久しぶりに外からの依頼で外向けに生真面目な文章を書いたので、ここに載せておく。
掲載誌は「Planners 93」(日本都市計画家協会発行、創立25周年特集号、2021年6月30日発行)で、この協会の創設の頃からしばらくの間、常務理事兼事務局長といういわば番頭のようなことをしていたので、4半世紀の記念誌に協会から執筆依頼があった。
都市計画家はパンデミックで何を・・
伊達 美徳(都市隠居・元都市計画家)
創立から四半世紀の長い年月、まさに継続は力そのもので、多くのJSURP都市計画家の努力の賜物であり、まことにご同慶の至りです。創立者の伊藤滋先生に感謝を申し上げ、初期において共に活動し今はこの世にない仲間を指折り数え偲びます。わたしは老いて隠棲し、今どきの都市計画家も都市計画もわからぬ状態です。しかし、いまのようなパンデミックとなると都市計画家に伺いたいことがとりとめなく浮びます。
「都市計画家」という職能を掲げて25年、さてこれが隣接職能の「建築家」ほどにも人口に膾炙したでしょうか。建築家だって怪しい日本ですが、一般ジャーナリズムやSNSに都市計画家の登場を、今も待ちつづけています。昔、衆議院議員選挙に当選したJSURP会員がいましたが、その肩書が都市計画家だったと懐かしく思い出します。都市計画家という職能の裾野を、工学的専門的世界から市民的文化的世界へと広げようとしたJSURPでしたが、今も会員にその広がりはありますか。
さて今や新型コロナウィルスのパンデミック真っ最中、都市計画家には仕事があるのですか、食っていけていますか。世界の巨大都市に集住する人間の甚大被害が明白ですから、これは都市計画にも大きな影響をもたらすでしょう。とすれば、今はコロナ後の都市について計画の真っ最中で大忙しでしょうか。それとも、震災とは違って物的破壊がないので、人間の身体的処置のワクチンによる原状復帰となる日を、静かに待つのみでしょうか。
世界人口爆発で高密度生活圏が拡大するばかり、そして地球システムへのそのサブシステムである人間圏からの技術的介入も増すばかり、いっぽうでそれに対する地域生態系からの応答の仕方について人間は未知のままに科学技術の実験を続けています。遅まきながら気づいた地球規模での応答のひとつが、都市化によるエネルギー消費のガス発生による環境温暖化です。コロナパンデミックも都市化実験への地球システムの応答で、人間システム側には突然の応答に狼狽し、どこから来て次に何が起きるか未知のままです。
これほどにも人間システムの中の都市システムがコロナに痛めつけられているのは、都市という先が分らない実験が、生態系から新型コロナウィルス出現を挑発したのかもしれません。今、人間システムから地球システムのコロナ応答への技術的介入方法がなく、人間システムの内部である人体一部改造ワクチンで一時的避難のほかはないようです。
しかし、ヒトは生殖により未改造のヒトを次々と生み出すので、いつか分からぬが必ず来る次のパンデミックも同じ繰り返しでしょうか。この人類の歴史に積層する実験は人口爆発以前には成功だったでしょうが、今、地球レベルで“共有地の悲劇“に至ったとすれば、都市爆発の時代に来ているので、次の悲劇はより近く大きいのでしょう。
回答不明でくどくど自問するばかりですが、ひとつだけ自答を思案しています。それは「都市計画の倫理」ということです。「津波てんでんこ」の倫理が築いたこの10年間の都市計画を俯瞰する今、こんどは「コロナてんでんこ」避難に出くわして、その倫理が生みだす政治の波に右往左往し、倫理の波浪にもまれています。そこからコロナ後の倫理が築かれて行き、その倫理による都市計画家が築く都市がこの先にあるのかもしれません。わたしはそれを見ることはできないにしても、JSURPと都市計画家の次の歩みの四半世紀にも期待いたします。(20210505記)
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