2011/07/06

446原発文化人と原発労働者

 中曽根康弘、梅原猛、班目春樹、吉本隆明、渡部恒三、ビートたけし、大前研一、堺屋太一、清水正孝、弘兼憲司、与謝野馨、幸田真音、勝間和代、星野仙一、小沢遼子、蟹瀬誠一、山折哲雄、小佐古敏壮、岡江久美子、浅草キッド、茂木健一郎、中畑清、大熊由紀子、田原総一郎、アントニオ猪木、金美齢、田中知、荻野アンナ、薬丸裕英、福澤明、松本零士、藤沢久美、関村直人、大宅映子、草野仁、養老孟司、福島敦子、北野大、三宅久之、木場弘子、岸本葉子、中島健、豊田有恒、鈴木篤之、住田裕子、西山英彦、渡瀬恒彦、吉村作治、近藤駿介、小宮山宏

 これは佐高信著「原発文化人50人斬り」(毎日新聞社2011)の表紙に載っている名前である。わたしが聞いたことがある名前はこのうち30人。
 どこまで本当か知らないが、それぞれ、大なり小なり原発を推進、賞賛、宣伝をしてきた人たちだそうだ。
 ふ~ん、大熊由紀子もそうなのか、養老孟司もか、え、吉本隆明もかあ。

 わたしは時流のキワモノ本はきらいで、いつもは買わないのだが、さすがに原発問題が深刻になってきてついに3冊買ってきた。
 そのひとつが上の佐高本、それから堀江邦夫著「原発労働記」(講談社文庫2011)、もう一冊が佐野真一著「津波と原発」(講談社2011)。

「原発労働記」は著者が福島第1、美浜、敦賀の各原発での労働者として、実際に働いた体験を書いたノンフィクションである。
 いやあ、すごいすごい、なにがすごいって、あまりにもいい加減な放射線対策の原発現場で、過酷な労働をしている、下請け、孫請け、ひ孫受けの労働者たちの実態である。
 記述が実に淡々としているのだが、起っていることは読んでいて気持ちが悪くなる。

 ある一定以上の線量を浴びるとその労働者はふたたび原発で仕事はできないから、労働者は使い捨てである。
 労働者は危険なところで長時間働かざるを得ない設計であるらしい。だから、使い捨て労働者が増える。
 そこで、原発仕事専門のピンハネ手配師、ピンハネ親方たちがいて、次々と交替の労働者を全国から集めてきては、原発現場に送り込む。
 人手が足りないから、ときにはその労働者の浴びた放射線量のごまかしもする。
 1979年に刊行されたものの再刊であるから、現在の原発での労働環境とは違うのかもしれない。
 
 いや、そうではないな、考えてみると、原子炉周りはいったん作ったら放射線だらけだから、たとえ改良したくても一部を壊したり変更する工事は簡単ではないはずである。
 著者の堀江が書いた原発のなかの放射線の危険のある労働区域であればあるほど、手がつけられないだろう。
 原発労働者がはたらくのは、13ヵ月ごとに発電を停めて検査のときだが、そのときにも原子炉から放射線がじゃんじゃん出ている。そんなところで働くのである。
 それも改良工事で働くのではなくて、部品の取替えや設備の掃除であるから、毎回の定期検査の度におなじことをやっているのだろう。

 東電の社員は使い捨てにできないからだろうが、いつも安全なところで働く。危険仕事は、下請け、孫請け、ひ孫受けの使い捨て労働者達である。
 福島第1原発事故の現場では、緊急対策に走り回った人たちは、大量の放射線を浴びたに違いない。
 そのとき走り回ったのは、これも使い捨て労働者たちだったのだろうか。
 原発は地域に雇用を生み出しているというが、その内実はいったいどんな雇用なんだなろうか。

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