2024/01/16

1781【能登集団生徒避難】天災も人災も遭難後避難よりも事前避難したいが予測不能の難

 今年の元日の起きた能登地震で被災した中学生と高校生たちを、被災のない地域に集団避難させるそうだ。

 これを読んで昔々も、震災ではなくて戦災を逃れて集団避難したことがあったと思い出した。それは「集団学童疎開」と言って、太平洋戦争中の末期の1944年からから45年8月までのことだった。あの時は国民学校初等科(今の小学校に相当)3年生から6年生までの学童だが、今回は中高生たちだから「集団生徒疎開」あるいは「集団生徒避難」というべきだろう。

 今回の集団避難は、すでに起きてしまった能登地震災害の遭難した生徒たちのうち、希望者たちを安全な地域の施設に一時移転させるという事後避難である。かつての集団学童疎開は、すでに遭難したものもあるが、多くはまだ連合軍の空からの爆撃を受けていない都市住民の子供だったから事前避難であった。強制ではなく勧奨であったそうだ。。

 この疎開と避難とは、事前と事後いう大きな違いがある。疎開を事前避難にできた理由は、人災であるから、ある程度予測可能であったのだろう。連合軍の空爆は被害の増大を効率的に行うために大都市に限られていたから、空襲爆撃されるこちらも都市住民を避難させようと事前に予測ができる対策であったのだろう。

 一方の天災の地震による震災避難は、地震がどこでいつ起きるか予測できないから、事後避難にならざるを得ない。事前に知ろうとする研究は長年にわたってなされてるが、これだけ何回も大地震が来ても、いつどこで起こるかいまだに予測がつかないままである。そこにかつての疎開と今の避難の基本の違いがある。しかし能登では2007年に大きな地震がありこの数年間は群発地震の巣だったから、事前避難をすることもできただろうと思う。そのような計画はなかったのだろうか。

 能登で始まった集団生徒避難は、かつての戦中集団疎開には多くの悲話が語られてきた反省の上に立っているのだろうか。今回は中高生にしたのは、疎開児童が幼すぎたことへの反省か。あの時とは物資も情報も段違いによいのだから、この長期修学旅行は良い成果をもたらすことを期待する。

 ところで、わたしは戦中疎開の当事者だったのだ。と言っても、都会から田舎に疎開した児童だったのではなく、都会からやってきた疎開児童を受け入れた田舎の児童だったのだ。高梁盆地にあるわたしの生家は神社だったから、12畳間が二つある広い社務所の建物があったので、そこが集団疎開児童たちの寝泊まり場所となり、日中の学習には近くの寺院に通っていたのだ。疎開児童たちは盆地内のいくつかの寺社に分かれて滞在していた。

疎開児童学級が滞在した御前神社社務所
 児童たちが戦火を避けて集団でやってきたのは1945年の7月、芦屋市精道国民学校初等科6年女生徒20人と職員1名だった。この子たちがいない間の芦屋は、連合軍の空爆で大被災したから、まさに事前避難が役に立ったのである。なかには孤児になった児童もいたと聞く。その8月15日に敗戦となって、もう空襲はないが遭難破壊都市へとそそくさと戻っていった。それから半世紀後の阪神淡路大震災で、精道小学校の児童複数が遭難死したそうだ。

 その8月15日にはこの疎開児童に関係する記憶がある。その日の真昼、疎開児童たちがいる社務所の玄関前に、近所の人々と疎開児童たちが集まり、一台のラジオ受信機をとりまいた。当時ラジオを持つ家はまだ珍しく、この疎開学級にはあったのだ。神社の森の中に降りしきる蝉しぐれとともに、大人たちは音の悪いラジオ放送を聞いていた風景を思い出す。

 その放送が終わると、近所の人々は黙りこくって参道の石段を一列となって下ってゆき、供出されて鐘のない高楼の鐘撞堂のそばを通り、神社の森からとぼとぼと抜け出て行った。晴れて暑い日だった。国民学校3年生のわたしが敗戦と知るには幼なすぎたが、その時の大人たちの静かすぎる行列を、なんだか不審な感じで見送った記憶がある。月末に父が小田原の兵営から帰宅してきた。

 さて、人災も天災も増えるばかりである。それらが予想できるようになり、事前避難できるようになるのはいつだろうか。それよりも先に、災害を起こさない、起こらないようにできるのは、いつだろうか。それは、天災と人災のどちらが先になるのだろうか。人災も天災も事前予測も事前防災も、どちらも永遠にできないのが実は正解かもしれない。
 わたしにできることは、あの世に事前避難することだけだ。

 (20240116記)

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