「風格、品位が少し劣る・・・私から見るとテーマパークのように見えてしまう」(3月景観部会 加藤委員)
こういわれるとテーマパークの雄である東京デイズニーランド(1983年開業)が怒るだろう。
発言した委員の意図はともかくとして、テーマパークとは言いえて妙で、まことに的確な指摘であると、わたしは思う。
おりしもその東京デイズニーランドの新たな企画で、シンデレラ城での結婚式を売り出したそうだ。評判よいらしい。
委員からテーマパークだといわれて、多分、事業者は心の中で大喜びしたであろう。専門家がお墨付きをくれたって。これでわがビジネスモデルは成功間違いなし。
そうなのである、これは結婚という明確なテーマ性を持って演出される遊園、つまりテーマパークなのだ。
うまいことにちょうど隣には本物の遊園地があって、ふたつあわせるとミニディズニーランド、と言うと褒めすぎか。とにかく見事にテーマパークとなっている。もしかしたら大観覧車やジェットコースターでの挙式なんてのも、やるかもしれない。
都市美審議会議事録にはこういう発言もあるから、まことに興味深い。
「ここの特性、隣に観覧車がある特性も踏まえて、どうしていくかということを非常に考えさせられた案件でもあります」(横浜市都市づくり部長)
「非常に考えた」結果が、この共同テーマパークになっているというわけだろう。分りやすい。
「隣のコスモワールドさんとの調和を図りました」
事業者は隣の遊園地を景観デザインに見事に取り入れたである。わたしが事業者なら、こう言うにちがいない。
景観デザインとは、周囲の調和する風景を作ることだとする教科書的な定義からすれば、これはお手本どおりである。
また品のない言い方をするが、事業者は遊園地の景観を人質に取ったのである。もう一方の横浜市の抱える人質は「赤レンガ倉庫」である。
どちらの人質が高い身代金を取りやすいだろうか、なんて、ますます品が落ちてくる。
ところで、横浜市が決めているこの地区のデザイン指針に書いてるいろいろなことをしげしげと読んでみると、横浜市さえも実はテーマパークを意図しているらしいのだ。
デザインテーマは簡単に言えば“赤レンガ倉庫がある開港の歴史”であるらしい。
早く言えば、新港地区という島を“赤レンガテーマパーク”に作り上げることをめざしているのである。
島、ゾーン、敷地グループというように、赤レンガテーマパークを入れ子状に作り上げるらしい。
それはそれでなかなかに素晴らしいことである。
今回の問題は、その入れ子のひとつが赤レンガではないということである。達磨の入れ子人形を順にあけていったら、途中でバービーが出るのだ。せめて赤い靴の女の子ならよかったのに。
この問題の原因は、「よこはまコスモワールド」という赤レンガに何の関係もない風景が厳然と実在しており、これが人質になったことだ。
事業者の描いたどの絵を見ても、大観覧車が人質然と描いてあることからよくわかる。
コスモワールドは暫定利用と言いながら1990年4月オープンだから、すでに22年の歳月が経っている。
実態上は暫定ではない。
この間、まわりとは明らかに異なる景観を顕示してきて、その大観覧車はみなとみらい21地区のシンボルとなっている。
審議会の議事録の中に、この事業地にある横浜市の土地の賃貸借契約は30年とするとあるので、定期借地権方式であろう。ということはどんなに長くても30年でこの建物は消えることになる。遊園地の22年を暫定というなら、こちらもほぼ暫定である。
暫定だからいい加減でいいのだ、と言うことではないのはもちろんである。
あれがよくてこれがいけない理由はないでしょ、って、言ったかどうか知らないが、いわれる理由はありそうだ。そこで部長さんは「非常に考えた」のかもしれない。
隣の遊園地が先に消えるかもしれないが、そのあとにできる施設はこの結婚式場を人質にしたデザインになるかもしれない。
ラブホデザインに至る前に話が長くなった。あとはまた次回へ(つづく横浜港景観事件(4))
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