2016/02/01

1170【横浜都計審(3)】このところ特別緑地保全地区が増えるのは良いけど北側急斜面地ばかりってのはどういうわけか

 【横浜都計審傍聴(2)】から続く

●急増する特別緑地保存地区の指定

 二つの地区計画につづく議題は、12件の特別緑地保全地区である。一部既存の変更もあるが、大小とりまぜてこんなにたくさんいっぺんに出てきた。
 このところ毎度の横浜都計審に、特別保存緑地の議題がたくさん出てく良な気がするので、過去にさかのぼって年度毎のその議題数を調べてみたら、こうだ。

2009年度:●●●●●●(6件)
2010年度:●●●●●●●●●●(10件)
2011年度:●●●●●●●●●(9件)
2012年度:●●●●●●●●●●(10件)
2013年度:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(25)
2014年度:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(24件)
2015年度:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(37件)

 この急増ぶりはどういう事情であろうか。特別緑地保全地区の制度は、審議会資料にこのように書いてある。

いずれも審議課資料よりコピー

 要するに林地になっている土地利用を、林地のままに凍結的に留めておくことである。
 これが、都市計画としてどのような意義があり、この林地の地主と周辺や一般市民にどのようなメリットがあるのだろうか。
 地主には、固定資産税と相続税の減免があるから、大きなメリットだろう。

 そしてこの3年ほどで急増するのは、どういう理由なのだろうか。
 この制度は2001年に創設されたというから、ようやく普及してきたのだろうか。特にこの数年、行政当局が力を入れて、普及宣伝に努めているのだろうか。

●斜面緑地ばかりの指定地区

 ではその指定する土地はどのような場所の、どのような状況の土地なのだろうか。
 今回の12件の指定地は、どれもみな林地であり、主に北下がり急斜面で、平地林は一か所もない。しかも、そのうち10件が市街化調整区域である。
 環境的に緑地を保全することが必要であろうところの、中心部の密度の高い市街地部には指定がなくて、郊外部の密度の低い住宅地の中、あるいは周辺が一面の緑地である地域の中の一部を指定している。

いずれも審議会資料よりコピー編集

 早く言えば、これ等はどこも住宅開発には不向きなところであり、まわりの住宅開発から取り残されたところも多い。市街化調整区域では緑地指定がなくとも、すでに開発規制が厳しいところである。
 そのような不利な条件の土地を切り開いての住宅地開発を、人口減社会になってデベロッパーは手をつけなくなったので、その地主がどうせ開発できないなら、税制優遇のあるこの制度を利用しようとなったので、指定地が増加してきたとも考えられる。

 まさか、地主が環境問題に目覚めてきて、この制度を活用しようとしだしたのでもあるまい。
 また、都市緑地法には緑地保全地域もあるのに、なぜ特別緑地保全地区ばかりの指定なのだろうか。そもそも緑地保全地域の指定はあるのだろうか。特別版ばかりということは、なにか特別なメリットがあるからだろうか。

●風致景観要件ばかりの指定地区

 特別緑地保全地区として指定する用件を整理すると次のようになる。
(1)無秩序な市街化防止の緑地
(2)伝統的文化的意義のある緑地
(3)生活環境確保に必要かつ風致景観が優れた緑地
(4)生活環境確保に必要かつ動植物生息地の緑地
 今回の議題の12件は、いずれも(3)生活環境の確保に必要かつ風致景観が優れた緑地であった。なぜ(1)や(2)がないのだろうか。これまで指定状況はどうだったのだろうか。

 環境系の学識委員から、(4)の特別緑地保全指定は無いのかと質問が出たが、市当局の回答は、今後努めたい、と言っていた。
 一般の住宅の敷地に比べると面積は広いが、中には1ヘクタールもない範囲もあり、しかも急斜面地の雑木林や竹林ばかりだから、(1)としてはもともと開発が難しいところだし、社叢林や遺跡のある森とかのような(2)でもないし、特別に保全すべき動植物相がある(4:生息飼育地型)でもないし、結局は消去法で(3)しかないってことだろう。

 (3)であって悪いのではないが、積極的な保全の意義が見えない。
 斜面地ばかりの指定であって、平地林や池や河川のような水面を含む緑地はひとつもないのはなぜだろうか。
 そもそも、この指定地の採択はどのようにしているだろうか。日頃から行政当局が地主に積極的に働きかけているのか、それとも地主からの申し出を待っているのだろうか。地主からの申し出の意図は、緑の保全か、税制優遇か、どちらにあるだろうか。

●指定した後はどうしているのか

 指定した特別緑地保全地区は、所有者がその保全を行うが、その林地をどのように管理運営するのか、その地区ごとに何か方針はあるのだろうか、それともほったらかしだろうか。
 民間所有の場合は行政からの支援として、固定資産然と相続税の減額優遇や管理費の助成がある。では、これまでの指定で、この租税の減額がどれほどあるのだろうか。
 あるいは管理費助成はどれくらい投資しているのか。
 これらはいわば一般市民が負担しているのだから、知りたいものである。そして、一般市民にとって、それに見合う効果があるものとなっているのだろうか。

 民有地については公的買取り制度があるが、これまでこの制度はどれほど働いたのだろうか。財政難の自治体が買い取ることはあるのだろうか。
 それは生産緑地制度の場合もおなじで、そこが道路とか公園などの公共用地になる場合の外は、買い取った例はないから、特別緑地保全地区も同じだろう。
 では、解除した例はあるのだろうか。

 都市計画審議会では、2人の委員から質問があった。上記の指定要件のことと指定後の管理体制ののことであった。管理体制については、新任委員がでてくるごとに同じ質問が出て、市当局が毎度同じ答えをするのが恒例となっている。
 この12件の議題についての市当局の説明が、ものすごく早口であった。それぞれ場所と図は違うが、ほとんど同じことをしゃべって、1件1分くらいで済ませたのであった。
 それでも委員は理解できたのであろう、原案通りに可決した。審議会委員のみなさまは、事前に現地をご覧になっていたのであろう。
 でもなあ、わたしが上に書いたようなことについて、審議してほしかった、次の審議会にこの種の議題がでたら、よろしく頼むぞ。 

【参照都市計画審議会を改革せよ
https://sites.google.com/site/machimorig0/#tokeisin

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