3・11の記憶がまだ生々しいいまどき、もう建築界はデコンデザイン復活かと見れば、ロンドンのことだった。
数日前にもこの広告を見たので、ちょっと気になって読んだら、バタシー・パワーステーションと書いてある。ロンドンの有名な歴史的建築物の発電所である。
あの堂々たる発電所が壊されて、こんなへナチョコビルになるのか。いったい誰が設計なんだと観れば、さすがグレートブリテンの広告で、建築家の名前フォスターとゲーリーが書いてある。このひん曲がりはゲーリーのデザインだな。
どうも気になるので、貧者の百科事典(ウェブサイト)でbuttersea power stasionを探したら、あった。この発電所跡地を再開発して、住宅とショッピングなどの街にするらしい。
なんとそのデベロッパーがマレーシア資本だそうだ。アジアの旧植民地国が、ヨーロッパの旧宗主国に開発資金を投じる時代になったのだ。
そしてゲーリーの描く絵も見つけた。ふ~ん、なんだかすごいね、ないなに、flower buildingだってさ、そうか花咲き乱れビルってのか。
これって、普通のビルの形で模型を作って、その途中をギュッと握ったらこうなりそうだな。ゲーリーはそうやって設計するのかなあ。deconstructivismだな。
デベロッパーの話が載っているが、アパートメント(あちら「マンション」とは言わないんだな)は、その住戸ひとつひとつが独立しているようにする、という。ふむ、それでゲーリーは立体的に街並みにしたのか。
日本でもどこでも共同住宅ビルが、多様な中身を持ちながら、ひとつのビルとなって退屈なズンベラボーである。一戸建てが並べば街並みになるが、一棟にまとめるとつまらない風景になる。それが並ぶとますます退屈になる。
そこでこれを縦方向に街並みにしたってことだろう。香港の九竜城を思い出した。あれには暮らしがにじみ出ていたから面白かった。
そういえば、戦後に急増した日本の団地も、洗濯物がひるがえり、色とりどりの布団が出て、なかにはバルコニーに風呂場を増築したりして、ビルの表面に生活がにじみ出ていていたから、あれは立体街並みだった。
近ごろの高層共同住宅ビルは、景観がドウタラコウタラうるさいから、つまらない退屈なノッペラポーになってしまった。
ロンドンでは、それを超えて立体街並みをゲーリーがデザインするって、このフニャフニャデコン建築を好き嫌いは別として、それもありだろう。九竜城の超貧困層や団地の安月給取りじゃなくて、こちらは億ション階層向けだけどね。
どうだろう、日本にこういうのを建てたら、大地震が来てあちこち傾いたりひびが入ったりしても、もともとそうなのだから分らない。阪神淡路でお目にかかった風景、3・11で悪夢の風景だから、そうなっても七難隠していいかもしれない、いや、よくないか。
本物のデコン風景 1995年阪神淡路震災の神戸三宮にて |
この歴史的建築のバタシー発電所の保全について、大論争が起きているらしい。結局は安全上の問題で取り壊すこちになったが、同じ外観デザインで、特にこの建物のシンボルである4本の大煙突も復元するのだそうだ。オフィスなどに使うらしい。
この4本の角を持つゴツイ煉瓦造りの大発電所建築を核にして、まわりにフランクゲーリーとフォスターの超モダン建築が建つことについても、その対比を良しとするか、けしからんとみるか、論争があるようだ。
それにしても、近代工業社会のシンボル的な機能の発電所が、現代消費社会のお化けヘナチョコ建築に蚕食される風景は、文化史的に興味深いものだ。
フランクゲーリーによる新デコン風景か 右が発電所 |
なお、プランナーはラファエル・ヴィノリであることも分かったが、日本の都市再開発でプランナーがネット検索で分るなんてことは、ありえないよなあ。日本のプランナーはいつも陰の人。
とにもかくにも、歴史的建築の発電所に敬意を表したらしく見えるプラニングが、なんともスゴイ。
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