2019/02/05

1383【浜離宮庭園の景観変容】(その1)伝統的日本庭園の空と水に踏み込んだ巨大都市開発がもたらす景観変容をどう受け止めるか

熊五郎:ご隠居、元気ですかあ、流行のインフルなんて罹ってないでしょうね。
ご隠居:おお、熊さん、元気だよ、ちゃんと徘徊にも出かけてるよ。
:そりゃ結構、おや、そのパソコンの写真は、どこか行ってきましたね。
:ああ、そうだよ、久しぶりに東京の浜離宮庭園に行ったね。


:あれ、美しい日本庭園ですねえ、浜離宮って言えば、ご隠居がだいぶ前にボロクソにけなしていたところでショ、こんなのをぼろくそですか?
:そうだよ、実はボロを隠して撮ったんだよ。ボロも見せると、こうだよ。
:うわっ、すごいね、立派な超高層ビルと美しい庭園だ。
:なに言ってんだよ、違うだろ、。
:エッ、どうして、。

:あのね、この庭園には若い頃の昔に行ったことあったけど、2000年の新聞広告に高層共同住宅の販売広告が出てて、それがこの庭園の隣にある国鉄跡地の汐留開発なんだよ。庭園の向こうに超高層ビルが建ったモンタージュ写真に、『浜離宮というこの上ない借景を得て真の都市居住・・』を楽しめって宣伝文句だよ。その写真と文句に驚いたね。
:庭を覗き込んで庭の景観をぶち壊しにすると堂々と写真つきで宣伝してたんですね。
:そう、借景じゃなくて押し貸し景だな、それで2003年に見に行ったら、そのビルが建ち並んでいて、もう庭園景観はむちゃくちゃになってた。今の景色だよ。

:でも、庭園の中まで破壊じゃなくて、外の隣に建っただけでしょ、いいじゃありませんか。
:いや、よくないよ、まあ、この撮ってきた写真をごらんよ、庭園の最も中心部の潮入りの池を通して西の方を見た風景だよ。
:ほほう、立派な広い豊かな緑と水の自然環境の向うに、現代モダン超高層建築群が建ち並ぶ都市風景、自然と人工との迫力ある対比、、、。
:いやいや違うよ、自然環境なんかじゃないよ、人工の極を尽した伝統的な回遊式日本庭園だよ、そしてもう一方も人工の極を尽くした超高層ビル群だよ。
:あ、いけね、どうも樹木や芝生や池の水を見ると天然自然環境と思ってしまう。
:そう、一方は自然の素材をそのまま生かしつつ自然を縮小模倣した芸術的人工物、もう一方は自然資源を原料にしているが完全に加工した工業的人工物だね。両極端の人工物がなんの調整もなく出くわしているから、奇妙な風景になった。
:なにが奇妙なんですか。
:むちゃくちゃだよ、地上に多くの縮景の手法を尽くして、空と地とが一体になる別天地の空間を創り上げていたんだがねえ、どうだい、森の上から無作法に覗き込んで空を奪った上に、池の水に映りこんで庭内の風景も奪ったよ、外だけじゃないんだよ、まったくくもう、、。
:まあまあ、おちついて、血圧が上りますよ、この風景だってそのうちにこんなもんだって慣れますよ。変りゆく社会において風景も価値を変えてゆきますでしょ。
:あのなあ、人間が創造した文化歴史景観を破壊しても、そのうち慣れるから良いんだよ、てなもんじゃないよ。

:あ、そうだ、じゃあねご隠居、この画像を加工して邪魔なビル群を消しちまいましょう、ちょいとPC借りますよ、さあ、どうだ、こうなったけど、どっちが良いか勝負!
:わはは、すごい、うん、すっきりした、明るくなった、いいなあ、昔の人はこの風景を創り愛でたんだな。どうだ、これでも新しい価値観のほうがいいのかい?
:う~ん、とても東京とは思えない、そうか、まさに別天地を作ってたんですね。もうちょっと考えますよ。
:あ、そうだ、わたしもその画像加工をやってみよう、では、ちょいちょいちょいと、ね、どうだ、こんなのは。


:え~っ、そんなところに富士山があったかなあ、変だなあ。
:まあ、どうせ戯造画像なんだから、逆さビルよりも逆さ富士の方がいいだろ。もしも本当にこうやって向こうに借景の山があったとしたら、ビルを建てたら罪深いとわかるだろ。
:うん、そういうことか、こうやってみるとビル群が無いほうがいいような気もしてくる、いや、無いと寂しいような。
:どっちかにしろよ。(つづく

参照:【浜離宮庭園の景観変容】()()()(

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