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2026/06/03

1952【老酔録㊱】四季を通じて歩きに行く森林公園の新緑の樹林を徘徊して日本の自然を考える

 新緑が燃えるように輝く、美しい季節が来た。この4半世紀を四季を通じて毎週のように歩きに来る「根岸森林公園」は、最も美しい時だ。日の当たる芝生から、木陰が涼しい林内へと、徘徊コースを変えた。

 緑はますます盛んになるが、こちらの身体は次第に退化してゆき、いつものコースを歩く時間が、昔と比べて2倍くらいかかるようになった。脚を左右に出す調子も歩幅もあまり変わらない(と自分では思っている)のだが、速度が次第に低下するのは、老衰のせいだろう。 

 今年の初夏の緑をここに記録しておこう。来年は記録できるかどうかわからないから。

 この公園(19.3ヘクタール)のメイン風景はこんなようすだから、森林公園とうたっているが面積的には芝生公園だ。林地は芝生広場の周囲に押しやられている。もとがゴルフ場だから、こんな風景だろうし、都市住民が好むのは広い芝生であることも分かっている。


 いまは新緑で美しい。アスファルト舗装の周回道路ではなく、林の中の道のないところを落葉を踏みつつ歩いて行こう。

 見た目は気持ち良いが、落葉がフカフカと積る中に、木の根が複雑に浮き出てきて、足元に注して転ばぬように歩く。脚が不自由になろうとする時期の老人には、一種のリハビリテーションになりそうだ、と思うことにする。

  落葉樹林は新緑で包まれている。気持ちよろしい。

 タブノキ常緑樹林は、いま新緑に交代する時期だ。新芽が萌えるように輝いている。


 シラカシなどの常緑樹林に入ると、暗くなる。
 
 暗い森の向こうに明るい開放的な草地が見える風景は、森に住んでいたころの人類が森の外にあこがれて出ていく頃の遠い記憶が脳内にあり、一種のあこがれ風景であるらしい。

 常緑樹林の中にぽっかりと広がる草地には、黄色い野の花が咲き誇る。切り株に腰かけてぼんやりと過ごす。

 草刈り機の音が森に響いてきた。そうなのだ、この森には下映えが何もないのは、この公園管理のおかげなのだ。下刈りを常にやっているのだ。そうしないと実はこの樹下の空間は、低木や草本類が繁茂して、足を踏み入れようもないジャングルのなるはずだ。

 日本の樹林は、下層には低木や本草で藪になるのが普通なのに、ここでは何も生えていない素っ裸だ。それは人間が下刈りを常にやっているからだ。こんな樹林は不自然だが、人間には快適だ。公園とは、そういう不自然な自然をいうのである。悪口を言っているのではない、そういうものだと言うのだ。

 燃えるように輝くタブノキの新芽。
 
 軟かに萌え広がる針葉樹の新芽。
 
 常緑樹林の下は、今生え変わる新緑の葉にとって代られつつ古い歯が、はらはらと落ちつつある。

 斜面地は人が入らないから、低木や地衣類を刈り取っていない。これが日本の自然の姿だ。

 落葉樹林は若葉が美しく明るい。でも本当の自然ならば、落葉樹だけではなく、常緑樹も交じり、土の上には笹などの地衣類が繁り、低木のアオキなどがびっしりと生えるはずだが、ここはここは公園として、人間が好む姿の単純な植生を人工的に作っている。

 公園と街との境あたりの急斜面は、道路端にはマント群落があり、斜面地には地衣類、低木、中木、亞高木、高木という、まさに自然樹林の姿を見せいる。自然の樹木類は大小の仲間で群落をつくり、パンツとズボンをはいて、動物や人間や風雨から自らを保護しているのだ。

 その近くの建物を撤去した空き地には、蔦類が繁り蔓延って、土地を保護するかのように衣類のようにびっしりとまとわりついている。この姿は、自然促成遷移してゆき、やがて樹林地になる。もっとも、日本の都市ではその前に人間が手を入れて改変してっ自然を駆逐してしまう。

 人間と森林の自然のありようをいろいろ考えているうちに、そうだ、久しぶりに東京明治神宮内苑の森を見に行きたいと思いついた。あそこでは、この根岸森林公園とは対極的な森林づくりをしている。(つづく:明治神宮の森へ)

(2026/06/03記)

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