2010/10/27

341【各地の風景】信州山中の金ぴか御殿

 信州安曇野の東隣あたりに、今は松本市に吸収されているが、四賀村というのんびりした農山村がある。
そこのクラインガルテンで野菜つくりと絵描きをしている旧友がいる。
 その娘夫婦は、いわゆるIターンでこの村にやってきて住み着き、専業農家をしている。いまどきそういう若者たちがいるのである。日本の将来は明るい。
     

 そこへ旧友の作った野菜を仲間で食べに行く「収穫祭」と称する小旅行を毎年やっている。
 この村は松茸の産地である。今年は松茸が豊作とて、夜は市営のその名も「松茸山荘」に泊まって、松茸料理コースを堪能(?)してきた。
 このあたりは昔は善光寺街道の宿場であり、今も伝わる古寺や街並みも魅力的である。
 食べるだけでなく、近隣の古社寺や隣の安曇野に美術館をたずねる文化的なこともやる。
だがなんといっても、田園の人文と山並みの自然が織りなす四季の風景がすばらしい。風景を描くのが好きな旧友がここに来たわけも分かるような気がする。
 
   ◆
 そのようなのどかな農山村の中を徘徊していると、突然、白亜に金ピカと彫像装飾だらけの西洋の古城が出現した。
 信州ゴールデンキャッスルと看板がある。つまり金ぴか御殿か。
 ふ~ん、こんな山の中でラブホテルかよ~、それもいいかもなあ、なんて近寄ってみんなで車を降りて立ち並んで、その周囲の風景との対比のスルドサに呆然として眺めいる。
 ヨーロッパのどことかのお城みたいだ、あ、ノイシュバンシュタイン城なら行ったことがあるぞ、でもちがうなあ。

 

 ゲートあたりでうろうろしていたら、中から宮廷衣装のお姫様ならぬ普通の洋服を着た女性がでてきて、案内パンフレットをくれる。
 聞けば、この地はなんとあの伝統ある居酒屋チェーン「養老の滝」の創業者である会長の故郷であり、その関連会社が経営する結婚式場だそうだ。
 まあ、ラブホと縁がないでもない。この白亜西洋古城風彫像行列デザインは、その会長さんのご趣味であるとのこと。

 裏山も西洋風か日本風か分からない豪華な造園をしておられて、庭のあちこちになんだか値段が高そうな銘石類を配置というか展示してあり、ひとつひとつに名札を立てておられる。ついでにお買いになったお値段も書いてくださると分かりやすいと思った。

 多分このあたりの大地主さんだろうから、これからは裏山のほうばかりではなく、周囲の農家も田圃も全部に手入れをしていただいて、田園はベルサイユ宮殿ばりの花咲き池のある大庭園に、家屋は西洋農家風にフランス瓦とスタッコ壁で緑の窓枠なんて模様替えして下さると、実によろしい様な気がいたしました。

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