2024/08/16

1832【敗戦記念日定点観測】靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑に戦争残滓と予兆を探る徘徊

 8月半ばになっても暑い日が続く。それでも思い立って、昨日(2024年8月15日)のこと、東京九段の靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑を徘徊して来た。そう、参拝ではなくて徘徊である。

 5年前までは毎年のこの日、つまり太平洋戦争敗戦放送記念日に訪ねていたのが、この数年はコロナパンデミック老々介護に襲われて遠出することができず、2020年を最後に途切れていた。今年の夏はコロナも遠ざかったようだし、2年余の老々介護が終了したので、ようやく復活した。

 なぜそこを毎年8月15日訪れていたかといえば、そこに祀られる戦死者への参拝では決してないのだ。その日にこの二つの場に出現するあの戦争の残影を眺め、さらに次の戦争の予兆を探り観るためである。いわば社会見学的な野次馬見物である。
 4年ぶりの九段徘徊だったが、靖国神社には大勢の人出であり、それに比べて戦没者墓苑は静かなものであった。

九段坂上へ

 九段坂下の地下鉄駅から靖国神社に一番近い出口を地上に出ると、いきなりにぎやかな客引きの群れというか、ビラ配りというか、各種の政治的アピール集団が歩道の両側に並び、まことにかまびすしいのは例年通りだ。
 さまざまなその集団は、日本の右寄りの人たちばかりではなくて、台湾やチャイナからの政治的な訴えもあるようだ。ウィグル族の訴えがあったのは、これまでで初めてだ。





 それらの勧誘をかわしつつ抜けて、靖国神社境内の外苑に入り大鳥居をくぐると、一転して静かになる。10年ほども前まではこの境内の中にいろいろな訴えの集団がいて煩かったものだが、今は排除されてしまったので参道は広々としている。

 4年前まではこの広場にテントをはって、何か記念集会らしもの催されて、演説のようなものが聞こえていたものだが、それもなくなっていた。もっとも、その集会がなくなったのではなく、野外ではあまりに暑いのでどこか室内のホールにでも場所を移したのかもしれない。


 それでも毎年おなじみの軍服コスプレのおじさんたちが数人いて、日の丸や日章旗を掲げたりしているが、いっときと比べて勢いがない。

軍服コスプレおじさんたち

 十数人の集団らしきの男女たちが、何かの記念碑を囲んで国歌や軍歌の合唱をしている。靖国神社らしい音楽だ。
 前にはよく出会った見るからにウヨク集団らしいお兄さんたちに、今回は出会わなかったのは、いなくなったのではなくて、わたしが来るのが遅かったからだろうか。

君が代や軍歌を合唱する人たち

 内苑に入る二の鳥居をくぐると、神門から行列がはみ出している。拝殿まで続く参拝の待ち行列である。この暑い中をじっと立ち尽くしてそろそろと列が進むのに従っている。わたしは参拝者ではないので、その横を通りぬけて神門をくぐる。そして能楽堂を横に見て、遊就館に入る。

神門外に伸びる拝殿からの参拝者行列


拝殿前

遊就館展示

戦記物は戦意高揚の本ばかり

戦争コスプレさせている母と子

 ここまでいつものコースである。今年の様子を一応眺めたので、これでもう引き返すことにした。これまでと比べて、境内全体が少し落ち着いてきた感がある。それでも戦争の残滓の臭気が漂う。

千鳥ヶ淵へ

 南門を出て、千鳥ヶ淵に向かう。堀の沿った桜並木の木陰道は、この暑い日でも気持がよい。歩く人が急に少なくなってしまった。堀の向こうの森の上に、東京駅あたりだろうか、超高層ビルがたくさんに建ち並んで、でこぼこのスカイラインを見せている。しばらく来なかったら、森の上部の風景がずいぶん変わった。

千鳥ヶ淵の桜並木も老いてヨレヨレ

森の上に都心超高層スカイライン出現

 千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、いつものように靖国神社とは比較にならぬほどの少ない人である。これくらいの人、建物、緑の密度が最も気分がよい。
 六角堂には礼拝する人たちが十数人集まっている。その中で女性が立ち上がって何かしゃべり始めたが、拡声器付きやかましくい。雰囲気が壊れる。つい耳に入ったのはコリアヘイトスピーチであった。そうか、ここにもヘイト集団がやってきたとちょっと驚いた。これも戦争の残滓であろうか。

靖国神社と比べて静かな戦没者霊園にもヘイトスピーチ

 長居は無用と引き返して九段坂を下りつつ見れば、かつての軍人会館、今の九段会館が復元保全修復されて見え、その背後に超高層ビルが建っている。これもいわば戦争の残滓のひとつである。
左に菊竹清訓設計の昭和記念館、中央に旧軍人会館、右に九段会館新高層ビル

 九段坂下の交差点に来れば、おお、やっているよ今年も、ウヨクさんの演説である。通り過ぎようとして耳に入ったのは、ここでもコリアヘイトスピーチであったのは、今はこれが右方面では流行っているのだろうか。

九段交差点のウヨクさん

 日の丸デモ行進が来るかと思ったがが来なかった。しかし、戻ってからYOUTUBEを見ていたら、デモの映像が出てきたから今年もやったらしい。ずいぶん大勢の中年や若い男女が、こういうデモに参加するって、そういう時代が来たのかなあと、これは毎年8月15日に感じる戦争復活の気配である。
九段下の日の丸デモ(youtubeより引用)

 そうやって久しぶりの九段徘徊だった。靖国界隈の戦争の残滓と気配は、5年前と大きな変化はないようだった。戦死者賛美の空気は色濃く漂うのである。
 そこでいつも思うのだが、戦争兵員として殺されたものは、その一方で人を殺した可能性がることを、だれもが忘れていることだ。そしてあの戦争で死んだのは日本人だけではなく、それ以上の人々がアジア各地で死んだことも、これまた忘れていることだ。

 これまでの九段徘徊につてはずいぶん書いてきた。わたしが戦死者を悼まない理由も何度も書いてきた。今年で最後になるかもしれないので、これまでの一連の8月15日の思いをまとめておく。
 〇2005年と2013年・靖国神社815定点観測風景2005、2013
 〇2014年・終戦記念日の靖国神社の喧騒と千鳥ヶ淵戦没者墓苑の静寂
 〇2017年金モール軍服長靴の若者がスマホをいじる靖国の夏
 〇2018年・夏まつり森の社のにぎわいは今日も戦をたたえる見世物
 〇2019年敗戦記念日は東京九段の靖国神社に戦争の残影を見物に
 〇2020年・コロナ禍敗戦記念日の変わらぬ靖国神社風景が怖い
 〇2021年・この前はアメリカに敗れこの度はコロナに破れかぶれ
 〇2022年あの敗戦から77年の歳月に次々と戦争の日々が重なる 
 
2023年・敗戦記念日に戦争準備を叫ぶ政治状況に閉口するばかり

 それにしても、今年もいつものコースを歩きとおすことができたが、5年前には普通に歩いた道のりに苦労するようになり、来年があるかどうかわからない歳になってしまった。
 乗り慣れていた地下鉄の駅駅でうろうろ迷ってしまった始末は、わたしが老いたのではなくて、この間に駅改造や路線進展のためであると思いたい。次は東京駅周辺と渋谷駅周辺の徘徊に出かけなければなるまい。そう、浦島太郎気分で街で迷うのは楽しいものだ。

(2024/08/16記)

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戦争の記憶を伝える

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伊達美徳=まちもり散人
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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

徘徊貴記ありがとう❣…千代田区役所の最上階・図書館で逢いましょう。案外便利な立地条件。ビル前「赤い自転車」レンタルを常用してたコロナ直前が懐かしい。行先は神保町(旧三省堂裏口の)「兵六」…定時直前に並び、…不一。…