ご隠居:おお、熊さんかい、あがってきておくれ。
熊:じゃあお邪魔しま~す、アレッ、布団に寝たままって風邪ですか。顔の上にヘンな板ぶらさげて、それは新型氷嚢かしら……。
隠:いやいや、元気なんだよ。いまちょいと実験中でね、顔の前にぶら下がってるのはタブレットPCなんだよ。
ベッドの上に紐と金網で吊り下げたタブレット |
隠:いや、まだそこまでいってないがね、今にそうなるから事前訓練中だな。元旦に息子が持ってきてくれたんだけど、まだ使い方がよく分らない。
熊:で、そうやって蒲団の上に天井から吊る仕掛けも息子さんが持ってきたのですかい。
隠:この仕掛けはわたしが工夫したDIYだ。
熊:100円ショップでへんなもの探したんだな。
隠:あたり、合計216円の投資だよ。新タブレットPCをあれこれいじってると、いつの間にか真夜中になっちまう、寝転んで手で持ち上げたまま居眠りすると顔の上に落ちてくる、でも、これならそのまま眠ってしまうことができる、便利だよ。
熊:で、目が覚めてからもそのままで、今みたいに昼間も寝て遊んでる。それじゃあ寝たきり老人そのものでショ、訓練中じゃないよ。ちょっとは起きて徘徊に出かけないと、本当に寝たきりになりますよ。
隠:うんうん、ありがとよ。でもWIN7からWIN10に乗り換えると、なんだかさっぱり勝手が違ってね、こいつを征服しようといじってると、ボケが止るね。
熊:じゃあ、あっしが10の使い方を教えましょうかね。
隠:あ、大きなお世話だよ、このわけのわからん奴をいじり倒して取り組むバカらしい楽しみを奪わないでおくれ。
熊:ケッ、かわいくない年寄りだね。そもそも、スマホとかタブレットって、外に持ち運びに便利なように出来たものでショ、それを寝転び用に使うのが、今どき老人ですね。
隠:そう、スマホじゃあ画面が小さすぎて読めないからタブレットにしたんだがね、最近は仕事で外に出かけることはめったにないし、徘徊に持って出るほどの物でもなし、そこで寝たままネットってことだよ、ま、考えようによっちゃ高齢社会向きだね。
熊:でもねご隠居、そうやって寝ても起きてもネット遊びやってると、この部屋のこのたくさんの本、ヒマになったら死ぬまでに読むんだと買っておいた未読本でショ、これを読む暇がないでしょ。
隠:そうそう、このタブレットが来るまでは、ネット遊びは机で、本を読むのは寝転んでと、一応は分担していたけど、これがきてから本を読む暇がなくなった、困ったね。
熊:でもね、ご隠居、ノートからタブレットに変えても、ネットに登場する中身は同じなんですよ、いまにどっちかに飽きるでしょうね。
隠:あ、そうだね、う~む、そうなると安楽な寝たきりタブレットに向かうね、う~ん、ますます寝たきり老人だなあ、困ったなあ。
熊:便利だからとタブレットばかり観てると、ネット屋に誑(たぶら)かされますよ。
隠:あ、「狂れ人」(たぶれびと)って「タブレット」とも読めるな、わたしは「狂れ心」の「狂れ人」かあ。(注)
熊:観るべきか観ざるべきか、それが問題だ、かのシェークスピアもタブレットに言わせてるなあ。
隠:うまいっ、ハム、、。
注(広辞苑より):たぶる【狂る】<自下二>常軌を逸する。万葉集巻17「狂れたる醜(しこ)つ翁の言だにも」
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