2016/04/20

1188【五輪騒動】神宮外苑地区計画の変更原案を東京都で縦覧中、その内容から妄想する都市計画の公益性とは?

●新国立競技場がらみの都市計画変更原案がでてきた

 新国立競技場がらみの都市計画の変更原案が、東京都と関係3区で縦覧に出ている。5月6日までに、意見書を出すことができる。
 新国立競技場がらみの都市計画である、外苑地区地区計画が決まったのは、2013年6月のことであった。そのときは誰も意見書を出さなかったので、原案通りに決まった。
変更計画の新旧比較一覧
色つきの3地区が今回変更あり、その他は変更なし
 ザハハディドの案がなんだか問題になってから、あの都市計画はオカシイ、高さを高くし過ぎたとか、霞ヶ丘都営アパートを廃止して公園にしたのがケシカランとか、いろいろな人が騒いだ。
けれども、法律上の手続きはとっくに終ってしまっていたから、いくら言っても後の祭りであった。なんであの時言わなかったのか。
 それに懲りて、こんどこそはこの変更案に、誰か意見書を出すのだろうか、どうだろうか。都民なら意見書だす資格がある。

 この前のときに、新国立競技場に関係する国や都、区の土地ばかりか、神宮外苑やその周囲の一部の民有地までも、一つの地区計画に含まれていた。
 オリンピック主会場として建設するために急いでいる新国立競技場関係の土地のところは、内容を決めて都市計画決定したが、そのほかのところは、どさくさまぎれにかどうか知らないが、内容は決まらないがとにかく地区計画の区域に入っておこうということだったらしい。
 
 そのときは内容が決まらず形式的に区域に入っていただけの外苑ハウス部分が、実体的に内容が決まったことと、JOC・日本青年館敷地の北隣の三角公園跡地あたりの既に決めたところも変更があるとて、その内容を書き込んだ地区計画の原案を作ったので、変更の都市計画決定をしたいというのである。

 三角公園あたりは、地区施設の広場に設定されており、そことJOC・日本青年館敷地との間には、外苑ハウスの敷地の一部が挟まっている。
  この縦長にまとまった土地を、JSC・日本青年館とJOC・岸記念会館の2つのビル敷地にするように変更するそうだ。地区施設の三角公園広場も、敷地の一部であるらしい。
2016年4月に縦覧の外苑地区計画変更原案の変更対象地区

●外苑ハウスの地区計画の詳細が決まったらしい
 
 新国立競技場とは関係ない民間共同住宅の外苑ハウスは、これまでは詳細が決まっていなかったのを、追加変更した。
 現在の容積率は200%、これが400%に倍増する。現在の高さ制限は30m、これを80mにするとあるから3倍近い。かなりの緩和である。
 計画では、敷地の一部であるスタジアム通りに通じる通路状の部分(図の)が、上記2ビルの敷地に取り込まれたので、その分の敷地面積(400㎡程か)が減少するようだ。土地売買があるのだろうか。

 敷地がスタジアム通りに面しなくなって、裏の狭い幅4mの区道に接するだけとなり、そのままでは建替えが不可能となるはずである。どうするか。
 その対策であろうが、外苑西通りから入ってくる区道を、4mから12mに拡幅するとしている。拡幅るための用地は、都営住宅跡地の明治公園である(図の)。その長さは80mとあるから、640㎡、つまり都市公園の面積がそれだけ減少するのである。
 
 敷地内の北境界沿いに幅6mの歩行者通路、同じく南境界沿い幅4m以上の緑道、西の道路沿いに幅4mの歩道状空地、敷地西寄りに1000㎡の広場、同じく南寄りに400㎡に広場を、それぞれ設けることとしている(図の緑色部分)。
 つまり、容積と高さの緩和は、これらの地区施設となる空地を敷地内に設けて、これを一般に公開することと引き換えになるのであろう。

●外苑ハウス建替えで街の環境が大きく変わる

  ここまでは外苑ハウスがらみの地区計画変更の中身を紹介したが、ここからわたしの個人的コメントを書く。
 念のために書いておくが、わたしはこの地区のあたりにも、ましてや外苑ハウスにも、何の関係もない。単なる都市計画フリークの閑な老人のボケ遅延防止策として、なにやかにや勝手に考えて書いているだけであることを、おことわりしておく。
 ただし、公益的な都市計画であるから、関係のない一般市民がそれについて書いても、許されるであろうと思っている。

 外苑ハウスの容積率や高さの規制緩和は、敷地内に設ける二つの広場や緑道、歩行者通路、歩道状空地という公開しなければならない地区施設と引き換えであろう。それらが相互に引き換えに相当する価値があるのかどうかは、わたしは分らない。
 しかし、そのその地区施設によって、この地区及び周辺市街地環境がかなり変化することは確実だろう。
 現在の外苑ハウスは、表通りからは奥まったところにあり、まわりを金網で囲ってあって、近寄りにくい建物だった。いわばゲーティッドコミュニティである。
右が現・外苑ハウス、この狭い裏の区道は拡幅しないが、
右の敷地側に4mの歩道状の空地を作るから広くなる
地下鉄外苑前駅に抜けるこの狭い裏道は人通りが大幅に増えるだろう
ところが建て替えると、建物外部の敷地の大半は、公開しなければならない地区施設になるので、敷地の多くは広い開放空間となる。
 しかも、一階には住宅以外の賑わい交流施設も導入するとあるから、建物への一般の人の出入りも多くなるのだろう。
 北隣りは公園だから人の出入りは自由、東隣のJOCやJSCなどのビルの敷地もまわりに緑道や歩道上空地の地区施設をめぐらすし、西からの区画道路を拡幅するなど、この外苑ハウス敷地にまわりから流れて込む人の動線はかなり太いものになりそうだ。

 とくに新国立競技場から地下鉄外苑前方面へ流れる観客の動線が、こちらに大量に入ってくることだろう。ここから南へと区道も人通りが多くなり、これまでの静かな裏町ではなくて、かなり賑わうことになるだろう。
 このさき、都営霞ヶ丘住宅跡地に新霞ヶ丘広場ができて、外苑ハウスまわりの広場や緑道が整備されて、狭い道路が広くなると、この裏道がどう変わっていくか、おおいに興味がある。
外苑西通りから外苑ハウスへのこの区道は左に拡幅して3倍の広さになる
左は廃止されて公園になる都営住宅、正面に現・外苑ハウス

●オリンピックは公益に寄与するのか

 一民間施設である外苑ハウスという共同住宅が、なぜ新国立競技場がらみの都市計画にはいっているのか、わかりにくいのである。実は今もわからないので、そこを考えてみる。
 外苑ハウスに再開発等促進区をかけてまで、その建て替えを都市計画で応援する公益的意味があるのか。
 都市計画とは、公益のために行うものであるから、それによって私権への優遇をするなら、かならずその公益的見返りが必要である。つまり、建築の規制緩和は、その規制強化と対になるものである。これを通称「アメとムチ」という。

 外苑地区計画の区域を見ると、外苑ハウスの敷地は半島状に突出していて、不自然なゲリマンダーに見えるのである。ここだけがなぜ飛び出し半島状に指定するのはどうしてか。
 その隣の学校や、裏道の向うの寺院や住宅地は、なぜ地区計画の区域に入っていないのか、整備しなくてもよいのか、
 これが提案型都市計画だから、提案する地権者に入っていなかったからだろうけれども、提案を受けて都市計画を定めるのは東京都である。提案のままでよいのか。
 なぜ外苑ハウス建て替えに、都市計画という公益性が賦与されるのか。

 そこでわたしは思案したのだ。オリンピックは公益に寄与する事業だから関連する事業も公益であるのであろう、たぶん、そのように一応の仮定をするしかないのである。
 JOCや岸記念会館ビルは、オリンピック推進に関係が深いらしい。そのビルを建てる用地を確保するために、外苑ハウスのスタジアム通り側の一部(図の)を必要とする。外苑ハウス側としても、ちょうど建て替え時期が来ていたので、それにひっかけたい。そして交渉の末に、その提供と確保が成立した、のであろう、たぶん。
 これが公益的必要性の理由だろう、たぶん。

 で、その敷地減少に見合うように、容積率をかさ上げしたのだろう、たぶん。いや、敷地を売った土地代が入っているハズから、それもおかしいなあ。
 でも、それだけでは外苑ハウスが納得しなかったのだろうなあ、たぶん、だから地区施設の整備も合わせ技にて、容積率も高さもかなりの緩和をして、それで手を打ったのであろう、たぶん。と、これが公益的理由かもしれない。でも、、、

外苑ハウスは都市公園法も許す公益上特別必要か

 ところで、外苑西通りから入ってくる区道を、幅4mから12mに拡幅しているのはどうしてだろうか。
 これは、たぶん、前面道路幅が狭い4mでは外苑ハウスの建替えが法的に不可なので、取り付け道路として12mに拡幅するのであろう。
 だが、その拡幅用地として公園用地の一部(図の)を充てたことについては、どう解すればよいのだろうか。
 一民間共同住宅の建替えのために公園用地をつぶすのだから、その土地代と道路工事費を、外苑ハウスが負担することになっているのだろう、たぶん。

 そしてまた気になるのだが、都市公園面積の減少を禁止する都市公園法16条にいう例外措置「その他公益上特別の必要がある場合」に該当するのだろうか(参照:追記2)
 だって、外苑ハウスって一民間共同住宅の建て替えのためですよ、これが「公益上特別必要」かなあ、でもまあ、なんせオリンピックの日本総本山JOCビル建設のためだもんなあ、ってことかしら。
 そして、都市公園の都市計画変更も必要なように思うが、なぜその変更原案が、今回だされていないのだろうか。
 
 なお、外苑ハウスを地区計画に入れて、建て替えを促進している理由のひとつに、オリンピック競技場まわりのテロ対策があるかもしれないって、わたしの妄想については既に書いたから、ここで繰り返さない。
http://datey.blogspot.jp/2016/04/1185.html

 最後に、まだ詳細が分らないが、ここで土地区画整理事業を行うそうだ。区画整理とは、土地の入れ替えをしたり、道路や公園をつくる都市計画事業である。

 でも、都市公園用地の確保と言ったって、都営住宅跡地をそっくり移管するだけのことだ。
 土地の入れ替えがあるのは、図ののところだけである。
 道路を作るのは図ののところだけだが、これも都営住宅跡地の一部を移管するだけだ。ほかには区画整理するべきところがない。
 まあ、工事をするってことはあるが、それをわざわざめんどうな区画整理事業にとりこんでやる必要はないだろう。
 事実上たった一か所の土地移動だけのために、シチメンドクサイ手続きのある土地区画整理事業を施行するのは、なぜだろうか。
 まあ、その理由についてある程度は想像はつくが、どうもオカシイ。
 
●話を簡単にまとめるとこうなる
 
 地区計画と土地区画整理事業という都市計画を使って、ひとつの民間共同住宅ビルの建替え事業を行う。
・外苑ハウスが敷地の一部(図の)を、JOCビルの敷地に譲ることにした。
・そうすると外苑ハウスの前面道路幅員が4mになって建て替えが不可能となる。
・そこで外苑西通りから入る区道を都市公園用地(図の)を充てて12mに拡幅する。
・外苑ハウス敷地内に広場や緑道を設けて容積率と高さを大幅に緩和する。
  
 これを外苑ハウス建て替えに関する公益と私益で考える。
・公益に資する件は、外苑ハウス敷地のなかの地区施設である緑道や広場である。これは私益にも資する。
・私益に資する件は、容積率と高さの大幅な緩和である。
・公益を私益のために資する件は、の道路拡幅である。

 普通の共同住宅建替え(通称マンション建て替え)は、その敷地が未利用分の容積率を使うことで事業採算を成り立たせる。
 ところが外苑ハウス建て替えは、容積率も道路も建替え不可能な条件にあるところを、都市計画を使って可能にする。ものすごい荒技で、さすがにオリンピック便乗はスゴイ。
 これを前例にして、このあたりは次々に地区計画の範囲をゲリマンダーに拡大して行き、どんどん都市計画変更して容積率や高さを緩和していくのだろう。うまいことやるものだ。
 このような都市計画を都や区の都市計画審議会が、どう審議するか楽しみである。
  
 このあたりで妄想をいったんおしまいにする。
 この神宮外苑あたりの都市計画に、わたしは何の関係もないのに、その一部分の外苑ハウス地区だけでも、いろいろと分らないことがあって、実に楽しく妄想できる。
 老人のボケ遅延策になってありがたい。これからも続けたい。

(追記1 2016/04/21)
 念には念を入れて書き添えておきますが、上の一文は、この都市計画について、わたしが疑問に思ったことを、ひまにまかせて書き連ねているだけのことです。これをお読みの方は、わたしが外苑ハウス建替え反対運動をしていると解されたら、それはまったくの誤解です。それについては賛成とか反対とかいう立場にありません。そのための都市計画の公共性を懸念しているだけです。念の為。(まちもり散人=伊達美徳

(追記2 2016/05/25) 
 フェイスブックでAtsumiさんという方が教えてくださったのですが、(図の)の部分は実は公園用地指定になっていませんでした。都営霞ヶ丘アパート用地を公園に指定するとき、予めこの部分を除外してあったのでした。都市計画決定の図が小さくて、その部分を判別できなかった、わたしの判断の誤りでした。したがって、都市公園法上の問題はないのでした。
 

●参照:五輪騒動まちもり瓢論
 http://datey.blogspot.jp/2016/04/1185.html


2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつも貴重な情報をありがとうございます。外苑ハウスの建替え推進理事は東京都やJSCと結託して、またもや秘密裏のうちに18日午後6時半から青山中学校で地権者向け説明会を行なったそうです。このときに配布された(ネットには載せない)資料を見て、5月6日までに意見や異議申し立てのある人はしなさい、ということらしいです。
ちなみに当方も 近隣住民なのに説明会開催を知らされず、資料もまだ入手できない状態です。
25年2月に容積率緩和を決めたとき同様、ネットに乗せないこそこそした計画を、どうやって都民や国民が知ることが出来るでしょう?
熊本地震や連休のどさくさにまぎれて さっさと決めてしまおう、というのです。
はっきり言ってこの案件には「公共性」などありません。神宮球場側の一等地を取られるかわりに「あくまで民間マンション」である建物本体がタワーマンションに変わるのです。
デイベロッパーに協力した一部の区分所有者だけが優遇されるでしょう。「マンション建替え円滑化法」で「権利変換」をするということですが、建替え組合もまだ設立されておらず、権利変換期日前なのに住民は「退去」することになっています。おかしいです。
住民を追い出したあとに 再入居を待つ住民を騙して「時価」でJSCや東京都が買い取り、何か違う計画をぶちあげる可能性も大きいと思います。
外苑ハウスを取り込んだことで、JSCは自分達の入居するビルを建てることが出来るのです。
できるだけたくさんのひとがこの事実に気づいて、「異議申し立て」をすることを願っています。

匿名 さんのコメント...

外苑ハウス建替えは「3本柱」を旗印に合意形成が進められました。
つまり「自分では一円もださず、増床、増収」が見込めると。補償金は200万円ずつ区分所有者らが受け取っています。
こんな人たちが工事費や霞ヶ丘の土地代を支払うわけはありません。
難しいことは三井に丸投げなので いずれ泣きを見るでしょう。
東京都と一部の理事、そしてJSC、JOCなどとは合意ができているはずですが、詳細は不明のまま
とにかく住民を退去させ 急いで解体しようとしています。
伊達の眼鏡さんの想像では 今後どのような展開になるでしょう?