見所(客席)はほぼ満員だった。演目狂言「鍋八撥」と能「石橋」で、どちらも再開場お祝いにふさわしい演目らしい。だが、内容はそれほど面白いものではないが、「石橋」の後場の獅子の舞いだけが楽しかった。
能「石橋」(しゃっきょう)では、2頭の獅子がボタンに花に舞い遊ぶ勇壮な相舞も、甲高い音で弾み響く笛も、実に楽しかった。能にはよくあることだが、つまらない眠くなる前場を我慢した甲斐がある後場だ。これが歌舞伎舞踊に翻案されて、派手な毛振りの「連獅子」になっている。歌舞伎狂言の「勧進帳」も能「安宅」からの翻案だが、武士の能と庶民の歌舞伎との基本的違いがよくわかって面白い。
出演は、狂言が大蔵流山本東次郎家、能は観世流梅若家で、もう30年以上も能を見てきたわたしにも、能役者も囃子方も見たことがない人ばかりだ。それはコロナ中から始まり、横浜能楽堂休館による、能楽見物から強制的に遠ざけられた期間が長かったからだ。唯一の例外は、能ワキ方の宝生常三だった。パンフにあるこの名を知らなかったが、舞台上には昔からよく見てきた森常好が出てきた。はて、急な交代役か、と思ってみていた。後でネットで調べたら、祖父がワキ方宝生家の能役者であり、最近その名を継いだそうだ。わたしより若いのに舞台上の所作があやしい、老いたか。
一応出演者の名を書いておく。
・狂言「鍋八撥」(大蔵流)
シテ(鍋売り) 山本則重、アド(鞨鼓売り) 山本則秀、
アド(目代) 若松隆、後見 水木 武郎
・能「石橋 大獅子」(観世流)
シテ(童子・白獅子) 梅若紀彰、ツレ(赤獅子)梅若景英
ワキ(寂昭法師) 宝生常三、
アイ(せがれ仙人) 山本則秀
笛:杉信太朗、小鼓:飯田清一、大鼓:柿原光博、 太鼓:林雄一郎
地謡:山崎正道、馬野正基、伊藤嘉章、角当直隆、
松山隆之、谷本健吾、川口晃平、土田英貴
能楽堂は2年間も工事をしたというのに、見たところではどこも変わっていないのは、耐震補強工事だったかららしい。ついでに内装もどこか変えたのだろうか。ここの一階メイン客席の床が、緩やかな勾配だから年寄りには安心だ。これを改装しなくて安心した。
ついでに書くと、ここの隣にある県立施設の二つのホールは、階段だらけで実に使いにくいので近頃は敬遠している。改装して階段に手すりを付けてほしいものだ。
能楽堂の話に戻ると、いまどきだから女性便所の便器数増加をすればよかったろうに、相変わらず女便所だけが長蛇の列だったのは残念だ。
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