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2019/12/28

1434【年忘れ雑言】男女両性原理表現が真正面衝突した国立競技場騒ぎも今となれば懐かしや

 年の暮になると、世間ではこの1年を振り返る。わたしは振り返るべきことがなにもないから、春頃に仲間内の会誌に書いていた悪口雑文を引っ張り出しておこう。
 おりしも神宮外苑隣の国立競技場の建て替えが終って新建築が登場したので、その祝賀の意味も含めて、これを載せておこう。
 元原稿のタイトルは「老いのクリゴト酔いのクダマキ」であるから、そんな口調になっている。

●どろり生ガキ女に大あぐら男が襲われた国立競技場騒ぎ
 無駄なカネって言えば、2020年開催のオリンピックとかいう世界運動会もヒドイねえ、わたしはああいう見るスポーツを大嫌い、世界運動会には全く興味ないけど、それに関連して起きるゴタゴタ騒ぎには野次馬興味、なかでも2015年に起きた例の新国立競技場騒動、これは実に面白い暇つぶしになった、
現在は明治神宮外苑の隣りに巨大な洗濯盥か寿司桶みたいな新競技場が姿を現しつつあるらしいが、あれって本当は全然違う形で建つはずだったんだよ、思い出すとあれは実にヘンな事件だった、2012年に国際デザインコンペで女流建築家ザハ・ハディドが堂々の一等賞、そのデザインは時代の最先端を行く建築だったのを、運動会ボス森喜郎ってわたしと同年ジジイが、「どろり生ガキみたいでいやだ」と言ったけど、ホントはオマ■コみたいと言いたかったはず、生ガキが聞いたら怒るよ、庶民も大好きなオリンピック物件だけに、神宮外苑に似合わないとか、ガラが大きすぎるとか、公園を潰してケシカランとか、あれこれ四面楚歌のうちに、工事費を計算したら膨大過ぎると分って、そうなるとドロリ××デザインのことをすっかり忘れて、もっぱらカネメばかりで悪口雑言、マスメディアもデザイン論より分りやすいから煽り立て、一方では実施設計まで終っていて既にかかったカネが60億円、あとは工事費調達だけになっていた2015年、どういうわけか一競技場ごときに時の総理大臣がシャシャリでて、60億円捨てて白紙やり直し命令、オジャ~ン、国内設計施工コンペやったけど、あれって業界では大成建設物件とお決まりで、実は一部工事に着手していて、出直しコンペもやっぱり大成組一等賞、騒ぎに懲りてデザインじゃなくて早い工期と安いカネメで決めたのが今の寿司桶競技場、なんとも発展途上の開発独裁国みたいで国際的大恥かいちゃった。実はこれには東京都市再開発奇々怪々利権が潜んでいて、オリンピック後に世間が知るその話はまた別のときに。
白紙出直しコンペ当選は早い安いマズイ案
どろり生ガキ露骨な女性原理表現のザハ・ハディド当選案


大あぐら露骨な男性原理表現の神宮絵画館
  
 わたしはザハ・ハディド案で建てばいいなあと期待していた、その建つ位置がなんと明治神宮外苑聖徳絵画館という外苑心臓部の隣なんだからすごい、その姿と言ったら、石造どっしり大胡坐の真ん中に四角な包茎に●頭を覗かせた男性原理も露わな太く短いチン■コ建築だよ、その隣に曲面うねり流れパックリ割れて女性原理も露わなドロリ生ガキ建築だよ、見ようによっては絶好のコンビだけど、実は女が巨大すぎて男が呑まれそう、これでは保守派にとっては明治王権を汚す不埒不届不敬者だと言いたかろう、だってそもそも明治神宮ってのは、明治政府が新統治体制のために京の都から拉致してきた貴族トップ雲上人を、近代統治機構のカリスマ王権に改造育て上げたけれどのに、その死後の後継者が脳の病でカリスマ性皆無、困った政府は死せるカリスマを神に祀るべしとて全国総動員体制で造営したのだからね、その内苑は日本的に森の奥深く隠れる宮とし、外苑は西欧的に視覚に訴える権威的表現とし、合せて王権カリスマ賛美装置、外苑銀杏並木の透視景観の焦点に男性原理建築の明治大帝聖徳記念絵画館、並べて建てようとしたのが女性原理建築の新国立競技場、完成したら明治王権呪縛景観をザハ・ハディド流テロ爆弾で文明批評建築になり得ただろうに、惜しかったなあ、惜しかったと言えば騒動最中にザハ・ハディド急死、世界の建築界に新デザイン潮流を巻き起こしたバグダッド出身の天才建築家は、日本のドタバタ騒ぎで魔女殺しに遭ったのかも。 

 ことのついでに言うけど、カネがかかると言えば、なんと言っても原子力発電所が王者ですね、わたしはどうもこの原子力って言葉がうさん臭くて、ホントは核力でショ、原子力発電技術って核兵器開発と隣合わせなので、わざと言い換えているのかなあ、水力やら火力とおなじように核力って言いなさいよ、その原発じゃなくて「核発」が津波で大事故の事件、あの福島核発事故処理にかかる費用が2016年経産省試算では核廃炉8兆円、
ヒロシマとフクシマ
核毒被害賠償7・9兆円、核毒除染4兆円、核毒物質中間貯蔵施設1・6兆億円、なんと合計21・5兆円!だそうで、最初の想定が2011年で6兆円だったそうだからものすごい膨れ様で、そんなカネって1万円札でどれくらいの厚さか見当つかないけどもっと膨らむかもしれない、だって今までやったことないことやるんだからね、それでね、もっと驚くのはそれを負担するのは事故責任者じゃなくて日本国に住む者たちってこと、つまりみんなが払う税金と電気代なんだってさ、そうすると廃炉事業費が不足すると政府は税を上げるし、発電屋は電気代を値上げすればいいって、なんとまあ気楽な商売なんでしょね、打出の小槌ってこのことだな、これから福島以外の廃炉がどんどん起きてくると、もうとんでもない費用負担がわたしたち、いやわたしはもうすぐ死ぬ年寄りだから知ったことじゃないけど、次の世代もその次もその次もホントに大変だねえ、これって戦後高度成長時代を築いてきたわたしの世代がバカだったんだ、ほんとにお詫びするしかないですねえ、なのに次世代人がやってる今の政治は今後も核発電所を作り続ける政策だって、どうも分らぬこの世から、もうおさらばしたいものだ。
   (以上は、Q人会誌2019掲載:20190505)

 新国立競技場に関する孤乱夢は、竣工したそれを観てからまた書きたいとも思うが、どうせ分かっていることだからもう見に行かないことにして、その悪口雑言はこれで終わりとする。なお、神宮外苑再開発に関してはまだまだ興味が尽きないので、随時イチャモンを書き続けたい。

新国立競技場や神宮外苑再開発の孤乱夢一覧(まちもり散人筆)
https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html

2019/05/16

1400【五輪便乗再開発】都市公園としての明治神宮外苑は東京の都市開発圧力に耐えることができるか

久しぶりにオリンピックがらみ記事、つまり新国立競技場騒ぎのつづきを書く。
▼これまでの記事は下記

2019年5月9日に建設業界の新聞に、新国立競技場の南にある、神宮球場とラグビー場更にその南に隣接する民間ビルのある土地について、用地入れ替えと建物の建て替えに関して、環境アセスメントをやることになったと、ネット記事が登場した。
▼建設通信新聞(2019年5月9日)

 そうか、ついに動き出したか。なんとまあ、都市公園指定の土地で、野球場とラグビー場の建て替えついでに、超高層の商業やオフィスなどのビルを、市街地再開発事業制度を使って建てるとのことだ。いやはや面白いことになってきた。
 この計画に関してのわたしの一番の興味は、「都市公園」対「都市再開発」の駆け引きである。つまり、オープンスペースとして公開するべき都市公園指定の土地を、建築敷地としてプライベートに高度に活用する、その手練手管である。そこには法制度をいかにうまく活用するか、あるいはいかにうまく法規制をかいくぐるか、それが問われる。
 これは都市計画のなんともクロート過ぎる、いや邪道とも言うべき手法が登場してくる面白さがある。それを勝手に予想して勘繰り遊びをするのである。

 これについては2013年にその序の口をここに書いているが、
そこでは単純に公園内から公園外に容積移転であろうと思っていて、最後にまさかと思う強引な手法もあると少しだけ書いておいた。それはじつは市街地再開発事業のことである。新聞報道では、本当にこの事業手法を使うとあるから、それで公園指定に対してなにができるのか考えてみよう。

 この件の出だしは、新国立競技場の建て替えのために、その敷地の国有地と隣接する公園や公営住宅の都有地の都市計画及び都市公園の変更をしたが、どういうわけか新国立競技場に関係のない周辺の共同住宅やオフィスビルや宗教法人等の民有地も、これに合せて都市計画変更したのであった。
▼神宮外苑地区地区計画(計画書・計画図)(PDFファイル11,882KB)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/toshi_saisei/data/jinguu_keikaku.pdf

 そこに見えるのは、宗教法人とディベロッパーが共謀して、新国立競技場の都市計画変更に便乗して、広大な都市公園指定用地を高度利用都市開発しようとする動き、策略である。
 現にオリンピックの後に取り掛かる事業というから、どうみても新国立競技場とは無関係のエリアだし、オリンピックのための新国立競技場の都市計画変更時にこちらまでも変更を行う理由はなかった。なぜ便乗を急いでおこなったのか。
▼明治神宮外苑はドサクサ新国立競技場大急ぎ都市計画変更に便乗
http://datey.blogspot.com/2015/11/1149.html

 2013年に内容が決まらないままに再開発等促進区型地区計画の都市計画決定は、その制度から言っても奇妙であり、不審なことであった。いま環境アセスメントにかけると言うから、ようやく内容がきまったのだろう。とすれば、その都市計画変更は今になって独立して行うべきだった。
 勘ぐれば、新国立競技場騒ぎの時にその陰に隠れてこちらの変更をすれば、注目されないだろうと言う密かな陰謀であったのかもしれない、勘ぐれば、。
 なにしろ公園内に超高層建築を建てようというのだから、世の緑好きおば様たちが目の色を変えて抗議に来ることは、目に見えているのだから。

 さて、今回の計画内容を、新聞記事だけをもとにあれこれ考える。
▼日刊建設工業新聞(2019年5月9日)https://www.decn.co.jp/?p=107128
この計画区域の事務所棟(伊藤忠本社)の敷地のほかはすべて都市公園指定されていて、風致地区がかかっているので、そのままでは大きな髙い建物や公園に適する特定用途外の建物は規制されている。それをどうクリアして巨大開発するのか、興味を持っているのである。
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 今回の新聞記事だけでスッカリ分るのではないが、現都市公園指定区域内に風致地区や都市公園の規制範囲を超える高さの超高層建築計画あるようだ。またオフィスの様な公園内には不適合の用途も書いてある。さて、これをどう考えようか。
  ひとつは風致地区も都市公園も特別に法的緩和を謀ることだが、これだけでは難しそうだから、もうひとつは都市公園と風致地区の指定を一部もしくは全部解除してしまうことだ。
国有地のラグビー場と明治神宮外苑の神宮球場を土地交換
複合棟Aはオフィスと商業、複合棟Bはホテルとスポーツ施設、

新神宮球場の上に超高層ホテルが建つ(らしい)
並木東棟は商業、事務所棟は伊藤忠(と三井不動産らしい)
事務所棟のほかはすべて都市公園指定区域
新聞記事を読めば、事業手法は都市再開発法による市街地再開発事業とあるが、都市公園地区内でこれを適用するとは、はて、この法が予想していただろうか。
 そもそも市街地再開発事業は、土地利用の現状が建物が密集していたり、木造で火災が起きやすいとか、耐震でないビルが多いとか、都心などで容積率は高い指定なのに一部しか利用していないとか、公園や道路が足りないとか、とにかく都市環境が不良な地区に適用するものである(都市再開発法第3条)。
 だが、ここは不良地区だろうか。

 この制度の適用には、例えば、土地が細分化されていることが不良とする条件のひとつだが、ここではラグビー場、明治神宮外苑、伊藤忠等、いすれも大規模な敷地であるから、これに当てはまらない。。
 あるいはまた、現に建っている建物の床面積の合計が、指定容積率の3分の1未満の地区に適用するのだが、青山通り沿いの民有地はしっかり高層ビルが建っているから適用できない。
 ラグビー場敷地や野球場敷地は今の200パーセント指定の3分の1以下のように思えるが、これは施設の性格から言って当然であり、しかも都市公園指定の土地だから、当然の土地利用であり、決して不良ではあるまい。たぶん、青山通り沿いの民有地の高容積率建築と合算しても指定容積率の3分の1に届かないのだろう。

 なお、外苑地区計画の再開発等促進区には、伊藤忠ビル西隣のオフィスビル(青山OMスクエア)も含んでいるが、今回の再開発事業区域から外してあるのは、新しい建築なので建て直しをしないことにしたのであろうか。またテピア(槙文彦設計)も外したのは、これを建て直しするというと、また槙一家に殴りこまれるオソレあるから、かな?、。
 神宮球場もラグビー場も伊藤忠本社ビルも、土地の現状用途は不良ではない。しいて言えば耐用年数を越えているとか、耐震問題があるとかで、不良とは言える。

 どうも私の知識が古すぎて、どうやらいまでは地区計画でとにもかくにも再開発等促進区にしていしてしまえば、都市公園だろうと、良好都市環境だろうと、新建築ばかりだろうと、空き地ばかりだろうと、どんなところでも市街地再開発事業やっていいよって、法がルーズなことに変ったらしい。
 ふ~ん、そうかあ、もう10年も都市計画現場に関わらないからなあ。

 でも、なぜわざわざ面倒な手続きが必要な法定の市街地再開発事業にするのだろうか。大きな土地ばかり、大企業と大法人ばかり、権利関係は明解だろうし、やることは分かっているのだから、常識的には任意事業でやるところだ。
 都市再開発法による市街地再開発事業は、原則として都市計画事業(建築を都市計画事業で建てる)であるが、実はここにその大きな理由がありそうだ。この都市計画で容積率の割増しがあるとか、事業になったら国と都から補助金が出るとか、税制優遇があるとか、いろいろ面倒でもいろいろメリットはあるが、本命は次の件にあるような気がする。

 都市公園法第16条に、「都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合」は、都市公園の一部又は全部を廃止できるとある。
 これを適用するのだろうか。もし全部を廃止して、青山通り沿いと同じ用途容積に変更すると、もうどんなデカいものでもどんな用途でも建築可能となる。伊藤忠三井不動産はもちろん、明治神宮もウハウハ儲かることになる。が、まさか、。

 これまで神宮外苑はいずれは順に開園して都市公園となることを前提にしてこれまでの土地利用が進められてきた(らしい)から、不良な土地利用ではない。
 都有地部分だけが一部開園されているが、明治神宮外苑用地ではどこも開園されていない。今後どのように明治公園を開園していくのだろうか。後楽園や芝公園のように、特許公園とするのだろうか。
 ▼神宮外苑は特許公園で再開発だろうか 
 

 あるいは「公園まちづくり制度」をつかうのだろうか。これが本命らしい。
 わたしは都市公園制度のことをよく知らないが、東京都心部にある未供用の都市計画公園に限っての開発利用の緩和制度らしい。この制度は2013年に作られていて、しかも再開発等促進区の区域に適用するとあるから、2013年に神宮外苑地区計画指定と共に作られたようで、つまり神宮外苑再開発のために作られた制度であるらしい。(神宮外苑まちづくり指針
 そうだとすれば、さて、どこを都市公園廃止するのだろうか。たぶん、、ふ~む、、なるほどそういう陰謀であったかあ、フンフン、これを利用するとについては、現在の外苑都市計画公園の内、未供用の4.8ヘクタール分を公園指定解除できて、その6割を緑地等の広場にすれば、大規模再開発ができる、らしい、すごい。
 あの時に新国立競技場ばかりに気をとられて、その関連の立体公園制度に驚いたが、それよりももっとすごい都市公園制度の根幹にかかわるような、ドカンと公園廃止手法が作られたことに気がつかなったなあ、でもなあ、世の公園屋さんたちはそれでいいのかしら。(これについてはここに詳しく書いたので参照)

まちづくり公園制度解説図(東京都)

 公園になることを前提にした土地利用を進めてきた地区を、市街地再開発事業を適用して公園解除するとすれば、それは都市再開発法が本来予想していなかったことだろう。
都市再開発法第4条には、「道路、公園、下水道その他の施設に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合するように定めること」とある。
 もっともこれは、公園を廃止してはいけないという意味ではなく、廃止したいなら都市再開発決定よりも前に廃止しておけということである。法の裏を読むのである。現にそのような事例はある。

 まさか今の都市公園指定を全部廃止することはあるまいとは思う。
 たぶん、高層ビルを建てる敷地を限定してそこだけ公園指定を解除か、いや、再開発事業区域の全部について公園指定を解除するのかもしれない。
 その区域では容積率を使いきれないが、使い切って大儲けしたいから青山通り沿いの伊藤忠本社の用地にも移転するのであろう。

 ではなぜ公園から容積移転するのか。公園指定区域は、ラグビー場は国有地だがそのほかはすべて明治神宮の土地で、宗教法人だから民有地である。公園指定外の土地に容積移転するとは、いわば土地の利用権の一部を売り払うと同じことであり、東京駅赤レンガ駅舎がやった様に、その売却収入で神宮球場の建て替え費用を稼ぐのであろう。
 つまりそこにも明治神宮が都市開発のプロである伊藤忠や三井不動産とともに市街地再開発事業に取り組む理由がある。
 ラグビー場用地は国有地だから、他の民有地に容積移転するとその権利関係の発生が国有財産法に抵触する(だろう)から、容積移転をしないだろう。

 では、なぜラグビー場と神宮球場とを入れ替えるのか。
 これはたぶん、国有地のラグビー場を民有地と合せて一つの施設建築物敷地にして再開発事業に乗せるには、国有財産のあつかいが国有財産法によってあれこれと面倒な手続きがあるし、政治的なちょっかいも入りやすいので、双方で避けたいことなのだろう。そのためには神宮球場用地と青山通り沿い民有地とを隣り合わせにしたいのだろう。
 ラグビー場を北端に寄せて、この部分は再開発事業では土地の入れ替えまで(土地土地権利変換)として、入れ替え後のラグビー場用地の建物は、独立して特定建築者制度をつかって建てるのであろう。
 ただし、民有地側には入れ替えによって大きなメリットがあるが、国有地側にそのメリットがあるのだろうか。入れ替え時にラグビー場を一時閉鎖しなくても済むのだろうか。
建替え段階計画(建設通信新聞から引用)

さてこの後はどのタイミングかわからないが、都市計画の新決定と変更及び都市公園の変更の法的手続きがある。
 都市計画法関連では、明治神宮外苑地区地区計画の変更として今回の再開発区域の地区整備計画を定めること、風致地区を変更すること、そして市街地再開発事業に関する都市計画を新たに定めること、そして都市公園法関連では明治神宮外苑都市計画公園の変更である。
 これらが一連のものとして登場したときに初めて、世間は全貌を知ることができるはずである。

 しかし、当初のこの地区計画の決定手続き時に、その内容のあまりの曖昧さのままに手続きを進めて決めてしまったことからして、今回もあいまいなまま、例えば目に見える完成予想図がないままに都市計画及び都市公園の審議会を通過するかもしれない。
 そしてその審議会に行く前に、世間に内容を問う案の縦覧に対して市民・区民・都民が何も関心を示さず意見提出公聴会もなかったという前回と同じように、この変更にも関心を示さないまま、審議会もあいまいな審議をして、簡単に決まるかもしれない。
 都民が関心を示さなかったのは、曖昧すぎる内容で何もわからなかったからとすれば、事業者の作戦成功であり、今回もそうかもしれない。

 それならそれで仕方ない?のだが、ひとつだけ注意を喚起しておきたいのは、もともとは明治神宮の内苑も外苑も国家神道としての国有地であったが、戦後の政治宗教分離政策施行時に、内苑は無償で外苑は市価の半額で宗教法人明治神宮の所有になったものだということである。つまり土地財産としては国民のものだったのだ。
 そこに民有地でありながら都市公園としての指定の意味があることに、市民も宗教法人も留意するべきだろう。都民の都市公園が東京の都市開発圧力にどこまで耐えることができるか、なかなかの見ものである。

 ここまで駄文を読んでいただいて感謝をするのだが、これを読んだ人は、都市計画素人には何を言っているのかほぼ分らないだろうし、都市計画玄人ならば古い制度の知識を錆びついた頭で書いてピントがオカシイと哂うかもしれない。
 わたしとしては分ってもらわなくても哂われてもよいのである、年寄りのヒマツブシとボケ防止で、思いつくままにグダグダ書いて描いて遊んでいるだけだから。

▼これまでの一連の五輪騒動記事は下記
https://datey.blogspot.com/p/866-httpdatey.html
(2019/05/16、2019/05/20「公園まちづくり制度」を加筆)




2017/03/09

1255【五輪騒動】新国立競技場設計騒動が鎮静したら次は絵画館前サブトラック常設でまたひと騒ぎありそうで楽しみだなあ

 おお、これも揉めるぞ、たぶん、景観保存原理主義者たちが、ケシカランと騒ぐだろうなあ、久しぶりにまたヒマツブシにもってこいだな。
神宮外苑創建時の絵画館玄関より見る広場と銀杏並木
現在の絵画館前広場と銀杏並木
●今度は絵画館前広場にサブトラック常設とか?

 2020オリンピックの陸上競技会場になる新国立競技場は、競技期間中に使うサブトラックを絵画館前広場に仮設すると聞いていた。
 昨日の新聞によると、オリンピックばかりか、大きな陸上競技会をやるにはサブトラックが必要なので、陸上業界(というのか?)が言うには、オリンピックが終わってもそのまま常設施設にしてくれと。
サブトラックに?

 そうか、競技する側としてはごもっともである。あんなにでっかい新競技場にサブトラックがない方がオカシイと、わたしも思う。
 建築で言えばオペラハウスを作ったのに、大ホールはあるがリハーサル場がないようなもんで、これじゃあ半端物だな。

 さて常設となると、これまたひと騒ぎありそうだ。陸上業界じゃなくて景観業界(っていうのか?)からイチャモンつける人たち登場するに違いない。
 明治神宮外苑は明治大帝の偉業を顕彰する場であり、聖徳記念絵画館なる聖なる施設の前庭を、騒がしい運動競技の場にするとはけしからん、戦前そうであったように美しい芝生の広場に戻せ、、、とか。

 ようやくあの生ガキデザイン新国立競技場を駆逐して、不十分ながらも日本的デザイン競技場に変えることにしたのに、今度は高層ホテルが建つとて、聖徳絵画館の背景景観が乱れようとするところに、更にまた前面景観も運動場になって乱れるとは、なにごとであるか、、、とか。

 なによりもかによりも明治大帝に申し訳ない、、造園設計者の折下吉延にも申し訳ない、、とか。
 歴史的景観を大切にして、昔の姿に復元するべきだ、あの東京駅のように、、、とか。
 
●さて、これからどんな騒ぎになるか楽しみ

 でもなあ、あの絵画館前広場は敗戦直後に占領軍に接収されて静かな芝生じゃなくなって、今やもう70年以上も経ったのだよなあ。静かな芝生期間の戦前20年よりも、戦後こっちの歴史がはるかに長いよなあ。庶民の運動広場だよなあ。
 おまえはそういうけど、あの東京駅も昔の姿は30年間、戦後の姿は60年間だったのに復元したぞ、外苑だってそうするべきだよ、なんて、おっしゃるでしょうねえ、そうなんです、トホホ、わたしはその復原反対をずっと唱えて来たけど、蟷螂の斧で無視されたんですよ。

 景観も建築もなんでもかんでも最初の姿がいちばん良かった、昔に戻せ復元せよという風潮が世間を風靡しているけれど、これって復元帝国主義といいましょうか、景観原理主義と言いましょうか、なかなか思い切りがスゴイもんですねえ。
 なにしろ、それができてからあとの時代の影響というか要請による変化の歴史を、いっさい無視しようってんですからねえ。
 あ、帝国とか原理とか言ってますが、わたしはレーニンも秋水も読んだことないし、神学にも触れたことなくて、そのお、オチョクリムードで言っておりますです、ハイ。
どうせならなにもかも、ここまで復元しましょうよ、とか
あえて言えばあそこは、キチンとしたスポーツグラウンドになれば、兵士となる青年の体育に熱心であった明治大帝もお喜びでしょう。外苑にスポーツ施設をたくさん作った由縁はそこにあったのですからね。
 さらに言えば、入ってみたい気にならない絵画館だって、これをスポーツマンたちのクラブハウスとして有効に使えばよろしい。今ある絵画はそのまま展示してあれば、歴史文化に無関心なスポーツマンたちも競技会の度に大帝のご聖徳に触れる、、、これも大帝はお喜びか、、タイテイのことはお許しが出るのか、それともタイテイにせいってお叱り受けるのか、、な~んて。
スポーツクラブハウスに?
●立体公園決定を廃止して元に戻せという提言は?

 ところで、これは若干旧聞になったが、去年5月、新国立競技場と緑の環境のあり方について日本学術会議からイチャモンが出された。これはその後どうしてるんだろ?
 参照「神宮外苑の環境と新国立競技場の 調和と向上に関する提言
  http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t211-1-1.pdf
 ザハ案に合わせるために立体公園制度の趣旨に反して無理矢理公園変更したのを、白紙見直し案に沿って元に戻せ、更に渋谷川を復活せよ、と言うのである。
 ごもっともである。

 わたしはやり直しコンペに応募した2案を眺めていて、どちらも立体公園にしなくても済むような配置に気が付いて、そうか、立体公園をやめるだと思った。
 てっきり当然そうするのかと思ったら、なぜだかそうしなかった。
 白紙見直しの看板を掲げながら、新競技場のために新規や変更決定した公園計画や都市計画は一切見直さないという、実に奇妙な白紙見直しだった。白紙じゃなくて灰紙だな。

 この公園緑地系の学者たちの異議申し立ては当然であるが、さて、事業者がそれを受けてどうするのか、その後はなんにも聞かないから、言いっぱなし、言われっぱなしなんだろうか。
 設計者としてしゃしゃり出る隈研吾さんも、大学の学者建築家なんだから、何とか言うとかなんとかするべきだろうに、だんまりを決め込んでいるのは何故か。工事はどんどん進む。

 さてさて、これらばっかりじゃなくて、近いうちに青山通り沿い大企業用地に外苑容積移転で超高層開発騒ぎが起きるんだろうなあ、神宮球場と秩父宮ラグビー場の土地交換も面白そうだなあ、超高層ホテルつき神宮球場ができるかもなあ、当分まだまだ楽しみがあるなあ。
最も景観が変りそうなラグビー場とその隣の青山通り沿い
 オリンピックにゃ興味はないけど
便乗騒ぎにゃ興味津々

参照記事●五輪騒動瓢論集:新国立競技場と外苑再開発
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html

2016/02/12

1173【五輪便乗都市計画】岸体育会館と外苑ハウスの計画が分ったがなんで土地区画整理事業なんだろうか


【1172五輪騒動】の続き
http://datey.blogspot.jp/2016/02/1172.html

 ネット社会で趣味の都市計画ゴタクを並べていると、さすがにネット時代はすごいもので、たちまち疑問を解く情報提供のお方たちがでてきた。ありがたいことだ。
 昨日の五輪騒動ブログで、外苑ハウスや新岸体育会館(正しくは「(仮称)日体協・JOC新会館」というらしい)のあたりが、どうもよく分らないことを書いたら、それらの地元説明会の資料を教えてくださったお方がいた。 
岸体育会館説明資料の一部
外苑ハウス説明資料の一部
そこでこれら3図を合成してみたら、こうなるのかとよく分かった。

  外苑ハウスは、原則的には現在の敷地の中で建て替えるらしいが、スタジアム通りからのアクセス通路部分を、新岸体育会館敷地の一部に入れるらしい。
 外苑ハウスはスタジアム通りからの車アクセスはなくなって、外苑西通りのみからアクセスにする、というわけか。
 土地区画整理事業をやるそうだから換地するのであろうが、北側の都営住宅が無くなって公園になって環境が断然よくなるから、外苑ハウスの土地評価はぐんと上昇するだろう。とすればそのアクセス部分の土地は減歩対象か。

 新岸体育会館の説明資料に、計画地10000㎡と書いてあるのは、地区施設の三角広場1000㎡とJSC新ビル敷地も含むのであろう。
 これら3つの施設(三角広場、JSC新ビル,岸体育会館)をひとつの敷地にして、岸体育会館はJSCビルの増築扱いにするのか、それとも敷地は別だけど計画は一体ということか。三角広場は敷地か敷地外か、そこのところがわからない。

 なんにしてもこうなると、地区計画のAー3及びAー4地区の変更が必要である。
 Aー3とA-4の間の外苑ハウスアクセス通路部分をA-4に組み入れ、元こもれび広場部分をA-3から切り離して、A-4に組み入れて、面積変更をすることになるだろう。
 先の都市計画公園の変更の時に、こもれび広場部分を都市公園から除外した理由が分らなかったのだが、そこを新岸体育会館の敷地に組み込みたかったのが、その理由らしい。今になってようやくその下心と言うか”陰謀„の意図が分かった。

外苑ハウスの土地については、新たに再開発等促進区と地区整備計画の記述が必要になる。
 しかし、再開発等促進区のような緩和型地区計画で、最初にその内容がないままに再開発等促進区のみを定める地区計画ってのは、違法ではないが不適切であると、わたしは思う。これはこれから出て来るであろう神宮外苑と青山通り沿いの土地についても同じである。
 つまり、緩和するってだけ決めて、なぜ緩和するのか、緩和に見合う地域貢献は何かについてきめるのは後回しってのは、都市計画の決め方として、オカシイでしょ。

 ところで、どうして土地区画整理事業なのか、いまだにわからない。
 土地区画が変るのは、外苑ハウスのスタジアム通りからのアクセス通路が、岸体育会館敷地に組み込まれるだけである。
 これだけのために土地区画整理事業ということは、なにか税務上の都合でもあるだろうか。

 まあ、わたしとしては、遠くの街の、なんの関係もない、どうでもいいことに、自分の都市計画趣味で、なんの役にも立たないことを言っているのだが、唯一役に立つのは、わたしのボケ進行の遅延策にはなることだ。まことにありがたいことだ。


(追記1 2016/06/16)
 右のような図を東京都から情報公開によって手に入れた方(Masazumi Atsumiさん)がおられて、ネット公開されたので、その図を引用します。
 これを見て、なぜ土地区画整理事業とするのか、その理由を次のように推測します。
外苑ハウスの敷地は、東側の接道がスタジアム通からできなくなって、西側の区画道路が前面道路になるのだけど、建て替えのためにはこの狭い区画道路の幅を広げる必要がある。
 それには、現在都市計画公園決定している都営霞丘住宅の土地の一部を、拡幅道路として取り込む必要がある。
 そうすると都市公園の一部廃止が必要になる。しかし都市公園法第16条は、公園の廃止を禁止している。
 そこで同条第1項を適用、つまり都市計画事業としての土地区画整理事業を行うことで、例外措置により一部廃止をする。

●都市公園法第16条 
 公園管理者は、次に掲げる場合のほか、みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない。
1 都市公園の区域内において都市計画法 の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合
2 廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合

(追記2 2016/05/25)
Masazumi Atsumiさんのフェイスブック経由情報によれば、区道拡幅部分は都市公園指定範囲外とわかった。予め拡幅予定部分を外して公園指定してあった。だから都市公園法上の問題はないと分かった。都市計画決定時の図が小さくて、それを判別できなかったわたしの誤りでした。
 土地区画整理事業とする理由を推測すると、換地によることで、外苑ハウスの土地に関する負担をなくするためでしょう。

新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集(まちもり散人)
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html

2016/02/10

1172【五輪騒動】新国立競技場に便乗の周辺開発計画が動き出して都市計画変更や区画整理事業をやるらしいがなんだか不可解

●岸体育会館がやってくるので地区計画変更だろうか

 どうやら新国立競技場場騒動が一段落したからだろうか、こんどはその南あたりに建築を建てる計画が動き出しているらしい。
 南あたりとは、都市計画変更前の都営霞丘住宅地、明治公園こもれびテラス、そして外苑ハウスの土地である。
 都営住宅地は、都市公園の変更で新たに明治公園に都市計画決定されたから、多分、ここには建築計画は無いだろう。(ここでは「新霞ヶ丘広場」と言うことにする)

 角地の三角の明治公園こもれびテラスは、同じく変更で明治公園から除外して、新たに地区計画の地区施設として「広場」の指定となった。(ここでは「三角広場」と言うことにする。)
 このあたりで最近になって知った建築計画のひとつは、代々木にある岸体育会館を移転して、この三角広場に建てるというニュースである。それを読んで勝手に考えることにする。

 日刊建設工業新聞http://www.decn.co.jp/?p=59995にそのニュースが出ている。
「日本体育協会(張富士夫会長)は、老朽化が進む岸記念体育会館(東京都渋谷区神南1の1の1、同協会の本部が入居)を神宮外苑地区に移転新築する。新会館の名称は「日本体育協会・日本オリンピック委員会新会館(仮称)」。東京都新宿区霞ケ丘町4丁目の都立明治公園こもれびテラスと民有地を都が土地区画整理した敷地(約3300平方メートル)に建設する。新会館の規模は地下1階地上14階建て延べ約1万9500平方メートル。建物の最高高さは60メートル。」(2016年2月4日)
 ニュースの通りだとすると、都市計画決定している地区施設の広場に、建築を立てることはできないはずだから、これから地区計画の都市計画変更を行う必要がある。
日刊建設工業新聞記事2016年2月4日
地区計画で三角広場は地区施設の広場指定

どのように変更かわからないが、まずは再開発等促進区の土地利用基本方針の変更が必要である。現在のそれは、新霞ヶ丘広場と三角広場をまとめてAー3地区として、その土地利用方針は次のとおりである。
「国立霞ヶ丘競技場の建替えに合わせて、外苑前駅方面からの新スタジアムへのバリアフリールートの整備を図るとともに、公園・広場等として整備を図る。」
 これだと、建物を立てることはできないだろう。「公園・広場等」の「等」のなかに岸体育館も含まれるとは、まさか言うまい。この文面の変子が必要だろう。

 更に地区整備計画の変更も必要である。
 広場を廃止するか縮小するとすれば、地区計画で決めた地区施設広場は、なんだったのか。これに替わる広場をどこかにつくるのか。その南のJSCビル敷地と調整して、広場を確保するか。
 ニュースによると計画では建築高さ60mとある。現在は高さ制限は高度地区規制の30mだから、2倍以上に緩和する必要がある。ただし、Aー3地区全部を緩和すると、公園も緩和に入るから、Aー3地区から3角広場部分を分離するのだろうか。
 緩和に対応するためには、地区への貢献が必要だが、そのための新たな地区施設等の指定も必要になるだろう。
 そのほか現在は何も書いていない用途制限も、新たに書き込む必要があるだろう。容積率の緩和は必要なさそうだ。

●外苑ハウス建替え地区整備計画追加か

 新霞ヶ丘広場の南にぶら下がる「外苑ハウス」の建て替え計画について、地元に説明会があったそうだ。その資料がネットに載っていたので、それを見て勝手に考えることにする。
 地区計画が決定した当初から気になっているのだが、この一民間共同住宅ビルの外苑ハウス敷地だけが、どうして都市計画の地区計画区域に入っているのだろうか。
 このあたりの寺院や学校住宅地などが広く入っているならわかるが、外苑ハウスだけが入っているは、地形的にも土地利用的にも、そして都市計画的にも、どうにも不可解である。

 不可解と言えば都営住宅用地が入っているのもそうだが、そこは新国立競技場がらみということで百歩譲るとしても、どうみても外苑ハウスは新国立競技場に何の関係もない。
 地区計画でここだけ地区整備計画が抜けているのは、新国立競技場には何の関係もないという証明のようなものである。つまり地区整備計画を定めるに至るほどには多数の地権者の合意ができていないということだろうから、ドサクサまぎれにとにかく地区計画に入っておこうと、強引に再開発等促進区はめ込んだように見える。


 さて、その外苑ハウスを建て替えする地元説明の資料によると、建替え建築の規模は、敷地約9千㎡にたいして、延べ床約6万㎡、高さ80mだそうである。
 となると、どうしえも容積率は現行300%を500%に、高さは現行40mを60mに緩和が必要になりそうだ。今はまだ定めていない地区整備計画を、新たに制定する必要がある。
外苑ハウス建替え計画の地元説明資料の一部(ネットより)
だが、これだけ大きく規模的緩和をするべき都市計画的理由は何だろうか。それに見合う社会的貢献が必要だが、それは何か。
 地元説明資料を見る限りでは、単純に現在の敷地の中で大規模化高層化して建て替えるだけで、道路や公園を提供するような特別に地域に貢献する施設はなさそうである。
 子育て支援施設とか災害対策施設とか書いてあるけど、まあ、この規模なら当たり前のようなものである。店舗を設けるから、競技場の観客を相手にひと儲けするらしい様子もある。

 敷地内に広場を設けているのが貢献のつもりだろうが、そもそもすぐ北隣が広い新明治公園公園だし、南東隣は高等学校、西隣りは寺院と墓地だから、周りに十分オープンスペースがあって、いまさらここに広場を設けてもさほど地域貢献にならないだろう。要するに共同住宅住民のための施設にしかならない。
 どうも現在のビルを巨大なものに建て替えるだけとしか思えないのだが、それでも都市計画の緩和がありうるのだろうか。
 ここのような低層市街地に接して道路幅も広くないアンコ部分に、大規模高層ビルが建つのは、都市計画的には好ましくないだろう。
 せっかく都営住宅をつぶして作る公園が、このビルのおかげで日陰になってしまう。

 わたしは外苑ハウスの建て替えがいけないと言っているのではなく、老朽化したのなら建て替えするべきだと思うのだが、一民間ビルの建設を公共的な意義がある都市計画として、その敷地だけを規制緩和して支援する理由が、どうも見つけにくいと言っているのだ。
 これが建て替えられても、今よりも市街地環境がよくなるとは思えないのだ。ここの都市計画には、何か特別のなことでもあるのだろうか。

 今後、この周辺の民有地が、うちも再開発促進区に追加したいと言うと、その都度敷地毎におなじように追加して緩和するのか。外苑ハウスができて他ができない理由がない。でもそれでは都市計画はめちゃめちゃである。
 念の為に書いておくが、わたしは外苑ハウスにはなにの関係もなく、眼に敵にしているのでもなくて、都市計画一般論として不可解と言っているのであるから、誤解しないでもらいたい。

●やるならもっと根本的な整備をやれ
 
 このあたりを土地区画整理事業で整備するというニュースがあるが、本当だろうか。
 土地区画整理事業は広い範囲の土地を入れかえて、道路、公園、宅地を使いやすく良い環境に仕立て直す事業である。
 上に見たように、三角広場も外苑ハウスもその土地のままで、建物を建てるらしい。新明治公園とあわせてこのあたりを入れ替え整備はしないらしい。
 道路や公園があらたにできるのでもないらしい。土地区画整理事業で何をやるのだろうか。
 
 わたしは以前に、このあたりを土地区画整理事業で整備するならば、このようにやるといいだろうねと、勝手に提案をしたことがある。http://datey.blogspot.jp/2015/12/1156.html

 その骨子は、都営霞丘住宅用地の西の外苑西通り沿いに外苑ハウス(図の④)と岸体育館(図の③)の敷地を持っていき、その東の範囲(図の④)に都営霞丘住宅の建て替えをし、外苑ハウスの跡を公園(図の③)とするのである。
 こうすれば広い道路に面して高層建築群が建ち、街区のアンコ部分は中低層住宅と公園となるのである。

 このように外苑ハウスも入れて全体を揺さぶって整備するならば、外苑ハウスが都市計画に入っていても不思議ではない。
 なお、新国立競技場敷地は、建物の外部を全て明治公園として開園する。これによって、明治公園の面積問題はなくなるはずである。
 もちろん、現在の都市計画公園や地区計画の変更をしなければならない。

 と提案を書いてきたが、まあ、どの方面からも一顧だにされないでしょうな、犬の遠吠え、蟷螂の斧、ごまめの歯ぎしり、馬耳東風、猫に小判、蛙の面に小便、、、いいんだよそれでも、こちとらは趣味で言ってるんだからね、。

●次の便乗本命都市計画変更がもうすぐ出てくるだろう

 まあ、なんにしても、外苑ハウスや岸体育会館のために、そして便乗大本命の神宮球場などの神宮外苑の中の都市計画追加変更案が、近いうちにでてくるにちがいありません。
この次の都市計画大本命の神宮球場やラグビー場等の再開発は?
  あ、そうだ、忘れそうになったが、大大本命の新国立競技場の敷地そのものの地区整備計画の変更案も、新案に決まったので変更があるに違いない。
 もしも変更が無いなら、新案はザハ案を踏襲したことになる。

 東京都民のお方たちは、都市計画行政の動きに注意しておきましょうね。
この前みたいにも、決まって締まってから、知らない間に決まってたなんてブツブツ文句を言うのじゃなくて、都市計画手続きの素案段階でも原案段階でも縦覧の時がきたらすぐさま、意見があるならばきちんと意見書を出し、意見公述しましょうね。
 意見書を出しても、意見が取り入れられるかどうかわからないけど、すくなくとも都市計画審議会の委員たちが、この前みたいにイイカゲンじゃなくて、こんどは真面目に審議するように、その言動に注意して精神的圧力をかけましょうね。

 わたしは現地の事情もオリピック事情もインサイダー情報は何も知らないし、東京都民でもないから、ナンダカンダと言っても、ヒマ老人が机上で頭をひねって、ボケ防止に遊んでいるだけである。
 無責任なものであることを承知しているが、都市計画を専門としていたものとして、ちょいと気になるからときどきこうやって書くのである。

新国立競技場建設と神宮外苑再開発・2020五輪運動会騒動瓢論集(まちもり散人)
http://datey.blogspot.jp/p/866-httpdatey.html
 

2016/01/18

1165【五輪騒動長屋談議】新国立競技場ザハ・ハディド案を素人首相が突然白紙撤回する判断を何故できたのか未だに分らない

熊五郎:こんちわ~、ご隠居。寒いですねえ。
ご隠居:おや熊さん、いらっしゃい。うん、ようやく冬らしくなってきたねえ。
:でね、また、例の新国立競技場のことなんですがね。
:またその話かい、もう飽きたねえ。AKB48に決まっちまったことだし。
:なんでAKBが出てくるんです?
:あ、ちがった、AKTだったな、梓・隈・大成チーム。
:な~んだ、でもねえ、ここまで来ても、ずっと腑に落ちないことがあるんですよ。
:そりゃ、まあ、質じゃなくて「安かろう、早かろう」って、ファストフード流決め方だったから、腑に落ちないねえ。

:いや、それもあるけど、ずっと前から気になってるのは、なんで安倍首相はいきなり白紙撤回って言い出したのかってことですよ。
:ああ、そうだな、例の第3者委員会報告も、どういうわけかこれにはアンタッチャブルで、どうして超高額工事費になったか、そればかりだったな。まあ、超高額になってボロクソに叩かれたので、安倍内閣人気挽回策だろう。
:でもねえ、ワンマン社長じゃないんですよ、どこかの独裁国じゃないんですよ、民主主義国の総理たるもの、そんなことエイヤッと言えないでしょ。誰か裏で知恵付ける人がいたに違いないと思うんですよ。
:そりゃ政治の世界だから、裏だらけだろうよ。

:だからその裏は誰なんだろうと思うんですよ。馬鹿でかいし、高度に技術的な建物でしょ、しかも設計は終わって、もう工事にかかってた。なのに、あっと言う間に白紙に戻して、またやり直しても安くなってしかもオリンピックに間に合うって判断、こんなこと素人の総理大臣にできっこないでしょ。
:もちろん技術官僚にも無理、ってことは、どこか大どころのゼネコンが安い早い案を作って、これならいけますよって、裏から首相に工作していたってことかい。
:まあ、そう言ってしまっては赤新聞になりますが、そうとしか考えられませんよね。
:そういえば、やり直しプロポーザルの条件に、工事費の上限を1550億円とするってあったけど、ゼネコンならできるな。
:カネメでここまで問題になってるんだから、イイカゲンな金額に設定はできない世の中の雰囲気でしたからね。それに工期だって絶対に伸ばせない。
:だとしたら、いったん設計してみないことにはカネメも工期も出せない、しかしそれをやるには膨大な時間とカネがかかる。

:ところがカネも時間もかけなくても、それをできる人たちがいたんですね、ザハ・ハディド案をもとに設計をして工事を始めていた企業ですよ。
:そう、そうだな、彼らならいちからやらなくても、現にやっている仕事をアレンジすればいいんだからね。それなら工事費1550億円以下で、工期も間に合うって見込みが立つ案を簡単に作れたはずだな。
:さて、ではそれを作って裏から首相に白紙撤回をさせたのは、いったい誰なんでしょうかねえ、それは、たぶん……。
:待った、それは言わない方がいいよ、赤新聞になっちまうからね。ここんところは小説にして書くしかないな。
:それにしても、はなから1550億円と分っての入札同然のゼネコンのプロポーザルなんて、要するに言い値でまかせたってことですかね。普通に入札にすればもっと安かったかも。
:とすると、3000億円なんて一時言ってたのは、マスコミに高い高いって言わせて世論誘導して、白紙撤回を正当化するための高等戦術だったのかなあ。
:で、プロポに応募したのも既にやってた企業たちでしたでしょ。
:う~む、そうだったな。当選企業は2度の支払い受けるんだ、しかも税金原資の。

:でもね、これでもなぜ白紙撤回したのか、本質は分かりませんね。高いってのなら設計変更して安くすればいいでしょうに、それじゃあザハ・ハディドが承知しなかったんですかねえ。でもJSCは説得できない、文科大臣もできない、しょうがないから首相を首切り役にしたんですかね。
:でもねえ、カネメだけでの首切りだったんだろうか。それに、一方的な首切りは揉めると分ってるよなあ、それでもやったのかね。現にザハ・ハディドは大成チーム計画は白紙になった自分の案の剽窃である、てなことを言ってるらしいよ。
:そうそう、そこんところは、日本では知的財産権について甘いからなあ。ネットには、大成チーム案とザハ案との似ている点を詳しく見せているサイトがあり、なんだか例のエンブレム騒ぎの感じですよ。
:大成チームの建築家の隈さんが記者会見して、いや似てないとか、同じ機能だからどうしても似てしまうとか、妙なこと言ってるよ。これまで日本人の当事者建築家が誰も表に顔を出さなかったけど、隈さんが初めてだな。
:まあ、大成も梓設計もザハ・ハディド案をとことん知っているので、新プロポーザルもその延長上にあるとでも思い、ついつい似てしまうったのかもなあ。隈さんじゃなくて、梓設計が出てきてしゃべるべきですよね。
:ザハ・ハディドってメンドクサイ建築家を首切ったのに、こんども隈研吾って有名建築家を入れたのはなぜなんだろ。
:へへ、クマのことはクマにおまかせを、、たぶん、隈って建築家は、ザハ・ハディドと違って柔軟な態度の人なんでしょうね、悪く言えばご都合主義でどうにでもなる。伊東豊雄も前のコンペに応募落選したら、槙さんの尻馬に乗って新案を提案したり、柔軟というか日和見な人ですね。

:なんでもイギリスのメディアによると、JSCはザハ・ハディドに残金をほしいなら知的財産権を放棄して以後文句を言うなって申し入れして、ザハ・ハディドがそれを拒否したらしいな。
:おやおや、あらかじめザハ・ハディドに因果を含めておいてから、白紙撤回をしたんじゃないんですねえ、甘いなあ。
:まあ、なんだねえ、こうやっていろいろ揉めると、こちとら庶民は何の関係もないから、ただただ面白がって知的娯楽になって、年寄りにはボケ進行遅延策になるし、これからもどんどん揉めてほしいよな。
:この一連の事件は、安倍内閣による高齢者福祉対策なんですよ、たぶん。
:それにしちゃ、金がかかり過ぎだよ、オリンピックも要らないから1兆円ほど、われら貧乏高齢者に直接支払してもらいたいなあ。

参照●五輪騒動:新国立競技場と外苑都市計画に関する論考集(まちもり散人)

2015/12/29

1160【五輪騒動】建築家はあれこれやかましいが都市計画家は新国立競技場や神宮外苑の都市計画に何にも言わないのは何故か

 すったもんだの末に新国立競技場の計画は、どうやら決まったようだ。こんどはうまくいくのだろうか。
 でも、以前にあったように、突然にワンマン宰相がでしゃばってきて、また白紙撤回って言い出すかもしれないから、まだまだ五輪騒動の楽しみは尽きない。

 建築に関する騒動はこうやって出直しになったが、そのもとになっている都市計画については、景観とか風致とか髙さとか、世の評判からさっぱりと忘れられてしまったらしい。
 今度きまった新国立競技場案によって都市計画を変更するのか、しないのかさえも分らない有様である。ザハ・ハディド案をもとにしてそれを実現するように決めた都市計画だから、普通ならば、こんどの大成・梓・隈組案によって決め直す変更をするのであろう。
 もしも、そのままで公園も地区計画も都市計画の変更をしないのなら、大成案はザハ・ハディド案を踏襲したことになる。模倣とまでは言わないにしても、オリジナリティがない案であることを証明するようなものだ。

 建築界がこれだけ騒いでいるのに(ピントハズレもあるが)、不思議なのは都市計画界が何にも言わないことである。
 わたしがこのブログでその方面を何度も挑発しているのだが、都市計画家のどなたも乗ってこない。無視されている。
 今回のような騒ぎには、都市計画家は無関係ではあるまい。区画整理事業を持ち込むとかニュースもあるから、当然に地区整備計画の変更だってあるだろうし、その未指定エリアに新指定も必要だろうが、それについてどうあるべきか、都市計画の誰も言わないのはどういうわけだろうか。
 それとも、わたしが知らないだけで、都市計画系の学会や協会などでは、論文や意見がでているのだろうか。
 
 雑誌『建築ジャーナル』から、この地区の都市計画ついての論考を求められたので、2015年12月号に寄稿した。下記にそれを載せておく。執筆日は2015年11月16日。
 
====『建築ジャーナル』誌 2015年12月号寄稿論考=====


新国立競技場と明治神宮外苑で
都市計画家は何をしてきたのか

伊達 美徳 (都市計画批評家)    

 都市計画家は
建築から都市までマネージする

 この新競技場建築計画に関しては、多様な問題が世間の話題になったが、要はその建築のあまりの巨大さへの批判である。
 では事業主の日本スポーツ振興センター(JSC)のもとでその巨大さを決める仕事をした専門家は誰であったか。新競技場の建築計画をまとめ、国際コンペの裏方を務め、実現のための都市計画案を策定し、東隣の神宮外苑も含む大規模な都市計画へと歩を進める役割をした都市計画家とその都市計画の抱える問題に目を向けよう。

 これまで新国立競技場について多くの建築家が登場したが、では都市計画家は誰なのか。有識者会議に都市計画家の岸井隆幸(日本大学)が名を連ねており、2012年11月決定の国際コンペの審査員でもあった。しかし、都市計画の実務作業をしたのは、その下に技術調査専門員としてついた都市計画家・関口太一(都市計画設計研究所)であった。

 JSCが関口が主宰する都市研に「国立霞ヶ丘競技場整備に係る基本計画策定等」の業務を発注したのは2012年4月だが、実際にはかなり前から作業していたであろう。
 その内容は、新国立競技場の建築計画、国際コンペ実施の裏方支援、それを実現させるための都市計画案づくりなど多岐にわたった。都市計画家・関口太一による基本計画の上に、建築家たちがあの巨大な新競技場の絵を描いたのであった。

 その基本計画をもとにして国際コンペによるザハ・ハディドの競技場案が生まれるのだが、巨大すぎて現在敷地におさまらない。だが、オリンピックの錦の御旗のもとに無理矢理はめこむとて、足りない敷地は隣地も公園も道路もとりこみ、厳しい都市計画規制の緩和措置も必要だ。これは都市計画の出番であり、都市計画家の仕事である。
 そして新競技場関連地区の都市計画の変更案や新設の地区計画の詳細案をつくる。

 これとは別に、東隣の神宮外苑に関しても計画が進められてきている。2003年に都市計画学者の伊藤滋を長とする委員会が「明治神宮外苑再整備構想調査」報告書をまとめた。
 外苑の出自に留意しつつ新時代の都市公園としてのあり方を構想しており、この都市計画家は今井孝之(都市設計研究所)である。

 これら東西ふたつの計画をひとつに合体した都市計画が、「神宮外苑地区地区計画」である。これはJSCを代表者として国、都、明治神宮、隣接民間企業等の土地所有者が共同で、東京都に都市計画法に基づく提案(2012/12)をして、受理した都が評価の上で都市計画決定(63.3ha、2013/06)をした。

 地区計画はそこに整備する建築をベースにした都市計画であるから、都市計画家は官と民の多数の関係者の建築計画をひとつの地区計画にまとめて、このプロジェクトの実現へのマネージメントをしてきたことになる。
消えた国立競技場の向うに東京都体育館が見える

都市計画公園指定の神宮外苑は
どのような姿で開園するのか

西側の"新競技場関連地区"の地区計画は具体的であり、ザハ・ハディド新競技場案と日本青年館・JSC新ビル計画案に合わせて高さ、容積率、用途の緩和がその内容である。
 高さ制限の緩和は、許可基準を変更して風致地区も高度地区も大幅に突き抜けた。これについて都市計画としても都市公園としても妥当か否か、総合的な検討があったのだろうか。

 東側の"神宮外苑関連地区"の地区計画は、大きく2分して、絵画館と銀杏並木のあるラケット型エリアは保全地区として、創建当初への復元を目指している。
 この保全地区を除く神宮球場等のある外苑と、外苑外のラグビー場及び企業用地等については再開発等促進区としている。企業用地が取り込まれた事情がわからないが、地区整備計画も未指定で詳細はいまだに不明である。

 しかし、外苑再開発地区の土地利用基本方針には、"既存スポーツ施設及び関連施設の更新・再編、新時代のスポーツニーズに対応した施設整備、神宮外苑の緑豊かな風格ある都市景観と調和、魅力的な賑わいの商業、文化、交流、業務機能の集積"とある。
 地権者たちのつくった地区計画企画提案書には、"見直し用途地域は商業地域、見直し容積率は現行の指定容積率に上乗せ設定"と、都市計画的にドラスティックな表現がある。

 一部に企業用地を含むからか、これでは何でもありの商業地再開発の意図で、神社境内だからとて縁日の見世物小屋や屋台店を常設の大規模商業ビルにして立ち並ばせるのか。
 地区計画は、開発構想計画に基づいてそれを実現するように定めるものだが、都市計画家はどのような絵を描いているのだろうか。既に地区計画指定しながらその構想図さえも非公表であるのが不可解である。

 忘れてならないのは、この神宮外苑には都市計画公園の指定があることだ。そもそも神宮外苑はかつて国家神道の国有地であり、戦後に宗教法人となった明治神宮に時価の半額で譲渡(約5.5億円、1956)したから、いわば半分は国民の財産である。
 であればこそ東京復興内環状緑地(1945)、都市計画公園(1957)、風致地区(1970)等の指定をして、都市公園という公共的施設への方向づけをしたのであろう。
 しかし、公園指定から半世紀を過ぎた今も未開園のままである。この機会にその歴史を踏まえた構想計画を練りあげて公表し、例えば特許公園としてでも、全面開園へと進めてほしいものである。

地区計画の区域設定が
都市計画として不可解である

 この地区計画区域には都市計画として不可解な点がいくつかある。都市計画家たちはどう考えたのだろうか。
 第1に、西側の事業が明確な新競技場地区と、東側の内容不確実な神宮外苑地区とは、実体的には無関係なのに同時にひとつの地区計画としたことだ。
 オリンピックで急ぐ官側の計画に、民が便乗したのか。

 第2に、霞ヶ丘都営住宅の廃止である。JSCが都に都市計画提案した時点では、東京都住宅マスタープランに霞ヶ丘都営住宅は"建替え等の事業実施が見込まれる特定促進地区に指定、公営住宅建替事業"との文言があるから、廃止する提案は上位計画との整合性に問題があった。
 この廃止が必要になった都市計画的理由は、移転する日本青年館・JSC新ビル用地(図の)が都市公園指定地であり、公園には建てられない建築用途だから公園指定を廃止、だが、都市公園法により公園面積の減少をできないので、都営住宅地を代替公園としたからであろう。
 オリンピック敗退第1号が公営住宅であるのが、いかにも居住政策のない日本らしい。
消滅させられる都営霞丘団地

 第3に、その南隣の民間共同住宅ビル(図の)は、盲腸のようにぶら下がり、都市計画的に何の脈略もない。
 ①及び都営住宅と一体再開発ならまだしも、私営の民間共同住宅ビル単独建て替えを規制緩和して優遇の一方で、都営の共同住宅ビルを消滅さてしまうとは、なんとも不公平かつ不可解である。
どういうわけか地区計画に入っている外苑ハウス
第4に、青山通り沿いの複数民有地(図の)には、既に大規模建築が大規模敷地に建ち並び、都市的整備済みであるのに再開発計画に含むのはなぜか。
 その一方で、外苑前交差点あたりの細分化した土地に鉛筆ビル群が並ぶ整備が必要な地区(図の)を除外しており、いずれも不可解である。
どういうわけか向うの大規模ビル群が再開発区域

 都市計画批評を試みるつもりが批判となってしまった。建築批評のように、専門家の間に都市計画批評が根づき、一般社会に広まることを期待している。
(写真は、このブログののために付加した)



参照●五輪騒動:新国立競技場と外苑都市計画に関する論考集(まちもり散人)

2015/12/16

1153【五輪騒動】オリンピックで大急ぎ新国立競技場ドサクサまぎれ都市計画にチャッカリ便乗した周辺開発イイカゲン都市計画

   1152【五輪騒動】より続く

●霞丘都営住宅廃止の不可解

 明治公園ことで前々から気になっていたのは、霞ヶ丘都営住宅地を新たに明治公園にしたのは、なぜなのだろうか、ということである。
 国立競技場の敷地に明治公園の「霞丘広場」を取り込んだので、開園している明治公園面積が減る、その代りに都営住宅敷地を公園にした、ということなのだろうと、単純に思っていたのだが、よく考えるとどうも、それがオカシイのだ。

 オカシイからとて、東京都の都市計画部局のどたかに教えを乞うのも、何の関係もないわたしでは気がひけるし、聞くのもシャクだから、ヒマにまかせて図面をにらみつつ考えてみたのだ。
 それで分ったかというと、よく分からないし、関連してもっと不可解なことも発見して、余計に分らなくなった。まあヒマだから、ナンダカンダと考えたこと書く。
 
 前に述べたように、霞丘広場も日本青年館も敷地にとりこんだ国立競技場の全部を、明治公園として開園すれば、霞丘広場の代替地は不要なのである。それをしないで、わざわざ都営住宅敷地を公園代替地にしたのは何故か。
 東京都は霞丘都営住宅を潰したかったのか。しかし、東京都の住宅マスタープランには、建て替え事業をここでやると書いてあったのだから、それもおかしい。

●都営住宅廃止はJSC・日本青年館新ビルのトバッチリか
 
 どうも、霞丘都営住宅は、近くに移転してくるJSC本部ビルと日本青年館のトバッチリを食らって、あえなく廃止という犠牲になった様な気がする。
 JSC・青年館新ビルの敷地は、都営住宅のすぐ南東の外苑西テニスコートがあった、JSCの土地である。ここに新ビルを合築するとて、すでに工事中である。
都営住宅、外苑ハウス、JSC/青年館新ビルあたり
黄色線内は地区計画の範囲

外苑地区計画全体図

明治公園指定区域全体図

このテニスコート敷地も国立競技場や外苑などと同じく、都市計画公園の指定をしている土地であったが、例の立体公園を決める時に一緒に、この土地を都市計画公園から除外する変更を行った。
 それはなぜか、たぶん、こうだろう。JSC・青年館新ビルは都市公園法からすると、都市公園内には立地できない施設である。将来、ここも明治公園として開園するとなったら違反建築で取り壊しになるおそれがある、あるいは知っていながら既存不適格建築を文科省が建てるわけにはいかないと思ったのか。だから公園を廃止した。
 
 ところが、この廃止をしたままだと、都市公園指定の面積が減少するのだが、都市公園法第16条で、廃止の時は代替公園をつくるように決めている。そこで代替の公園用地として、霞丘都営住宅をそれに充てる都市計画変更したのである(のだろう)。

 つまり、このわたしの妄想が事実ならば、都営住宅はJSC・青年館新ビルの犠牲、そのもとは新国立競技場の犠牲、そのもとは東京2020オリンピック・パラリンピックの犠牲になったのだ。
 オリンピック敗退者の第1号が、公営住宅であるってところが、なんとも住宅政策のない日本の象徴的な事件である。

●都営住宅と外苑ハウスの不可解かつ不公平

 このたびのプロポ案のグランドレベルの図面を見ると、霞丘広場と日本青年館を取りこんで、競技場の前庭は十分に広いように見える。都営住宅跡地にできる公園に、わざわざデッキまで掛けて渡る理由が、どこにあるのだろうか。
 都営住宅を新霞丘広場にしなくとも、一向に問題がないように思えるのだ。元に戻しなさいよ。
 まあ、でも、そうして元に戻したら、JSC・青年館新ビル用地を公園に戻さなければならないから、困るだろうなあ。

 そこで、このあたりの地区計画の図面をにらんでいたら、妙なことに気がついた。霞丘都営住宅の南隣に外苑ハウスなる共同住宅ビルがあり、これが地区計画区域に入っているのである(ここを公園指定すればいいかな)。
 このあたりで新国立競技場とは何の関係もない民有地である。地形もゲリマンダーのシッポのように飛び出しているし、まわりは地区整備計画があるのに、ここだけが方針のみである。

 ここを地区計画区域に取りいれ、しかも再開発等促進区としているのだが、地区整備計画がないからその開発内容が分らない。
 一つの敷地の一棟のビルを都市計画として独立的に定める、しかも緩和型にするのは何故か。こういう都市計画がありうるのか、ヘンでしょ。

 都営住宅はあえなく廃止、こちら単独民間共同住宅は容積や高さ緩和して再建築とは、不公平かつ不可解である。 
 
●総合的な再開発計画があるなら地区計画決定の時に出せ

 最近のマスメディアの報道によれば、このあたりを土地区画整理事業を行う予定があるとのことである。
 その範囲がわからないが、国立競技場、日本青年館、都営住宅、JSC・青年館新ビル用地、外苑ハウス等をその区域として、土地や道路・公園の入れ替えや整形を行うのだろうか。

 そうやって総合的に再開発を進めて、明治公園も新たに開園し、都営住宅も外苑ハウスも建て替えをし、JSC・青年館ビルもそれらと一体の景観の中で建てなおすのなら、どのような姿になるかわからないにしても、まあ、理解できなくもない。
 でも、それならそうと、地区計画決定の時にそれを組み込むべきである。そもそも再開発等促進区は、そのような具体的な再開発計画がないままに定めるべきではない都市計画なのだ。

 周辺に影響が大きい緩和型地区計画の再開発促進区を、方針だけで指定するのはあまりに安易な都市計画である。
 それは、外苑地区地区計画全般について言えることだ。どうもオリンピックで大急ぎの新国立競技場ドサクサまぎれにチャッカリ便乗して、内容が決まってもいない外苑ハウスばかりか神宮外苑や隣接民有地までもイイカゲン地区計画に取り込んだ気配が濃厚である。
 提案書を作った都市計画家、審査して計画書を作った都や区の行政の都市計画家、それを審議した都市計画審議会の都市計画家、どいつもこいつも恥ずかしくないのかい? (うわ、言いすぎか、天に唾か)

 じっと地区計画の図面をにらんでいると、なんともはや外苑地区地区計画全体が不可解なことがたくさんあるのだ。(つづく)

●五輪騒動:新国立競技場と外苑都市計画に関する論考集(まちもり散人)



2015/11/29

1149【五輪騒動】明治神宮外苑はドサクサ新国立競技場大急ぎ都市計画変更に便乗して何をやる気なのか

●開発構想図を見ないで審議する都市計画審議会の能力は

『全体の構想というようなものを前提となっている(はずだから)、それを示していただいて、ゆえに地区計画が必要なんだということをお示ししていただく必要があるのかなと。いきなり地区計画(図書が)が出てきても何でこうなるのかという話にどうしてもなってしまう…』(2013年2月158回新宿区都市計画審議会議事録より、括弧内は引用者補足)。

 これは委員の都市計画家・倉田直道さん(工学院大学)の発言である。専門家でも都市計画手続き用の図書だけではわからない、審議できないという。
 その次の159回新宿都計審の議事録を見ると、これに応えて出した絵は国立競技場とJSCビルの予想図であったらしい。倉田さんが求めたのは地区計画区域全体構想の絵、つまり外苑も含めての全体構想図であるが、それは出ないままだったようだ。
 構想図が無いままに審議した都市計画審議会の委員たちの能力は、すごいものだと思う。また、東京都の行政職の都市計画家の能力にも敬服するばかりである。わたしだったら、到底不可能であった。
 ではそのようなものは、存在しないのだろうか。

●再開発等促進区地区計画は開発構想図が元になるはずなのに

 地区計画はミクロの都市計画であり、具体的にどのような姿にするのかを構想し、それが都市計画として正しい方向であると市民も行政も認めて、的確に実現にむけて誘導するために定める都市計画である。
 特に再開発等促進区では、土地利用を開発方向に、つまり規制を緩和する方向に変更するから、その土地利用と建築計画に関して具体的なイメージがないままに定めることはできない。緩和したことでどのような影響が出るのか、知っておいてこそこの地区計画の適用か不適用が分るものだ。

 地区整備計画でそれを詳細に示すとしても、基本方針段階においても構想図がないままに地区計画の文言書くことは事務的にはできても、それでは内容が余りにいい加減な都市計画である。
 この件の東京都都市計画審議会では、新宿区都計審での倉田発言のような意見は無いまま、ほぼなにも審議しないままに原案通りに可決したのはどういうわけなのだろうか。
 結論を言うと、無いのではなくて、あっても見せないのに違いない。見せないとなると、なにか後ろ暗いことがあるのかもしれない、と思うよ、へそ曲がりのわたしはね、、。
着色範囲が地区計画指定範囲。
紫色の民有地がなぜ含まれるのか不可解。
詳細指定の新国立競技場関連エリアと、
詳細未指定の外苑等民有地エリアが、
再開発等促進区地区計画を同時決定したのが不可解。

●国立競技場と神宮外苑がひとつの地区計画なのはなぜか

 そもそも、新国立競技場の地区計画と、神宮外苑の地区計画とは、実体的には関係がないのだ。だって、土地の入れ替えがあるわけじゃなし、容積率の移転があるわけじゃなし、たまたま隣合せているに過ぎない。
 競技場側では建築、敷地、公園、道路などの具体的な姿が提示されて、都市計画的変更内容が明確になっているのに、外苑側は基本方針の文言と区域割の図だけで、なにをやるのか何も具体的な絵が示されない。それを同時に都市計画決定なんて、不可解である。

 それらをひとつの地区計画にして、しかも同時に定めたのは何故か。
 オリンピック会期に追われている国と都の側(図の水色)の大急ぎの都市計画手続きに、民間側の外苑(図の緑色)や民有地(図の紫色)が開発計画も決まらないのに、ドサクサまぎれにチャッカリ便乗したとしか思えない

 ここで再開発等促進区さえを通しておけば、内容は後の地区整備計画でなんとでもなる、うるさい市民の眼は競技場に向いている今がチャンスだ、ということだったのだろうか。なぜ再開発等促進区なのか、そもそものこの制度の出自に照らしても、一向に理解できない。
 現に、新国立競技場については、世間がゴタゴタ言ったけれども、外苑側の都市計画については、誰もなにも言っていない。うまいことすり抜けたものである。
 外苑の将来がどんな姿になるのか知らないが、わたしが言いたいのは、こんないい加減な再開発等促進区の決め方は、都市計画として実に不可解であるということだ。

●『建築ジャーナル』誌に外苑都市計画の不可解さを寄稿した

 他にもいろいろ不可解なことがあるので、雑誌『建築ジャーナル』2015年12月号に寄稿したので、お読みください。

 寄稿小論の表題は「新国立競技場と明治神宮外苑で都市計画家は何をしてきたのか
 前置きはこうである。
この新競技場建築計画に関しては、多様な問題が世間の話題になったが、要はその建築のあまりの巨大さへの批判である。 では事業主の日本スポーツ振興センター(JSC)のもとでその巨大さを決める仕事をした専門家は誰であったか。新競技場の建築計画をまとめ、国際コンペの裏方を務め、実現のための都市計画案を策定し、東隣の神宮外苑も含む大規模な都市計画へと歩を進める役割をした都市計画家とその都市計画の抱える問題に目を向けよう。

 本文をここに載せたら雑誌が売れなくなるから、小見出しだけを書く。
・都市計画家は建築から都市までマネージする
・都市計画公園指定の神宮外苑はどのような姿で開園するのか
・地区計画の区域設定が都市計画として不可解である

●参照
『建築ジャーナル』 

参照
◆【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発瓢論集


2015/11/06

1144【神宮外苑あたり徘徊③】なんだか懐かしい風景の霞ヶ丘都営住宅団地を消滅させる外苑都市計画提案は実は都住宅マスタープランに背反していたのでは?


●どこか懐かしい風景の霞ヶ丘都営住宅団地へ

 銀杏並木から消えた国立競技場そしてと体育館へと歩いてきて、消えた明治公園四季の庭に沿って外苑西通りを南へ、半分消えた明治公園霞が丘広場、そして霞ヶ丘都営住宅へとやってきた。

 この都営住宅はまだ建っているが、いずれ新国立競技場のトバッチリを受けて、消える運命にある。トバッチリ組の霞ヶ丘広場がここに移ってくるからである。都営住宅を地区内のどこかに建てるのかと思ったら、完全に消えるらしい

 なんとも懐かしい団地風景である。5階建てだけどエレベーターがなくて、階段で上り下りする。給水塔があるのも懐かしい。わたしは1970年代に10年ほど、このような団地に住んでいたことがある。
 庭には今、たくさんの果樹があり、柿やミカンや柚子等がたわわに熟している。いまどきのキレイに刈り込んだ造園ではなくて、草も繁っているのだが、なにやら懐かしく成熟感がある。


●建て替えられた北青山都営住宅団地

 実はここによる前に、外苑銀杏並木の東隣にある北青山1丁目都営住宅に寄ってきたのだ。
 そこはかつてはここと同じような低層棟が建ち並んでいたのだが、いまは高層住宅に建て替えられている。
 その周りはここと違って、いかにも造園デザインの風景で、キチンとしているのである。いまどきで言う高級マンションのようだ。立地条件も高級住宅地並である。
北青山1丁目都営住宅

 霞ヶ丘都営住宅だって、ほとんど同じ立地条件である。建て替えすれば、暮らしやすい良い住宅になるだろうに、なぜトバッチリで消滅させるのだろうか。
 代替の都営住宅として、JSC・日本青年館ビルに高層都営住宅を併設したってよさそうなものを、もったいないと思う。

 いま、空き家問題やマンション問題が起きている。大災害で住宅難民が大量に出ることが予想されている。東北地方では大震災後に大慌てで大量の公営住宅を建てている。
 そういうことから分るように、いまこそ公的賃貸住宅が重要な時なのである。遊びの場の競技場のトバッチリで、こんな良い立地の公的住宅が消えるなんて、なんともやりきれない。

●霞ヶ丘団地を消す地区計画提案は都マスタープラン違反

 そこでちょっと調べてみた。東京都や新宿区には都市マスタープランとか住宅マスタープランとか呼ばれる、まちづくりの基本計画がある。そこにこの霞ヶ丘住宅のことをどう書いてあるか。
 外苑地区計画を提案したときの書類「地区計画企画提案書」に引用してある「東京都住宅マスタープラン」には、「霞ヶ丘地区の都営住宅建て替え事業が特定促進地区として指定」と書いてある。新宿区の都市マスタープランにも同じことが書いてある。
 そして引用の図には『「低中層個別改善地区」地区の特色を考慮した良好な住環境へと改善するために地区計画等を活用して整備する』と記入がある。
 つまり霞ヶ丘団地も、北青山団地のように、建て替えをすることに決めてあったのだった。

ということは、ここの地区計画を提案内容には、もちろん霞ヶ丘都営住宅が競技場のトバッチリで消えるようになっているから、これは上位計画に背反している提案である。
 う~む、それを受け取った東京都は、自分のところで作ったマスタープランと違う内容なのに受理したのであったか。
 受けとってからマスタープランを変更したのかしら、行政裁量として適切だろうか。

参照
◆【五輪騒動】新国立競技場建設と神宮外苑再開発瓢論集