あの事件の前までは、「訂正します」だけで、「お詫びします」が付くことはめったになかった。明らかにお詫びするべき訂正でも、それがなくて変だなあと思っていた。
また、どうして間違ったかも書くことはなかったのが、最近は確認しなかったからとか、なんだかテキトーな理由がつくようになった。
ちゃんとお詫びと書くようになって、それはそれでよくなったと思うが、一方で、「訂正してお詫びします」と書けば、なんでも許されると思うようでは困る。
さて、では最近の朝日新聞訂正お詫び記事の例を二つあげる。
ひとつめは、今日(2015年3月7日)朝刊に、ダムのことを「建築構造物」と書いた記事(1月31日)の件の訂正である。
正しくは「土木構造物」と書くべきを、建築物は建築基準法で「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」なのに、「確認が不十分でした」ので「訂正してお詫びします」とある。
ふ~む、お詫びするほどの誤報というのだから、ダムのことを建築構造物というと、建築基準法違反で検挙されるのだろうか。
いや、建築基準法には「建築物」とはあるが、「建築構造物」とは書いてないよ。
誰か厳重に訂正申し入れした、マニアックな人でもいるのかしら。
それじゃあ、え~と、ダムって壁だから、もしもダムの上に屋根をつけたら建築物になるんだな。
そもそもそんな法律表現を持ち込んで訂正するほどの誤報記事なのだろうか。庶民から見れば、ダムが建築だろうが土木だろうが、どっちでもよいことだ。
法律用語と新聞記事の関係で用語訂正をしだすと、きりがないような気がする。例えば「容疑者」と「被疑者」とかね。
では、ダムのことを「土木構造物」と言わなければならないと、例えば「土木基準法」なる法律があって、そこに書いてあるのだろうか。そんなこと聴いたこともないけどなあ。
そもそも「構造物」とはなんだろうか。「構築物」とは違うのか、「建造物」とは違うのか、「建築物」とは違うのか。
あのね、ここは「建造物」と言えば、建築だろうが土木だろうが、物置だろうがタワーだろうが、穴ぼこだろうが(これは無理かな)、どれでも含みますからね、新聞屋さんよ、これを使うと誤報率が減少しますよ。
二つめの訂正お詫び記事は、昨日の夕刊にある。
谷崎純一郎の細雪に登場する4姉妹の和服姿を描いたイラストレーション(丸山敬太画)が2月27日の夕刊に載ったのだが、それが着付けの作法にあっていなかったというのだ。
画き替えしたイラストレーションを載せて、「紙面編集の際に確認が不十分でした」とて、訂正お詫びである。
訂正お詫び記事2015/03/06 |
元のイラストレーション2015/02/27 |
こういう寄稿の記事でも、やっぱり新聞屋が謝ることなんだろうか。
描いた人の肩書がファッションデザイナーとなっているから、衣服関係のプロである。プロが描いたのなら、それなりに意図があるはずだ。だって、この絵に添えてある描き手の話の内容が、着物の着付けのことなんだからなあ。どうなんだろうか。もしも本当に間違ったとすれば、それは編集部じゃなくて、丸山敬太氏がお詫びするべきのように思うし、せめて連名でしょ。
それとも、寄稿でもいったん新聞記事にすると筆者の手を離れるのだろうか。
これって、たぶん、読者の中の着付けマニアのオバサマ方が、まあ、朝日新聞ともあろうものが、ファッションデザイナーともあろうものが、なんて、厳重に訂正せよって投書や電話が、わんさと押し寄せたのかもなあ。
と思って、電網検索したら、こんなのがあった。
うん、映画スチル写真と比べても、なんだか着付けが違うよなあ。
●【言葉の酔時記】
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