそのものである。
(計画図http://goo.gl/w00Cg)
だが、まさにそれが事業者の狙いなのだから、根本のスタンスが異なるのはどうしようもない。
皮肉にも、委員がそれを指摘すればするほど、事業者はそのデザインの意図を保証をされたように思い、事業の成功を確信するだろう。
結婚式場という非日常の場は、まさにテーマパークそのものである。その日だけは王子様王女様になってまわりから祝福され、明日から待ち受ける厳しい日常もテーマパークの日々が続くような幻想を抱かせる場、それが結婚式場である。
昔は婚礼(結婚式とは言わない)は、その夫婦が暮らす家でとり行うものだった。
それはあくまで日常世界の連続の位置にある行事だから、住家でなければならなかった。
親戚や町内の人々が寄り集まって、その日だけは非日常の花嫁と花婿を、明日からの日常へと円滑にとり込むための行事だった。
それがだんだんと家の外にでていくようになってきたのは、家が狭いとか核家族とかの時代になってきたからだろう。
しかし、かつてのように公民館でやっていた頃は、まだ異日常レベルだったが、ブライダル産業の登場からは非日常行事へと進み、婚礼は結婚式という儀式になっていく。
そして儀式のための仕掛けも非日常化たテーマパークとなり、ディズニーランドのように入場者一人当たり1万円以上を消費させる産業に成長する。
若者が少なくなってくると、ブライダル市場も狭まるから、ここで生き残りをかけた寡占を狙って産業界は必死になっているに違いない。
そのためには、その立地選定、施設内容そしてサービス内容の競争になる。
そこで話が元に戻って、横浜新港地区のこの施設立地は申し分のないテーマパーク性を備えている。
運河に面した見晴らしよい場所、テーマパーク性をいやがうえにも演出してくれる背後の遊園地、そして憧れのヨーロッパ古典?建築のキリスト教会、、、おお、これほど非日常性の演出は、ここでなければ外国に行くしかないよなあ。
でも外国まで行くには金がかかるけど、ここなら日本のどこからでもやってくることができる非日常世界になりうる。
そう、この婚礼の場は、ある日だけ外からやってきて、いつもと違う風景の中でいつもと違うことを体験するのである。つまりテーマパークだ。
そこに審議会との深い溝ができる。
審議会の委員たちはがテーマパークを否定するのは、ここが非日常の世界ではないと心得ているからだろう。せいぜい異日常世界であろう。
それは、外からの目ではなくて、いつも見ている内からの目、つまり日常からの視線で風景を見るからだろう。
そこに異物としかみえない何かが登場することに、耐えられない心情が働くのはよくわかる。
ところで、ここにある遊園地コスモワールドの風景には、委員の方々は耐えられるのだろうか。
遊園地の散らかった風景とこの新婚礼施設とは好一対で、たがいに引き立て役になるだろう。
では、審議会の良しとする建築風景はどのようなものだろうか。
新港埠頭側から眺める新開発地区の建築の立ち並ぶ風景は、どうやら近代的赤レンガ倉庫街のイメージらしい。
近代的とつけたのは、本物の赤レンガ倉庫があるのに、今の倉庫?は屋根がなくて壁はレンガ色である。
つい最近できたカップヌードルミュージアムという、まさにテーマパークの建物が、どう見てもテーマパークに見えないことで、それがよくわかるのだ。
じつは、わたしはこのインスタントラーメンの博物館ができると聞いたとき、あのラーメンのカップそのものの形の建物をイメージしたのである。そしてそれが提案されたとき、横浜都市美審議会がどうそれを審議するだろうかと思ったものだ。
審議過程は知らないが、できたものを見ると、ただの赤い箱であった。http://www.cupnoodles-museum.jp/about/index.html
あらかじめ知らないと、そばに寄るまであの世界に普及した「インスタントカルチャー」を作り上げた記念碑とは気がつかない。
まあ、それもミュージアムとしてのひとつの見識であるが、隣の温泉施設も反対側の研修施設も、同じような赤い四角な箱で、ここではっきりいうと、その連続する風景はまことにつまらないのである。
このあたりを日常の散歩の場とするわたしでも、ここはせめて異日常の風景であっても良いと思うのだが、ほぼ新開地駅前風景(たとえば新横浜)とたいしてかわりがない。
そこに殴り込みをかけてきたのが、この厚化粧花魁頭の非日常結婚式場である。さて非日常と日常あるいは異日常との戦いは、どちらに軍配が上がるか。今は非日常が寄りきり勝ちしようとしているようだ。
この厚化粧デザインを支えるのは、まさにブライダル市場である。市場が景観をつくるのは、今の日本の都市と郊外を見ればよくわかる。
ついでながら、かつて木造土蔵の横浜の街並みに、赤レンガの開港記念館ができたとき、その厚化粧花魁頭の建物は、人々の目にどう映ったのだろうか。
(参考)神奈川新聞2012年3月24日
MM21地区「国内最大」式場計画、景観協議が不調「再考を」/横浜
横浜・みなとみらい21(MM21)新港地区に計画されている国内最大規模の結婚式場をめぐり、横浜市長の諮問機関「都市美対策審議会」の部会は23日、横浜市と事業者が進めてきた都市景観協議が「不調に終わった」との意見をまとめ、建設計画の再考を求めた。市は週明けに事業者に結果を伝える方針。
協議の方針について、1月の部会で「さまざまな時代背景の建築デザインを模倣し混在させるのは避けること」など30項目の意見が委員から出されていた。
市は23日、「協議を進めたが、すべての意見に対応できなかった」と報告。これに対し、委員らは「もっと時間をかけて審議を重ね、いい計画にしていきたい」などと指摘した。
事業者は紳士服量販大手AOKIホールディングスの子会社で、予定地は同市中区新港2丁目の市有地と民有地の計約1万8千平方メートル。欧風スタイルの結婚式場やカフェなどを設ける計画で、2013年秋の開業を予定している。
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