2020年世界運動会のメイン会場に予定されている国立競技場の建て替えについて、今度は別の団体がシンポを開いて、批判をしている。
環境アセスメントの権威者の原科幸彦さんたちである。
http://www.youtube.com/watch?v=vKtdrLUQKRE
建築家たちの議論が、コンペ基準や審査や都市計画への手続き不信という、どこか後追いの内向き方向なのが、わたしは気になっていたが、どうやら神宮外苑を中心とする環境という外向きの議論に広がってきたのが喜ばしい。
コンペ手続きのこと、デザインのこと、景観のこと、事業費と税負担のこと等を総合して、オリンピック競技大会がもたらす自然的社会的環境影響評価へと、広い視野を持つ批評へと展開しはじめている。
だが、この大規模建築事業阻止への戦略・戦術が、まだ見えない。
手遅れ感も見えるなかで、政界経済界庶民歓迎オリンピック雰囲気のなかで、なにがこれからできるのだろうか。
シンポの最後にパネラーから、「オリンピックを来なくするのだけはやめて下さいッ!」と発言があったので、わたしのような世界運動会観戦スポーツアホバカ論者には、なんとも居心地が悪い。
ところで、先日のシンポジウムの映像を観ていて、気になったことがある。
新国立競技場の計画地区は、都市計画の風致地区に指定されている。都条例で建築物と敷地についていろいろ制限があるが、分りやすいのは高さを15m以下にせよということである。
現段階の新国立競技場の高さは65mであるらしい。だから、特別扱いをしなければ建てることができない。
http://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/kenchikusc01_000555.html
シンポ会場から、JIAのメンバーと名乗っている人から発言があった。JIAだけではなんだかわからないが、多分、日本建築家協会の略称だから、この人は建築家なのだろう。だから建築にかかる制度についてはプロのはずだ。
発言の要旨は、「新国立競技場の建築を、計画通知の手続きで通すには、風致地区を外す都市計画手続きが必要なので、渋谷区や新宿区の区長や区都市計画審議会に、そうしないように働きかける」とのことである。
だが、どうも、渋谷も新宿も、それはやらないでもOKってことにしてあるらしいのである。
東京都風致地区条例とその許可基準を読むと、テキはぬかりなく既に2013年から2014年にかけて改定してあって、そのあたりはすらすらとクリアーできるようにしてあるんですなあ、残念ながら、、、。
それはなんとまあ、神宮外苑の新国立競技場区域に限る「S甲地域」という、特例許可基準を新設してるんですよねえ。SはspecialのSなんでしょうねえ。
このS甲地域許可基準を読むと、これはもう風致地区の趣旨をを放棄したも同然、つまり解釈改憲じゃなくて解釈改法になっている。
これなら憲法改訂じゃなかった、風致地区を除外する都市計画変更をするべきだろうが、憲法改訂と同じで、そりゃもう揉めてしまうだろうから、こうやって行政の中でできる許可基準を変えたのだろうなあ。
JSCは(実務は日建設計+日本設計+梓設計+アラップジャパン)、この許可基準に従って新国立競技場を設計しているに決まっている。
いや、まてよ、設計に合わせるように許可基準の方を変更した、とするのが正しいかもなあ。
その中身を簡単に言えば、地区計画で高さが緩和されることになっていれば、風致地区規制もそれに従うってこと。だから、建築都市計画行政としては、75mまで建てることができるように、既になっているのである。だから、建築都市計画行政手続きとしては、都市計画審議会を開いて決定する必要は、既にないのである。
この風致地区での特別扱いの手続きは、JSCが新国立競技場の計画通知(民間の確認申請に相当する)を通すためには、新宿渋谷両区の区長と協議をすることになっている。
民間の事業者なら区長の許可だが、国の機関だから協議である。官尊民卑か。法的には、協議しさえすれば、協議が整わなくて物別れになっても、協議した事実があればよいのだろう。まあ、いまどきそうもいくまいから、許可基準を読むと、協議もこれに準じると書いてある。
で、準じたらどうなるかと言えば、上に書いたように、高さ75mまでOKなのである。
渋谷区や新宿区の担当役人たちは、だって、こう書いてあるんだもん、いまさらゴチャゴチャいわれも困るんだよなあ、って思っているだろう、、たぶん。
今になって何かやるとしたら、計画通知が出る前に、許可基準をまた変更させるってことかなあ、それには政治的な働きかけしかなさそうだなあ、、、、。
このシンポで森まゆみさんが、「東京都の都市計画審議会には、建築の専門家も都市計画の専門家もいないのが、非常におかしい、専門家を入れるべきだ」と言っておられる。
たぶん、委員の中には、「わたしは専門家だよ」って、いう人ももいそうだが、まあ、なんにも発言せず、審議していないことも事実である。
まあ、こうやって、都市計画審議会への一般からの関心が高まってくれると、この騒ぎも意義あることだなあと、思わないないでもない。横浜都計審で嫌になってしまった経験者としてはね、、。
実はこの映像を観たのは、あの名前だけは知っている浜野安宏さんが、どう発言されるんだろうか、ってのが、わたしの興味だったのだが、、え、こんなお方だったのかあ、う~む、、、、、。
ということで、建築家はその専門領域である都市計画を勉強してほしいなあっていいたい、自ら行動を起そうとしない徘徊老人の小言でした。
参照
◆【五輪騒動】新国立競技場・神宮外苑・2020五輪運動会騒動瓢論
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html
◆あなたの街の都市計画はこんな会議で決めている2013:横浜都計審の実態(要約版)
https://sites.google.com/site/matimorig2x/essay-cityplanning
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