横浜市都市美審議会の景観審査部会が、事実上差し戻ししたけど、事実上そのままで戻ってきた結婚式場計画の景観デザイン、さて、これからどうするのだろうか。
実は審議会には強制力はないので、事業者があくまでこのデザインで行くと押し通すことができるらしい。
それどころか、横浜市にも強制力はないから、事業者が協議を打ち切ると言ったら、それで行くしかないらしい。
要するに景観について市と事業者が協議をするのであって、許可とか指示するという仕組みではないのである。そこが都市計画法や景観法と、横浜市条例の違いである。
もしもそうなると、この審議会がNOを突きつけた結婚式場の景観デザインが、公共の場に登場して市民や来訪者の評価に晒されることになる。
ここで評価の目は、事業者に向くと同時に、NOといった審議会にも向けられることになる。
事業者への評価は、その施設が繁盛するかどうかって、かなり露骨で分りやすい目盛りになるだろう。どこででもやってきたこのビジネスモデル(コンビニのデザインのようなものだろう)が成功すれば事業者の勝ちである。
市と審議会とは、NOと言いながら実現させることについて、制度の根本を問われることになる。
では、横浜市と審議会とはどのような景観を志向しているのだろうか。
横浜市が定めた「みなとみらい21 新港地区街並み景観ガイドライン」なるものがある。そこにこの結婚式場の敷地を含むあたりの景観作りの基本がこう書いてある。
方針1 みなとの情景の演出
①海に向かってゆとりを持ち、連続性が感じられる街並み
②開放的で居心地のよい水域・水際線の風景
方針2 歴史の継承
③歴史的シンボルとしての赤レンガ倉庫への見通し景観
④歴史性を意識し、高さを抑えたまとまりある街並み景観
方針3 “島”としての個性の演出
⑤歴史やみなとらしさを活かしたシークエンス景観
⑥歩いて楽しく、賑わいのある街並み
⑦周辺地区からの見下ろし景観
もちろんこれだけではなくて、建築デザインについてこまごまと例示しながら書いてある。いちおう読んでみて、事業者の出した資料とざっとつき合わせて見たが、わたしにはどこが違反しているのか分らなかった。
だから審議会は無茶を言っていると、わたしは言おうとしているのではない。
多分、わたしが分らないことが問題なのであろうと思う。つまり、指針に書ききれないことが問題となっているのである。
問題を分りやすく言えば、西欧様式の模倣コラージュなんて、いまどきポストモダンじゃあるまいし、あんまりなデザインだ、まあ、こういうことなんだろう。
でも景観ガイドラインに、「下手な模倣デザインをしないこと」なんて、バカバカしくて書けっこない。建築家をバカにしている。
「模倣はやめてくださいという恥ずかしい文言を入れないと、こういうものはとめることができない時代になってきている」(3月都市美審議会 中津委員)
下世話に言えば、ひところのラブホテルみたい、というところだろう。
外野のわたしだから勝手なもんである。委員なら思っていてもこうはいえない。せいぜい「テーマパークみたい」とおっしゃる。
ところが実は、この「テーマパークみたい」こそ、いろいろな意味で最も的確にこの結婚式場を表現していると、わたしは思うのだ。発言した委員の思わぬ方向で、これは事業者を勇気づけたかもしれない。
テーマパークと結婚式場そしてラブホ、おお、なんと興味深いテーマなんだろう、次はこれを追って考えてみよう。 (つづく横浜港景観事件(3))
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