2014/11/03

1021【新聞広告イチャモン】いまどきデコン建築かとみれば歴史建築保存も絡むロンドン再開発

 なんだか奇妙な建物の絵が新聞広告に乗っている。新規開発不動産を売ろうとして、その完成予想図らしい。ひん曲がっていて、童画みたいである。
 3・11の記憶がまだ生々しいいまどき、もう建築界はデコンデザイン復活かと見れば、ロンドンのことだった。

 数日前にもこの広告を見たので、ちょっと気になって読んだら、バタシー・パワーステーションと書いてある。ロンドンの有名な歴史的建築物の発電所である。

 あの堂々たる発電所が壊されて、こんなへナチョコビルになるのか。いったい誰が設計なんだと観れば、さすがグレートブリテンの広告で、建築家の名前フォスターとゲーリーが書いてある。このひん曲がりはゲーリーのデザインだな。

 どうも気になるので、貧者の百科事典(ウェブサイト)でbuttersea power stasionを探したら、あった。この発電所跡地を再開発して、住宅とショッピングなどの街にするらしい。
 なんとそのデベロッパーがマレーシア資本だそうだ。アジアの旧植民地国が、ヨーロッパの旧宗主国に開発資金を投じる時代になったのだ。
 
 そしてゲーリーの描く絵も見つけた。ふ~ん、なんだかすごいね、ないなに、flower buildingだってさ、そうか花咲き乱れビルってのか。
 これって、普通のビルの形で模型を作って、その途中をギュッと握ったらこうなりそうだな。ゲーリーはそうやって設計するのかなあ。deconstructivismだな。
 デベロッパーの話が載っているが、アパートメント(あちら「マンション」とは言わないんだな)は、その住戸ひとつひとつが独立しているようにする、という。ふむ、それでゲーリーは立体的に街並みにしたのか。

 日本でもどこでも共同住宅ビルが、多様な中身を持ちながら、ひとつのビルとなって退屈なズンベラボーである。一戸建てが並べば街並みになるが、一棟にまとめるとつまらない風景になる。それが並ぶとますます退屈になる。
 そこでこれを縦方向に街並みにしたってことだろう。香港の九竜城を思い出した。あれには暮らしがにじみ出ていたから面白かった。

 そういえば、戦後に急増した日本の団地も、洗濯物がひるがえり、色とりどりの布団が出て、なかにはバルコニーに風呂場を増築したりして、ビルの表面に生活がにじみ出ていていたから、あれは立体街並みだった。
 近ごろの高層共同住宅ビルは、景観がドウタラコウタラうるさいから、つまらない退屈なノッペラポーになってしまった。

 ロンドンでは、それを超えて立体街並みをゲーリーがデザインするって、このフニャフニャデコン建築を好き嫌いは別として、それもありだろう。九竜城の超貧困層や団地の安月給取りじゃなくて、こちらは億ション階層向けだけどね。
 どうだろう、日本にこういうのを建てたら、大地震が来てあちこち傾いたりひびが入ったりしても、もともとそうなのだから分らない。阪神淡路でお目にかかった風景、3・11で悪夢の風景だから、そうなっても七難隠していいかもしれない、いや、よくないか。
本物のデコン風景 1995年阪神淡路震災の神戸三宮にて

 この歴史的建築のバタシー発電所の保全について、大論争が起きているらしい。結局は安全上の問題で取り壊すこちになったが、同じ外観デザインで、特にこの建物のシンボルである4本の大煙突も復元するのだそうだ。オフィスなどに使うらしい。
 この4本の角を持つゴツイ煉瓦造りの大発電所建築を核にして、まわりにフランクゲーリーとフォスターの超モダン建築が建つことについても、その対比を良しとするか、けしからんとみるか、論争があるようだ。
 それにしても、近代工業社会のシンボル的な機能の発電所が、現代消費社会のお化けヘナチョコ建築に蚕食される風景は、文化史的に興味深いものだ。
フランクゲーリーによる新デコン風景か 右が発電所
単なる広告から歴史的建築の保存の本質的な話にも行き着いて、面白い。ここにいろいろと絵が出てくるので、その中の3枚を引用した。
 なお、プランナーはラファエル・ヴィノリであることも分かったが、日本の都市再開発でプランナーがネット検索で分るなんてことは、ありえないよなあ。日本のプランナーはいつも陰の人。
 とにもかくにも、歴史的建築の発電所に敬意を表したらしく見えるプラニングが、なんともスゴイ。




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