大げさに言えば日本戦後都市再開発実録とでもいうか、普通に言えば街づくりドキュメンタリーの本が出た。
そのタイトルは『RIAが建築で街をつくりはじめて』(著:近藤正一ほか、発売:建築技術、2022年、税込2400円)と言う。
タイトルにRIAとあるように、これは近藤正一が率いてきた都市・建築計画設計専門家集団の(株)アール・アイ・エー(通称RIA)が日本各地でおこなってきた都市再開発事業のうちから12都市のプロジェクトを軸にして、それに関わった各事業についてのRIA担当者、各自治体や中央官庁の行政マン、学者研究者たち17人の専門家が、事業の経緯や論考そして広く再開発論を語る。
実はわたしも若いころに担当した事業について執筆したので書評を控え、感想を書いて宣伝することにする。
著者17名の連名になっているが、実はこれらの中で中心的に書き語る著者は一人であり、それはRIAを率いて来た近藤正一(人物紹介は本文末尾参照)である。これはむしろ近藤正一都市再開発作品・論考集というべきでかもしれない。
それにしてもRIAが携わった再開発事業の数は100を超えるだろうに、よくぞここまで絞り込んだものだ。それを各事業解説だけのオムニバスに陥らずに、そこからまた日本の戦後都市再開発の手法と思想の歴史的変遷の全体像を組み立ててみせる。
日本古典芸能の能に例えると、シテ役は近藤正一であり、各プロジェクトごとにシテツレが登場するが、全体を俯瞰して進行するワキ役は有賀正晃である。近藤と有賀はそれぞれの事業の数多くの物語を削りに削って絞り込んで、ひとつの能に仕立てた作者でもある。これは近藤が遺した「街伝書」というべきだろう。
表題にRIAが登場する既刊単行本がもう一つある。
『疾風のごとく駆け抜けたRIAの住宅づくり』(2013年、彰国社)である。これはまさに近藤正一住宅作品・論考集である。そう、これは近藤が遺した「家伝書」である。
つまり近藤正一作品・論考集の住宅編に次いで、今回は都市編が上梓されたのだ。次は建築編がいつの日か登場するかもしれない。
なおネット空間に、近藤がその仕事を語る動画を見ることができる(早稲田アーカイブス、建築学会「建築討論」)。
住宅編・都市編どちらの本にもはじめに植田一豊が登場する。植田は山口文象と三輪正弘とともに1952年にRIAグループを結成して、その後にRIAが歩む住宅から都市への展開を創り上げた人である。二つの本の実質は近藤の仕事集としても、まずは先達としての植田への敬意を払う。そこから1952年出発の建築家集団RIAが社会の変化に対応し、植田をリーダーとして建築家から都市計画家へと広がる職能的展開を見ることができる。
更に植田と近藤の前を歩いた山口文象の本『建築家 山口文象 人と作品』(1982年)があり、これも山口文象の評伝をもって日本近代建築史を語らせた。
これらを合わせてRIA3部作としよう。
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