今期の芥川賞と直木賞の受賞作が決まったとのニュースの、芥川賞の紹介文を読んでビックリした。なんと、建築家ザハ・ハディド女史設計による新国立競技場が実現した世界という小説だそうだ。
華々しく登場し没になったザハ案 |
わたしはザハ案の実現をある考え(後述する)から期待していたので、没になった後でもザハ案をブログには再登場させる遊びをやっていた。思い出してブログを読み返して、そのあたりをここに載せることにした。もちろん芥川賞に対抗ではなくて、遊びとしてなかなか面白いからだ。
ザハ案を絵画館の位置に建てたら、、2013年10月 |
庶民がお好みの銀杏並木から絵画館への風景全部が、日本帝国主義を象徴する作りこんだ西洋流の帝冠洋式なんだね。わたしはそれが嫌いでねえ、だからザハ・ハディド案の新国立競技場が、20世紀半ばまで日本を支配した国家主義の風景をぶち壊してくれるって期待してたんだよ。惜しかったよなあ。
隠居:ワハハ、実は昨夜の夢に死んだザハ・ハディド女史が出てきてね、「ウラメシヤ~、没にしたわたしの案を新国立ラグビー場に建ててほしいよ~、、、」と……で、これだよ。
ラグビー場をザハ案で、、2019年5月 熊五郎:ウワ、あのカオで幽霊になるとコワイ……、そう言えば最近になって秩父宮ラグビー場と神宮第二球場を入れ替える再開発をやるって、計画の環境アセスメント手続きが始まったそうで、ご隠居はまた野次馬やってるんですね。隠:そうそう、つまりラグビー場を新国立競技場の隣りに引っ越しするってね、また格好の暇つぶしだからね、あの新国立競技場騒動からあれこれ思い出して考えてたもんだから、ザハ幽霊が夢に出てきた。熊:そこで彼女の願い通りに描いてみたのか~、なんだかウマく納まってるような、第2新国立競技場ですね、まあ、あの騒ぎの中で急死だから成仏してないでしょうけど、これで供養になります。隠:わたしは彼女のファんじゃないけど、コンペ当選案の肉感的な姿を見た時から、あの場所だからこそあの姿で建ってほしいと思っていたよ。
これはザハ・ハディド「新国立競技場案」への厳粛なるオマージュ展であるな、ってことだ。累々たるインポ建築のミイラの最後に登場したなのが、この一昨年に死んだばかりの生な死骸の「新国立競技場案」だった。これがあることで、この展覧会がインポを越えてポシブルへと橋が架かった。そこまで観てきた累々たる死骸が、ここで生き生きとした死骸になった。フィクションをリアルへとつないで見せたと言ってもよいだろう。
あのもう見慣れた巨大な背割れ亀模型もすごいが、なんといっても圧巻は膨大な実施設計図書の展示である。折り込み縮刷A4版製本して何十冊ものあの量だから、実物の図面や書類ならば展示してある小間にいれたら、部屋に一杯で天井までも積みあがるくらいはあるのだろう。さすがに大規模建築にふさわしいすごい量だ。 それが実は既にできていたのに、土壇場でインポになったのだから驚くばかりだ。現実はインポでもフィクションでもないのだった。
この最後の小間に至る前までの模型や図はすべて、まるきり建とうともせず建ちもしなかったものだが、これだけは実は建つ寸前クライマックスまで行って突然に脳溢血で(じゃなくて時の首相に寝首を掻かれて)腹上(下)死インポ化であった。その無念さが、あの膨大な何千枚もの実施設計図書の展示に込められている。
わたしはこのザハ・ハディド案で建ってほしかったと考えていたことは、あの騒ぎが始まった頃にこのブログlに書いているが、それはその異教徒的な怪しさが、あの明治神宮外苑の持つ19世紀的帝国主義王権の男性原理的景観を、21世紀の今ぶち壊してくれることを期待したからだった。
それがこうなった今では、どこかにこれを建ててインポからポシブル建築にしてやって、この建築インポ騒動のせいで死んだ(のかもしれない)ザハ・ハディドを供養しなければなるまい。隈・大成による実現新国立競技場の竣工の日に、ザハ・ハディドの白拍子姿の幽霊が登場して、釣鐘に見立てた新競技場に舞い込んだとたん、9.11のごとくに崩落する幻想を抱く。
このころに書いた別のブログ記事には、築地市場後再開発に登場させたザハ案を、隣の浜離宮から眺める戯画をつくった。ザハの怨念景観である。
浜離宮から見る築地市場跡地にザハ案が、、2019年2月 |
2019年12月28日ブログに、ザハ案評価のまとめをこんな戯作文にして書いて、これでもうおしまいにしたのであった。
わたしはザハ・ハディド案で建てばいいなあと期待していた、その建つ位置がなんと明治神宮外苑絵画館という外苑心臓部の隣なんだからすごい、その姿と言ったら、石造どっしり大胡坐の真ん中に
四角な包茎に●頭を覗かせた男性原理も露わな太く短いチン■コ建築だよ、その隣に曲面うねり流れパックリ割れて女性原理も露わなドロリ生ガキ建築だよ、見ようによっては絶好のコンビだけど、実は女が巨大すぎて男が呑まれそう、これでは保守派にとっては明治王権を汚す不埒不届不敬者だと言いたかろう、だってそもそも明治神宮ってのは、明治政府が新統治体制のために京の都から拉致してきた貴族トップ雲上人を、近代統治機構のカリスマ王権に改造育て上げたけれどのに、その死後の後継者が脳の病でカリスマ性皆無、困った政府は死せるカリスマを神に祀るべしとて全国総動員体制で造営したのだからね、その内苑は日本的に森の奥深く隠れる宮とし、外苑は西欧的に視覚に訴える権威的表現とし、合せて王権カリスマ賛美装置、外苑銀杏並木の透視景観の焦点に男性原理建築の明治大帝聖徳記念絵画館、並べて建てようとしたのが女性原理建築の新国立競技場、完成したら明治王権呪縛景観をザハ・ハディド流テロ爆弾で文明批評建築になり得ただろうに、惜しかったなあ、惜しかったと言えば騒動最中にザハ・ハディド急死、世界の建築界に新デザイン潮流を巻き起こしたバグダッド出身の天才建築家は、日本のドタバタ騒ぎで魔女殺しに遭ったのかも。
このザハ案の華々しい登場からメタメタの白紙撤回、この騒動最中にザハ・ハディド女史の急逝、そして今の真っ白ベーグル建築登場までの新国立競技場事件は、実は近ごろなんだかやかましい明治神宮外苑再開発計画の前半戦であったのだ。外苑の辺りはそのころから10年以上もやかましいのだ。
わたしはこの事件が面白くて、せっせとブログに瓢論を書いていた。今は外苑再開発についても、ちょっとは楽しんでいる。さてこちらも白紙撤回になるのかしら?、あ、もしかして女史の亡霊が外苑あたりをさまよっているのかも、、。
こうして没になったザハ案を登場させて面白がるブログを書いてきたが、まさか小説に書いている人がいるとは思わなかった。確かのその方が自由に想像を広げることができる。負けた。久しぶりに本を買いに行こうかな。
実は本がたまりすぎて遺品処分に困るので、もう買わない宣言をして10年くらいになる。しかし書店にはしょっちゅう行って立ち見(読まない)するので、ごくたまにはつい買うのである。芥川賞になったから書店にザハの亡霊がいるかもしれない、楽しみだ。
(20240108記)
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◆【五輪外苑騒動】国立競技場改築+神宮外苑再開発両騒動瓢論集https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html
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