熊五郎:ご隠居、その後は腰の具合はいかかですか。
ご隠居:おお、熊さん、いらっしゃい、ありがと、まあまあ何とか動いてるよ。
熊:あのですね、横浜のどこやらのマンションが傾いたって、大騒ぎのニュースですね。このあっしたちが住んでるボロ長屋は大丈夫なんですかね。
隠:ボロは余計だけど、ここは木造2階建てだからね、多少は傾いてるだろうよ、でもね、あのニュースのビルみたいにコンクリで重いってわけじゃなし、大丈夫だろうよ。
熊:ビルじゃなくてマンションですよ。
隠:お前さんねえ、マンションと言ったら、例えばアメリカ大統領が住むホワイトハウスみたいな豪邸のことだよ、日本でマンションて言ってるのは、不動産屋の営業用誇大広告宣伝用語だよ。日本では「名ばかり」マンションだよ。
熊:じゃあ、なんて言えばいいんですか。
隠:正しく言えばだな、区分所有型中高層共同住宅ビルだな。
熊:フ~ン、長たらしいね、で、あの傾いたヤツもそのクブンショなんとかかんとか、めんどくさい名ばかりマンションですかね。
隠:うんそうらしいねえ。しかも、700戸も入っているらしいよ。
●建て直しって実は超大変だろうなあ
熊:でも、それは4棟に分れていて、そのうちの西棟だけが傾いたらしいですよ。それなのに、売り主の三井不動産ナントカカントカ企業の社長は、その棟だけじゃなくて、責任とって全部建てなおすって言ってますよ、さすが大企業は偉いもんですねえ。隠:う~ん、ホントに偉いのかねえ、わかってるのかなあ。写真で見ると、そのうちの南棟を除く3棟がつながってるからこれらは建築基準法でも区分所有法でも、法律上は1棟らしいよ。
熊:でも、その中の傾いた部分だけを建てなおせばいいでしょ。なんで全部建て直すって言ったのかなあ。
隠:その傾いた西棟だけ直すのは、技術上は可能だろうけど、法的に1棟になってると持ち主全部の内の8割がOKしないとできないね。それに他の棟も完全とは言えなくなったからね。
熊:仮に500戸あるとすれば、400戸の持ち主の同意を取るって言っても、400通りの事情があるだろうから、そりゃもう大変ですよね。
隠:そうだよなあ、それに地震で壊れたって天災じゃなくて、欠陥商品を売りつけたってことだから、なおさらナンダカンダと揉めるに決まってる。
熊:じゃあ、事実上は8割賛成じゃだめで10割でしょうね。
隠:それに、今は傾いてなくても、こうやっていったん不信となったら、そのうちに傾くって思うよなあ、だから全部を建てなおすしかないってことになる。離れている南棟の人もそう思うだろうなあ。
熊:そうなりゃ700戸には700通りの事情があるから、社長がカッコよく全部建て直しますって言っても、こりゃ簡単じゃあないですねえ。事実上はできないかもねえ。大変なジレンマですねえ。
●大地震が来たらこの騒ぎの比じゃない数になる
隠:あのね、いつか近いうちに巨大地震が起きるって言われてるだろ、そうなったらたいへんだよ、あちこちの巨大な名ばかりマンション超高層ビルには、1000戸もある奴のあるらしいからね。
熊:そんなのがあちこちで傾いたら、難民だらけになりますね。
隠:そんな大勢の巨大ビルを建てなおそうたって、そうは簡単に皆が同意できっこないね。日本列島は立ち腐れ廃墟名ばかりマンションビルだらけになるな。
熊:あ、そうだ、この長屋はどうなりますかね、すぐに倒れそうだけど。
隠:うん、そうだね、大地震で簡単に倒れちまうだろうねえ、店子の難民はいっとき出るのはしょうがないけど、ここは1棟全部貸家で持ち主は大家さんひとりだから、建て直しは簡単だよ、すぐに戻ってこられるよ。
熊:あ、なーるほど、そりゃいいや、安心しました。その名ばかりマンションも、棟の全部を貸家にすればいいのねえ、なんでそうしないんでしょうねえ。
隠:そりゃね、日本政府の住宅政策が間違ってきたからだよ、持ち家ばかりを優遇する政策ばかりで、賃貸住宅を冷遇してきたからだよ。
熊:なんでそうなんでしょ
隠:日本では住宅政策が、景気対策の経済政策に使われて、住宅って基本的人権を保障する社会政策じゃなかったってことなんだよ。経済ばっかりに目を向けるって、政策の基本が貧困なんだよ。
熊:そうやって、名ばかりマンションばかりか、郊外住宅もどんどん建てさせたあげくが、いまじゃあ空き家問題にぶつかってるんですね。
隠:郊外には空き家、街なかには空き名ばかりマンションだよ、困ったもんだよ、もうすぐ起きる東南海大震災の直後に、住宅を経済政策にしたツケがドド~ンとまわってくるだろうねえ。わたしはその頃はこの世にいないだろうからいいけどね、熊さん気の毒だね。
●真の責任者は元請け企業と工事監理者なのに
熊:それにしても、あのインチキ基礎杭事件は、マスメディアの格好の餌食ですね。杭打ちした旭化成建材ってところの親会社の旭化成社長がでてきて謝ってますね。
隠:あのねえ、それがなんだかおかしいねえ、だってこの事件の一番の責任者はそこじゃないよ。
熊:え、なぜ旭化成じゃないんですか。
隠:あのねえ、インチキ杭打ちした旭化成建材が悪いのもちろんだけけどね、そこはこのビルの建設を請け負った三井住友建設の下請けのそのまた下請の企業、つまり孫請けなんだよ。
熊:ということは、下っ端企業が泣いて謝ってるだけなのかあ。
隠:その孫請けの親が出てきて謝るのは勝手だけど、その上の日立ナントカって下請け企業の社長や、大元の三井住友建設の社長はどうしてるんだろうかねえ。
熊:あ、そうか、そこが泣いて謝るのがスジでしょうにねえ。
隠:元請けの建設現場で三井住友建設が、下請けの工事をきちんと管理監督してなかったのがいちばんの責任取ることだよ。それにね、工事監理者も責任が重いはずなのに出てこないね。
熊:なんです、その工事監理者ってのは。
隠:工事屋さんの現場監督とは別にね、設計どおりにきちんと工事をしているかって、工事を見張る役割の一級建築士がいるんだよ。いなきゃならんと法律に決めてあって、それが工事監理者だよ。
熊:じゃあ、三井住友建設の現場監督の外に、工事管理者がいるのですね、そりゃ誰なんでしょうかね。
隠:それがニュースには全く登場しないから名前が分らない。マスメディアも世間一般も、そういう責任者がいるってことを知らないらしいね。
熊・あ、もしかして、その工事監理者の一級建築士と三井住友建設が、グルになって監督をサボってたのかもしれませんね。
●設計者も出てこないのは何故か
隠:うん、多くの場合は設計者が工事監理者になるんだけど、その設計者の名前もニュースには全くでてこないね。
熊:あっ、もしかして、実は設計で基礎杭の長さが短くしてあった、かもしれないのにね。
隠:もしそうだったら、杭打ち工事は設計図の通りにやったことになるな。
熊:それだったら、設計者と共に、設計図の間違いを指摘しなかった工事監理者の大罪ですね。なんだか、マスメディアは末端ばかりおっかけて、大元の方の原因者の仕業を忘れてるかもしれませんね。
隠:それよりもいちばんの大問題は、空き家だらけと言うのに、これから大地震が来るというのに、名ばかりマンションを建て続けさせ、買い続けさせる日本の住宅政策の大間違いにあるんだよ。
熊:そうか、阪神淡路大震災で名ばかりマンションの建て直しが大変でしたよね、それから耐震偽装って事件でも大変、それなのにもう忘れて同じバカをやってるんですねえ。
隠:名ばかりマンションを買う奴が一番のバカだね。だからね、ボロでもこの借家長屋に住んでることを、ありがたく思わなくちゃいけないよ。
熊:え~~、そうなんですかあ、まあ、買う金もないけどねえ、、ヤレヤレ。
1995年3月神戸三ノ宮、勝手な向きに傾く街並み |
1995年阪神淡路大地震における神戸被災地 |
参照:くたばれマンション
https://sites.google.com/site/machimorig0/#tosikyoju
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