2009/02/09

094【怪しいハイテク】盲人案内用ロボット「ひとみ」はいつ完成するだろうか

 友人の博士が発明した「盲人ガイド用自走ロボット車いす」(名前は「ひとみ」)のことは、このブログにいつか書いた。
   →今もし失明したら

 博士の家の近くの住宅街に住む、目の不自由な主婦が「ひとみ」をつかって街を歩きたいそうである。
 そこで、「ひとみ」にあらかじめ進むべきコースを覚えさせる必要があり、博士が現地でその準備とテストをするというので、わたしが助手として手伝いに行った。

 「ひとみ」は、電動車椅子に乗せたデジタルカメラが見るコースを、コンピューターで走行方向を制御しつつ進行する。
 カメラやコンピューターのことはわたしは分からないから、コースに進行目印の白線を貼ったり、道のデコボコを土方工事で直したり、車いすを押したりひいたりするのが助手の役目である。つまり、博士は頭脳労働、わたしは肉体労働担当である。

 もうひとつ重要な役目は、われらが御茶ノ水博士(覚えていますか、鉄腕アトムの生みの親)も歳とったので、そばでわたしが彼のやることを忘れぬように復唱するのである。
 といっても、こちらも物覚え悪い老人だから、あまり信用はならないが、居ないよりはましである。

 ロボット「ひとみ」は、なんというか、聞き分けがよいのか悪いのか分からない子である。
 博士が一生懸命にコースを教えているのに、玄関から一向に動きだそうとしない。
 なんどコンピューターで教えても動かない。博士はそれでも嫌がらずに何度も教える。どうしてだろうか、動かないなあ。
 と、突然、博士が叫ぶ「あ~ッ分かったッ、車いすモーターの電源が入っていなかったあ」 ん、もう、テレビだって電源が入っていないと写らないんだよ。
 その様子はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=XC576GQxjtg&t=24s

 そうやってひとみは道を覚えつつ、だんだんと街に出て行く。街にはいろいろな障害物があるので、助手はそれを直したり除去したりする。
 博士が予想しないひとみの逸脱行動もあるので、その原因を探してつぶしていく。
 太陽の照り具合、生垣の育ち具合さえも関係する。幼児を連れて歩くと、道端にあるものにひょいとそれていくアレである。手間もかかるが、面白くもある。
 いずれコースを教えつくしたなら、そこを自動で進む「ひとみ」につかまって、眼の不自由なその主婦は近くに散歩や買い物に行くのだ。さてその日はいつだろうか、。

2009/02/04

093【歴史・文化】東京の歌舞伎座の改築の姿はどうなるんだろうか

 東京東銀座にある歌舞伎座を建替えるそうである。
東京駅が昔の形に復原、中央郵便局は後ろに超高層を建ててファサード保全、さて今度はどうするのかと発表された絵を見たら、何にも特徴のない超高層ビルが後ろに建っていて、それはそれで中央郵便局のような紙ヒコーキデザインよりもよいのだが、ご本尊の歌舞伎座の方は今の形のイメージ継承とでも言うのか壁面からは過剰な装飾をそぎ落としているが、入母屋風の屋根があって、玄関には唐破風が付くらしい。

 その絵を見てのわたしの第1印象は、おお、これは妻木頼黄設計の昔の勧業銀行本店そっくりだなあ、ってことであった。もっとも、妻木のほうがプロポーションが若干よい。丸の内にあったこの建物は、数奇の変転を経て今は千葉トヨペットって名の企業の本社建物になっているそうだ。

計画は伊藤滋委員長(相撲協会理事でお忙しいことでしょう)、設計は三菱地所、デザインは隈研吾という組み合わせらしい。
 今の形で再現か、戦災前の形に復元か、いやその前の形か、いやいやその前の初代の姿に復元か、いや現代のモダンデザインがよろしいとかなんとか、かまびすしいことになっているのか、なっていないのか、よくわからない。

 さて、銀行協会、工業倶楽部、東京駅、三菱1号館、中央郵便局とあれこれあってここまで来ると、建築史学者・保存派建築家はとにかく復元さえすれば何でもよろしい一本やり石頭から、少しは利口になって世の歴史の流れというものを考える時代になっているかしら、。
 歌舞伎座は彼らにとって、一種の踏み絵となりそうである。
 これら6つ並べて、さてどれが一番で、どれがビリケツでしょうか、なんて。

 それにしても隈研吾って、何でもありの便利な人だなあ。
 隈の名を見ると、ドリックオーダーがどーんと建っているバブルデザイン店舗(今は葬儀会館になっているとか)をいつも思い出す。

 そういえば、石原都知事が、風呂屋みたいでいやだって、デザインにイチャモンつけたとか。
 浮世風呂も歌舞伎小屋も、出自の猥雑さに大して違いはなかろうに、見下されて差別されちゃった。

 参考→東京駅復元反対論  

2009/02/03

092【くたばれマンション】大不況が隣に迫ってきて名ばかりマンション工事がストップした

 わが家のあるビルの隣に、昨年の春ごろから建設が始まった共同住宅は、延床9000㎡、 180戸、高さ31mの結構大きいビルである。
 なんだか最近は工事騒音が聞こえないなあと思っていたのだが、その工事が、このところ止まっているらしい。

 いつも通行に邪魔な工事車両が出入りしないし、2階床までのコンクリートうちが終わって型枠もはずしたのに、そこから鉄筋が立ちっぱなしで更に上の階へと型枠を組む様子がない。
 周りをグルッと見ると、現場事務所が閉じているし、デシベル数値が大きく表示されていた騒音計にも蓋をしたままだ。
 おお、わが家のお隣までも不況が迫ってきたぞ。資金繰りがつかないのだろうか、工事ストップだ。
 まあ、静かになって助かるが、このまま立ち腐れになるのも、ヘンな雰囲気で困る。

●追記(2009年4月3日)
 とうとう工事が全面ストップしたようだ。
 2階床までコンクリートうちしたままで、現場事務所も足場もクレーンも全部はずして、回りに板囲いだけになった。
 2階床から立ち上がっている鉄筋には、ビニールらしきもので雨にぬれてさびないようにしている。
 もう、誰も居ない。さてどうするのだろうか。
 これは工事業者のものなのか、発注した不動産屋(プロパストと書いてある)のものか。誰が管理するのだろうか。
 そのうちにはげたかファンドが買い叩いて工事再開するのだろうか。

2009/02/02

091【言葉の酔時記】AED(A安心E延命D電撃器)がしゃべる説明がさっぱりわからない

 AEDなる器械の講習会に参加した。なんでも、道端に人が倒れて意識不明なら、これを使って生き返らせる器械らしい。
 日本語ではなんとかかんとかジョサイドウなんとかかんとかというらしいが、覚えられない。 安心延命電撃器としておこう。

 以下、講習会の講師の人の言葉と、機械の言葉であるが、実によく分らないのであった。
  人が倒れているの観たら、まず、こう言いなさい。
 「あっ、人が倒れている、人工呼吸だ、」
 これくらいは、私も分る。心臓マッサージもやるのであったか、けっこう力が要る仕事である。

 次に、マッサージしながら野次馬にこういうのだ、
 「あなたっ、見てないでスグ119番して救急車呼んでッ、そっちの人ッ、AEDを探して持ってきてッ」
  AEDってのを近頃は学校や公的施設などにはおいてあるのだそうだ。

 まあ、それを探して持ってきた人がいるとして、次はそれを使うのであるが、講師の消防署員がいうには、
 「器械のしゃべる通りにすれば分かります」 
 AEDは、ノートPCくらいの大きさで、表面にタッチボタンがいくつもついていて、電線がぶらさがる2枚の手のひら大の小判型粘着シートもある。

 器械がしゃべる。
 「パッドをコネクターでセツゾクしてください」 
 え、パッドって、なに?、コネクターって?、セツゾクって?
 消防署員に聞けば、パッドとはその小判型の粘着シートのことで、コネクターとはそれにぶら下がる電線のことで、セツゾクとは電線の端っこを器械のボタンが点滅しているところに差し込むことだそうだ。
 じゃあ、こういってもらいたいね。
 「電線の端っこを灯りがついているところに差し込んでください」

 次に器械がまたしゃべる。
 「パッドをカンジャにソウチャクしてください」 
 エッ?、また聞けば、カンジャとは倒れている人のことで、患者らしいし、ソウチャクとは1枚を右肩にもう1枚を左横腹にはりつけることだそうだ。
 なるほど、小判型シートに、それを貼り付ける位置の絵が描いてある。

 世間では患者って、病院にいる病人のことで、道端に倒れている人を患者とは思わないよなあ。
 ソウチャクとは装着らしいが、背中に肩こりの貼り薬を装着してくれ、なんて言うか?
 この器械は、なんで普通の日本語でしゃべらないのか? これもPCのマニュアルみたいに、おバカ技術者が直訳したんだろう。困ったもんだ。

 まあ、そうやってまた声にしたがって点滅するボタンを押せば、貼り付けた2枚のシートの間に電気が流れて、止まりそうな心臓をビリビリドカン電撃一発!、失神からビックリ起こす。
 1回で起きなければ何回も繰り返すのだそうだ。 なんだか乱暴な。

 でも、そのAEDはひとりの人に専用に使うのだそうだ。こっちが生き返ったから次はそっちだと、数人にひとつのAEDを使いまわしてはいけないのだって。
 となると、例えば道端にわたしと若い美女とが倒れていたとする。もちろん偶然に通りがかりで、え~と、そう、突然雷が落ちてきたのだ。
 さて、AEDがひとつしかないとなると、う~ん、わたしの助かる確率はかなり低いなあ。
 あなたを選ぶ(選ばない)電撃器ってか、。

2009/01/30

090【世相戯評】景観帝国主義

 昨日、媒図かずをのまことちゃんハウスのことを書いた。
 でも、こんなことをいっている人もあることを雑誌で読んだ。

「東京をはじめ、日本景観てコントロールされていないじゃないですか。行政も民間も個人も片っ端から身勝手につくっていった日本の街には、電柱がお似合いと思うんです。電柱のない新興住宅地を見ていても、一戸一戸が非常に無個性で、町になると味気なくてつまらない。そのつまらなさをナントカしていたのが電柱や電線だったと思います。周囲との融和を考えていない住宅があれだけたつ中、ゴチャッと電柱群があることで、緩和しているのですね。だからそういう電柱をなくすとは何事かと(笑)。日本の街並みが美しければ、たしかに電柱は邪魔かもしれませんが、無秩序な街を無秩序でもって排しているほうがまだいいと思います。」(庵野秀明 「建築雑誌」2009.01 新景観対談)

 アナーキーなような常識的なような、真面目なようなひねくれたような話なので、ご当人がなにが本気なのか分からないが、かなり面白い。
 そういえば、むかしは電柱と電線は文明開化のシンボルで、地域の誇らしい景観だった。日本橋通り→本郷など、明治期東京の名所写真や絵には、ものすごい電線がある。

 ところが、電柱電線は醜いから排除しろとか、ゴチャゴチャ看板は汚いから統一しろとか、街なみはスペイン風にせよとか、いや和風で統一しろとか、今や景観帝国主義様がお通りの感があることも事実であり、それはもちろん景観無政府主義が蔓延する日本であるからだ。

 この対談のある雑誌には、コンビナート工場の配管を見るとか、高速道路インタチェンジを下から見あげるとか、水門ばかり見るとか、古い団地を訪ねるとか、そもそも景観ではなくて物マニア見物好きに語らせているのだが、期せずして景観帝国主義批判になるのが面白い。

 はじめは腹が減って(あまりに汚くて)何でもいいから食べたい(直したい)から、いまや偏食やイカモノ食いもあって何が悪いの景観論議となって、ひとつの段階に来ているようだ。
 東京駅復原反対論や日本橋上空高速道路撤去疑問論やらも、そのうちのひとつなのかしら、。

 参照→東京駅復原反対論  ディズニーランド化する都市景観

2009/01/29

089【東京風景】楳図かずのだんだらの家の設計者はだれなんだろうか?

 武蔵野市の低層の木造住宅が立ち並ぶ中に、漫画家の楳図かずお自邸が3階建て、赤白だんだら模様の壁面、目玉窓の塔つきという奇抜な意匠で建った。
 近所の人が気持ち悪いと塗り直しやらを求めた景観裁判で、訴えた住民側が敗訴したニュースが今朝の新聞にある。
 裁判官が言うには、「ちょっとヘンだけどたいしたことないじゃん、周りにもヘンな色の家があるよ」みたいな判決らしい。
 写真がそのだんだら家だけ写していて、景観としてどうおかしいのか分からないのが、ニュースの記事としては当を得ていない。
 まあ、わたしなら普通の住宅地に住んでいて、隣にこんな家を珍妙な建ててほしくない。一過性のコンセプチュアルアートならまだしもねえ、。
 前に鎌倉に済んでいたとき、近所にまっ黄色(うんこ色)の家が建って、毎日いやな感じで前を歩いていたものだ。明らかに風致地区の法令違反だが、訴訟する勇気はなかった。
 ところで、新聞でもWEBでもいろいろ見ても、共犯者たるこの家を設計した建築家は、ぜんぜん登場しない。一体どなたの設計なんでしょうか。
 メディアもそこまで追っかけないし、読者も知りたいことではないのか。
 所詮、日本の建築家はその程度のものである
 あ、そうだ、まち中みんなだんだら模様にしてしまえば、媒図さんも嫌になるのじゃないかしら、って、いや、アーティストの神経は別だからなあ。

2009/01/25

088【世相戯評】しっかりしておくれよ、アメリカのオバチャン

 USA大統領に小浜市が、じゃなくて伯母増し、じゃなくてオバマ氏がなったとて、マスコミは一斉にトップ記事で伝えている。さすがに世界大不況震源の社長が替わって、何をするのか気にかかるか。
 わたしの一番の心配は、不況打開策として新たに戦争を起こすかもしれないってことである。なんといってもこれが一番の方策だからだ。特需で産業は活気づくし、あの単純頭の多い国民たちは団結するし、、。
 9・11みたいにどこかの国に攻め込んでもらえば、おっぱじめる大義名分がたつから、CIAがその工作をするかもって、おお、いやだ。
 日本だって、太平洋戦争後の大不況から立ち直ったのは、1950年から始まった隣の朝鮮戦争のおかげだったのだ。威張れたものではない。
 就任式にあんなに大勢が集まるってのが、怖い。集団ヒステリーになる性質の人が多いような気がしてくる。
 ま、人気なさ過ぎもまた問題だけど、政治はどっちかといえばその程度のほうが健全なような気がする。
 ところで、シュワルツェネガー・カリフォルニア州知事をシュワチャンと日本では呼ぶらしいが、ならばオバチャンCHANGE=オバチャン芸かあ、、。

2009/01/24

087【老いゆく私】慣れない台所仕事でうっかり熱い鍋をつかんで火傷した

 炒め物をしてすぐに中華鍋を洗おうとして、ちょっと傾いたのを直そうと縁をうっかりつまんでしまった。ウワッ、アチッ、イタ~ッ、すぐに水道の冷水を流しっぱなしで冷やす冷やす、、。

 熱い鍋をつまむなんて、やっぱり老いたからだよなあ、なんて考えつつ、冷やす冷やす。母親が80歳を越えた頃によくガスコンロつけッぱなしにするので、電磁熱式コンロに替えたことを思い出す。
 親指、人差し指、中指の横腹がちょっとこわばっているが、今のところ水ぶくれも出ていない。でも、箸を持ちにくいし、キーボード打ちもぎこちない。まあ、たいしたことはないだろう。

 これも老化現象に違いない。これまで同じような鍋あらいをなんどもしたが、初めてのことだ。だからこれは老いに違いない。
 なんでもこれまでにない現象がわが身に起こったら、それはすべて老いのせいと定義することに決めたのだ。

 このところ肌が痒くなりやすいのも、昔はそんなことはなかった。 
 道で転ぶ。昔はそんなことなかった。あ、幼時にはあったな。
 目が遠くなった。昔は隣の列車ホームの時刻表が読めたもんだ。
 外では不味い食い物ばかりだ。若い頃はなに食っても美味かった。
 腹が立ちやすい。昔は何を聞いても見ても優しかったもんだ?
 こうして赤瀬川原平の言う老人力がパワーアップしてくるのだろう。 

2009/01/21

086【言葉の酔時記】お役所用語は面白くも腹も立つ

 都市計画審議会の公募市民委員となって2回目の審議会があった。
 1週間前にあらかじめ議案書を送ってきた。議題は8つもあり、読んでもわからないことがあるので、2回にわたって市役所に聞きに行って、延べ10人に話を聞き、縦覧図書を全部見て、現地も全部見てきた。
 なにしろこの間に平日は4日間しかないのに、外にも大学や約束や父母の納骨やらあって、えらく忙しいこの1週間だった。

 その結果、8つのうち2つの原案に関してその扱いに疑問が残ったので、審議会でしゃべるのに間違わないように紙に書いて出席した。
 その詳細は「まちもり通信」に書いているのでごらんいただくとして、お役所用語で面白いことがあった。

 都市計画を決める前に、市長がその計画を書いた図書を一般に縦覧して、市民から意見書を出してもらう手続きがある。その意見に対して、都市計画決定権者としての市長が、見解を述べるのである。
 その中でおかしかったのは、見解書に「横浜市道路局によれば、云々」と書いてあって、見解を述べる横浜市長が自分の部下に聞いたらこうだったと、そのような書き方が2箇所あることについて、そりゃないでしょう、書き直せ、といったら、面白い市側の答弁(いいわけ)が出たことだ。

 「都市計画決定権者の横浜市長と道路事業をする横浜市長は人格が違うからこう書いている」
 まあ、役所用語ならそうなんだろうけどねえ、市民感覚としてはなんだか変であるよなあ、。
 それなら厳密にこう書いてほしい。
 「都市計画決定権者の横浜市長中田宏は、道路事業者の横浜市長中田宏に聞いたところ、云々」
 こう書いてくれると分かりやすい、、かなあ、よけい分からんか、。

 参照→都市計画審議会を改革しよう
土地区画整理事業は今も有効か
都計審と生産緑地の不思議

2009/01/20

085【くたばれマンション】借家か持家か

 地下鉄に乗ったらこんな広告に出会った。

 曰く
このまま11万の家賃を払い続けても、後には何~んにも残らない、と、思った時から急に家賃が恨めしくなった。マンション、住み替え、一戸建て、いい人生に」

 これはどうも「賃貸住宅はよくないよ、マンションでも、一戸建てでも、買ったほうがいいよ」ということらしい。
 別にこの広告主のジャマをする気はないが、わたしはこの広告主とは考え方が、正反対に違うのである。悪しからず。

 「何~んにも残らない」ので何か残ると思ってうっかりマンションを買うと、どえらいものが残るのである。
 それは、借金と危ない家と個人では建て直しもできないミニミニ土地が残るのである。
 つまり不良資産を抱えるリスクが大きいのである。

 近いうちに確実に起きる関東や東海の大地震で、マンションという大規模区分所有型共同住宅ビルは、倒れるかもしれないし、倒れなくても必ず大被害がおきて、大修繕となるのは専門家でなくてもそれは常識である。
 大地震で全く壊れない家なんて、それは莫大な工事費であるし、建つところも地盤の超よいところに限られる。
 被災した後、そのビルの持ち主全員が同意し、費用負担し、建て直しや修繕ができるだろうか。
 できたとしても借金は積み重なるばかりである。

 これは現実に、姉歯事件やその前の阪神淡路大震災で証明されていることである。
 姉歯事件では賃貸住宅ビルと分譲住宅ビルがあったが、賃貸ビルはすぐに解決したが、分譲の共同住宅ビルはいまだに建て直しになったのは2件だけらしい。
 それにもかかわらず、世の中は分譲マンションを売っているし、買っている。みんな忘れたのかしら。
 政府の政策も、持ち家にはローン減税があるのに、借家に家賃減税がないという大不公平である。
 だから、分かっていながら(いや、もしかしたら分かっていないのかな)危ない分譲住宅ばかりがはびこる。悪貨は良貨を駆逐するのである。

 こんな変な国は、やっぱり日本は発展途上国だな。
 政府は、住宅は十分に満ち足りた、もう五カ年計画もやめたって言っているのに、先日の「日比谷派遣村」みたいに、実は住む家のない人がたくさん居るってことがあぶりだされた。ホームレスも大勢見かける。

 日本では住宅政策がヨーロッパ先進国のように社会政策ではなくて、アメリカや発展途上国なみの経済政策だからだ。それは住宅政策とは言わない。
 だから、アメリカで経済政策としての住宅政策が大失敗して、世界不況になったのだ。
 まあ、日本は世界不況を起こすほどの経済力も実はないんだってことが、逆証明されたようなものだ。
 これでいいのか?
参照→◆名ばかりマンション  ◆姉歯大震災の喚起するもの(2005~2007)
  ◆賃貸借都市の時代へー体験的住宅論(2000~2008)