| 藤本孝子第五歌集『碧空ぽかりぽかりとんでゆけ』(大団円版) |
本づくり趣味と歌集づくり 伊達美徳
この『藤本第五歌集・米寿記念』はわたしの手作りの製本である。藤本さんの歌づくりに、わたしの本づくり趣味とを併せたのである。米寿記念と銘打つからには、第二から第三歌集までのソフトカバーから変えて、ちょっと張り切ってハードカバー本にした。
これは製本に手間がかかり、百余冊をつくるのに毎月十冊づつ発行として、一年かける予定で制作を始めた。。その間にも増える歌人の新作の歌を、毎月末発行分に順次に取り入れた。これはまるで月刊誌を発行している気分で面白かった。
藤本さんの第一歌集『春楡の歌』(砂子屋書房 2007年)は、2006年までの選歌を収録した本格的な格調高い装丁の商業出版だった。これを贈っていただき、彼女が今も住む、わたしの故郷の高梁盆地風景がいくつも詠まれていて、懐かしかった。
わたしは仕事でも趣味でも本を好きで、自著の専門書の商業出版もあるが購入した積ン読本ばかり増えていた。一時は一万冊ほども所蔵していたが、それらは今はすべて処分した。わたしは本を読むより集めることが好きであったらしいと老後に気が付いた。
そのうちに集めるのに飽きてきて、自分で本を制作する趣味を始めた。パソコンで原稿を書き、編集、装幀デザインして、机上で印刷製本する。この本づくり趣味はけっこう奥深くて今も探求中だ。藤本第二歌集からこの第五歌集までをこの趣味に加えていただいた。
わたしの本づくり趣味による手作り本は、「まちもり叢書」と名付けるシリーズが22タイトルがある。作るごとに、出会った知人に読め読めと押し付けてきた。そのほかに学校同期会の会誌とか街の案内書とか、思いつくごとに本にして他人に押し付けてきた。
| 「藤本孝子歌集」シリーズ全部と「伊達美徳まちもり叢書」シリーズの一部 |
藤本さんの歌集づくり企画もそのひとつだった。第二歌集(2014年)上梓プロジェクトを歌人にそそのかして「藤本孝子ぽかりぽかり歌集」シリーズを始めた。幸いにも喜んで乗っていただいて、第三(2017年)、第四(2021年)を経て第五歌集(2026年)に至った。
今や、最初の歌集上梓から二十年という一世代分もの時が経っているのだった。手作り歌集開始からでも12年も経ち、花写真と墨絵で関わってもらった幼馴染四人組は、いずれも健在で米寿を迎えたので、第五歌集には「米寿記念」と銘打った。
この歌集シリーズは、わたしの老後生きがいメインプロジェクトになっている。さて、これからどうなるのだろうか。「卒寿記念」とか「白寿記念」とか夢想は自由だが、さすがに卒寿近くなると老衰の波が寄せてくるのが見える。
老いを怖がってはいないが、いつかは歌集制作停止の日、まさに卒業が来るだろう。でもまだ歌人もわたしも健康である。その日を楽しみにして第六歌集へ生きよう。詠み手と作り手のまさに「老酔録」である。
(2026年2月記)
上エッセイは、藤本孝子第五歌集の2026年3月(大団円版)に挟み込んだ小冊子「栞」に載せたものである。下の一文は、この第五歌集の最初の2025年3月版の栞に載せたもので、手作り本のことを書いている。
本づくり趣味のこと 伊達美徳
この歌集の歌つくり人・藤本孝子さんも、花つくり人・定森治子さんも、墨絵描き人・阿部節子さんも、そして本づくり人のわたしも、幼馴染みんなそろって米寿の祝いを迎えるほどにも生きています。 生まれた日からもう八十八回も太陽の周りを回り続けてきたのです。広い広い宇宙の中、長い長い時間、長い長い旅でした。
その旅の中でこれが五回目の孝子さんの歌集です。孝子さんの歌集についての始まりからここまでは、第五歌集『碧空へぽかりぽかりとんでゆけ』の「あとがき」に書いてあるように、第二歌集からわたしが「本づくり趣味」でかかわっています。これは楽しい心豊かな遊びなのですが、お互いに次回があるかと気にかかります。
わたしの趣味は「本づくり」であり、その趣味を孝子さんの歌集づくりで発揮させてもらっているのです。歌つくりと本づくりの二つの趣味の合体です。それに治子さんの花づくり趣味と、節子さんの墨絵かき趣味も合わせて、幼馴染四人組の共同仕事です。
実を言えば昔々、彼女たちと一緒に本づくりをしたことがあるのです。同じ中学校で共同して学級誌『鳩舎』(1952年と1953年)を作ったのです。その本づくりは、ガリ版印刷の素朴なものでした。それ以前に小学校6年生の学級新聞部員として一緒の写真がありますから、その頃からの趣味かもしれません。
時は流れて2018年のこと、中学同期生たちは65年ぶりに『鳩舎 卒寿・傘寿記念号』を共同して作りました。先生は卒寿に、生徒は傘寿になり、全国あちこちに住んでいて連絡しあって作りました。この時にわたしは本づくり趣味を大いに発揮させてもらいました。既に2014年と2017年に孝子さんの第二と第三歌集を作っていましたから、もうガリ版刷りではありません。
本づくりを趣味とする人は、珍しいかもしれません。本という形にするには、原稿を書き、それらを編集し、本の姿をデザインし、印刷して製本します。これら全部を、書斎の机で手作業で行うのが、本づくり趣味です。使う機械は個人用のコンピュータとプリンターだけ、そのほかは紙、糊、カッター、定規など文房具です。学校の図画工作みたいなものですが、格好良く言えば本づくり職人芸です。
こうして本という作品を作り、出来具合を眺め自己満足し、他人様に読め読めと押し付けます。これは茶碗づくりの陶芸趣味に似ています。土をこね、ろくろで形を作り、絵付けして、卓上電気炉で焼きあげた作品をしげしげと眺め、他人様に送り付ける、そっくりです。
わたしの職能は都市計画のプランナーでしたから、その計画した都市が現実の形に至るには何十年もかかり、多くの人たちを巻き込みます。だからその計画を本やパンフレットにして、市民に伝えることが重要なのです。たくさんの本づくりをやってきました。仕事をやめてからは、この本づくりを趣味としたのです。
それまでに自分が書いて世に発表した多くの文章があります。それらを編集して、書籍シリーズ名「まちもり叢書」として、すでに22タイトルを制作しました。と言っても書店で売るのではなくて、読ませたい人にムリヤリ押し付けます。もしも物好きにも読みたいという人がいれば、大いに喜んで謹呈します。
藤本孝子さんの歌集もその一環なのです。これに治子さん節子さんを巻き込んで今や共に米寿、祝い歌をひとつ。
碧宙へぽかりぽかり書を放ちめぐりめぐり八十八春
(2025年3月記)
米呪を越えて老いに酔い痴れる日々の記録
https://datey.blogspot.com/p/blog-page_23.html
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伊達美徳=まちもり散人
伊達の眼鏡/老酔録 https://datey.blogspot.com/
まちもり通信 https://matchmori.blogspot.com/p/index.html
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