2012/04/24

611震災ガレキによる森づくりで思い出す

津波の防波堤として、森の長城を「宮脇方式」で海岸沿いに造れという、宮脇昭さんの提言が実現しそうだ。
 震災ガレキを使って防波堤となる20~30m高さの連続盛り土を海岸沿いに築く。
 その上に潜在自然植生の各種郷土種樹木の苗木を、1平米に4、5本も密に植える。
 その苗木は、毎年1mづつほども成長して、やがて森の長城つまり緑の山脈をつくりあげる。これが津波に対抗するというのである。

 どうやらこれが復興政策として実施されるらしいが、これには震災ガレキを埋め、積み上げてよいものかという、廃棄物処理の問題が背後に横たわっているらしい。
 化学的な毒物もあれば、降り注いだ核毒に汚染されているかもしれない。それを選別して一切除けることが可能だろうか、あるいは、ある程度に選別すれば埋め立て利用可能だろうか、というのである。法的な問題もあるらしい。
 現実にはどのようになるのか、わたしには分らないが、ある程度選別すればよいというのが、宮脇さんの考えらしい。
 これが復興政策になったのは、野田首相の一声というかなり政治的な局面かららしく、政府や自治体の施策現場では戸惑いもあるようだが、どうかがんばってもらいたい。

 それで思い出したことがある。1974年にドイツでこれと似たようなことをしてしている現場に行ったのだ。
 宮脇さんと共に行った「ヨーロッパ自然保護・環境創造調査団」の旅で、ハンブルグでの北方郊外でのことである。
 訪ねたそこは、ゴミ処理場のゴミの山であった。案内して説明してくれたのが、市役所の自然保護局の人であった。
 ゴミの焼却は一切しないそうで、ここに埋め立てるのだ。
 
 広い原野の中を市が買い取り、大きな穴を掘る。この穴掘りは、出てくる砂利販売をセットで民間業者にやらせるので、収益になるそうだ。
 この穴に家庭ごみや産業廃棄物を埋めて、更に積み上げて30mくらいの山になっている。その斜面にはブルドーザーが行き来して土をかぶせたり、ゴミを積んだりしている。
 聞けば、ゴミを積んだら次は土を積むというように、ゴミと土で何層も重ねるのだそうだ。こうすれば腐敗は起きないので、現場は臭わなかった。
 最下層のゴミは、水質に影響を及ぼさないものとする。

 そうして30m程度に積みあがった最後は、この土地にもともとあった表土を20~30cmの厚みでかぶせる。この表土はここでの作業のはじめに、あらかじめ剥ぎ取って保存しておいたものである。
 この表土に、この土地の潜在自然植生種の苗木を植える。5年もすれば立派な森になるそうだ。ここではこれから植えるのだが、別のところで、このようにして作った森の小山をいくつも見せられた。レクリエーションの場となっている。

 その調査団の報告書をかねた出版物「緑のヨーロッパ・環境創造への道」(1976年 神奈川新聞社)を引っ張り出してみた。そこにこのような図が載っている。

 この「ゴミ+土+現地の表土+その土地本来の植生」という組み合わせを見て、その後もアウトバーンの緑化でも同じようなこと見たりして、宮脇さんの言うことが現地でよく理解できた旅であった。
 ただし、それがドイツでは一般的になっているかというと、そうでもないことも分ったのは、ドルトムントで同様にして作ったレクリエーション施設で現地側の説明を受けているときに、市民団体の人からからゴミの埋め立てに反対という言葉に出会ったのだった。

 写真はそのときの模様である。右の坊主頭が宮脇さん、その右に白髭のチュクセンさんが見える。チュクセンは宮脇さんの師匠で、潜在自然植生という概念の確立とその応用による国土緑化を進めた人である。
 ドイツとは気候や植生が大きく異なる日本で、その日本流の理論と実践を研究して成果を挙げたのが宮脇さんであった。

 この調査旅行の頃は、宮脇さんのいる横浜国大は建設中で、そこに実験として後に宮脇方式といわれる植栽方式が始まったころであった。それは今は見事な森になっている。
 70年代は日本の公害問題で緑の復権を唱える宮脇さんは引っ張りだこになり、今は東日本大震災で自ら現地へ足を運び提言をして実施へと、傘寿を超えた身で忙しいようだ。
 宮脇さんが活躍しなくてもよい時代が来ることを期待するばかりである。

●参照「まちもり通信」サイト関連ページ
道路緑化の文化史的考「高速道路 成熟へ向かう現代の意志の道」
http://homepage2.nifty.com/datey/dororyokka3.htm

●「伊達の眼鏡」サイト内関連ページ
609森の長城が津波災害を防ぐ
http://datey.blogspot.jp/2012/04/609.html
583イオンの森と津波
http://datey.blogspot.jp/2012/02/583.html
560核毒の森づくりが始まる
http://datey.blogspot.com/2011/12/560.html
479●21世紀の「谷中村」は「核毒の森」
http://datey.blogspot.jp/2011/08/47921.html
001ふるさとの森の大学キャンパス
http://datey.blogspot.com/2008/05/httpwww.html

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