紺屋川沿いは美観地区と名づけているが、美観地区といえば元祖は倉敷である。倉敷まで電車で30分ほどの高梁だが、どうも倉敷のほうが有名であるのは仕方がない。
ちょっと二つの美観地区を比べて見てみよう。
どちらもそれなりに個性的であるが、大きな違いは倉敷の美観地区は徹頭徹尾観光地区になっていることで、高梁は観光もあるが基本的には生活の町である。
この違いはどちらが良いとか悪いとか言うのではない。立地がそうさせたのだろうが、観光写真にしやすいのは倉敷である。
わたしの好みから言うと倉敷美観地区は、あまりにも川柳といい土蔵の町並みといい、どうも絵になりすぎる風景で、その統一感がいささか気持ちが悪い。
それでもナマコ壁土蔵ばかりのなかに、昔の町役場の擬洋風建築と大原美術館の洋式建築が顔を出していて、ちょっとは救われる。街は程よい程度のざわめきのある風景がよい。
ここへは少年の頃から大原美術館を訪ねて何回も行ったことがあるので、昔の姿も覚えている。もちろん今ほどになまこ壁の町並みはそろっていなかったし、土産物屋もなかった。
高梁美観地区にもなまこ壁の蔵が、紺屋川下流の老松橋南の高梁川との出会うあたりにある。かつて高梁川が水運の道であった時代に活躍した建物だから、倉敷の蔵と機能的には同じだろう。歴史を思わせるとはこのような風景だ。
ついでに言うが、その蔵の前の道の向かいにある紺屋川の堤防立ち上がりに、ペンキでなまこ壁を描いている。それが今はハゲてきて美しくないのだが、はげてなくてももともとペンキ塗りが奇妙であった。本物にしてはどうか。でなければ真っ白ペンキのほうが良い。
なかでも美観地区の周辺に高い建物を建てさせないようにする背景条例の制定は、1970年代という実に先進的な施策であった。ただ、これほど観光商業的な風景を予想していたのだろうか。
倉敷の美観地区の風景の特徴は、倉敷川の水面に写る柳や家並みの情緒がある。
しかし、高梁の紺屋川はいつもはほとんど水が流れていない。だから、川底に散歩道を作っていて、いくつもの小さな橋をくぐっていくことができるのが面白い。
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