<(その5)からの続き>
新国立競技場の都市計画変更で、その高さ制限を30mから75mまで緩和したことが、地域景観に与える影響でもっとも大きなことあることは間違いないし、だからいろいろと世間から騒がれている。
ここは地区整備計画ではA-4地区、0.8ヘクタール、容積率限度600%、高さ限度80mとなっている。ということは、現容積率300%から2倍になり、高さ30mから2.7倍に緩和である。
想像するに、将来はこのスタジアム通りも青山通りなみに、高く大きく都市計画変更するつもりであろう。この突出ぶりはそうとしか考えられない。
はじめてこの地区計画をみたとき、ここの突出ぶりはどうしてだろうかと思ったものだ。そして、新国立競技場で無くなるなにかの施設の移転先なんだろうなあ、それならやむを得ないか。
なにが無くなるのか図をにらんで、ハハン、都営住宅が無くなるんだ、だからここに高層の都営住宅を建てるのだろうと気が付いた。しかし、違っていた。無くなる施設の代替え施設建設用地であることは違っていなかったが、移転して来るのは都営住宅ではなくて、JSC本部と日本青年館だそうである。
建築敷地約6800㎡、施設規模は最大で延べ約41000㎡まで可能で、両施設の既存機能を維持するとすれば31000㎡程度となる、とある。(建設通信新聞2013-06-06)
では、公園用地になってしまう都営住宅は、いったいどこに建てるだろうか。これはどうも、現住民は他の都営住宅に移転させて、代替の都営住宅は建てないらしい。
ということは、オリンピックのせいで、公営住宅の戸数が減少するということになる。JSCという政府機関がこういうことをやってよいのか。
日本は居住政策がどんどん貧困になってきているが、まさかオリンピックの最初の敗者が都営住宅になるとはねえ、なんだか解せない感がある。
誤解のないように付け加えるが、わたしはここの住民が他の都営住宅に引っ越すことが解せないのではなく、代替住宅を建てないで公営住宅戸数を減少する政策後退を解せないのである。こんどの関東大地震が来たら倒れるものもあるが、倒れなくても住めなくなる高層共同住宅が頻出して、ものすごい数の住宅難民が出るぞ。
大規模分譲型共同住宅では、建てなおすのも同意が大変なことは、阪神淡路でも東日本でも姉歯事件でも十分に経験済みなのになあ。
公的賃貸住宅を充実しておけば、東日本大震災でも住宅難民がまだ少なかったはずだ。いまになって災害公営住宅をどかどか建てているから、よくわかったでしょ、今度はね。
容積率と高さ緩和ばかりか、都市公園としての既存の都市計画決定も、ここだけ廃止決定をした。
都市公園を狭くする決定はないだろうと思うので、たぶん、都営住宅と日本青年館の跡地が公園になることから、都市公園の指定区域全体はひろがるから、ここを廃止することができたのだろう。
よく見ると、この北に既に開園している都営住宅東隣の明治公園の三角公園(ここでは仮にこう言っておく)までも、合わせて廃止している。(公園変更計画図参照)
明治公園の全体図
変更前の明治公園開園状況
でも図をよく見ると、三角公園とテニスコートの間には、細い道のようなものがはいっていて、二つの土地は繋がっていない。この道のような土地は、たぶん、その西奥にある外苑ハウスの進入路の土地だろう。
しばらく睨んでいて、ハハン、これは三角広場とテニス場の二つの跡地を一体とみなして、テニス場跡地に巨大JSCビルを建てるために、都市計画の緩和措置を引き出すためのお土産だろう、と、推理を働かせたのである。
緩和するにはそれに見合う公共へのお土産が必要である。それがこの広場とスタジアム通り沿いの4m幅の歩道状空地であるらしい。
更に、日本青年館のホールのような文化施設による社会貢献も、お土産に認められているかもしれない。
まあ、これも東京都の都市計画当局が「東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準基準」をもとに定めたのだし、第201回東京都都市計画審議会でばっちり審議した結果だから、それでよいのだ、たぶん。
都営住宅は消滅なのに、JSCと日本青年館はもしかしたら焼け太りか、ふ~ん。
外苑ハウスは、新JSCビルで朝日も眺望もさえぎられるデメリットがあるが、そのかわり神宮球場からの騒音もさえぎられるメリットはある。もしかしたら建て替えのときには、ここにも地区整備計画を追加して、テニス場なみの緩和をねらって地区計画に参加したのかしら。(つづく)
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