2013/11/27

864【言葉の酔時記】子、子ども、子どもたち、子どもら、複数の複数って?

 日本語は英語と比べて、単数と複数の区別があいまいである。そもそも複数の言い方がもともとなかったのかもしれない。だって、人の複数は人々、品の複数は品々なんて、
まったくもって原始的過ぎる。もっとも、英語のようにgooseの複数がgeese、childがchildrenなんてむちゃくちゃが多いよりも、はるかに使いやすい。

 昨日の新聞(2013年11月26日朝日新聞朝刊 文化欄)に、あるインタビュー記事があり、こう質問している。
「いま、子ども を宿していらっしゃいますね」
 ふむ、このインタビュアーは、インタビュイーが妊娠中であることを知っおり、しかもそれが双子か三つ子の複数であると知って、そのことについて質問しているのか。
 ところがインタビュイーは、その多胎のことには答えていないので、質問の意図はそこではなかったらしい。

 と、わたしは思ったのだが、ふと気が付いた。インタビュアーは「子ども」が複数接尾辞がついた複数名詞とは思わなくて、単に「子」の意味で質問したらしい。なら、「お子さん」と言いなさいよ。
 近ごろは、一人っ子なのに「うちの子ども」なんて言うこともあるようだから、今や新聞記者にしてそうであるのか。
 でも、「うちの子ども」は、「手前ども」とか「私ども」と同じで、元来は謙遜語のはずなんだなけどなあ。
 
 それどころか、その逆に「子どもたち」と複数名詞に複数接尾辞をつけて、2重に複数のしてしまうことが、新聞用語にもかなり普通になっている。
 これは多分、「子ども」が複数ではなくて単数だと思い込んだ結果の表れなのだろう。そのうちに「子どもたちら」と3重複数語を言い出すことだろう。
 これに関連して思い出すのは、「おみおつけ」なる3重馬鹿丁寧語である。たかが味噌汁になんだよ。

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