熊五郎:ご隠居、こんちわあ、生きてますね、はいこれ、一緒に飲みましょ。
ご隠居:おお、熊さん、まあおあがりよ、なになにワインかい、うれしいね、今どき一緒に飲んでくれるなんてこりゃ涙がこぼれるよ。
熊:全くね、こうもコロナ蟄居が続くと心が苦しくなる、これもコロナ病ですね、さあ、乾杯しましょ。
隠:うん、ありがとう、美味いねえ、ネットバーチャル談議ばかりやってると人間は頭が変になるね、こうやって飲みつつ話そうかね。
熊:もうコロナの話は飽きたから今日は違う話をしましょうよ。東京青山に明治神宮外苑って野球の神宮球場があるの知ってるでしょ。
隠:わたしは球場なんて見世物小屋のスポーツ嫌いだけど、それくらいは知ってる。
●明治神宮外苑で都市公園の大規模削除とは
熊:その神宮外苑全体と隣のラグビー場は都市計画公園なんですが、現在の野球場やラグビー場が古くなったので建て替えるために公園を大規模にやめて、ついでに超高層ビルも建ててるそうですよ。
隠:えッ、公園をやめるのかい、そりゃできないだろ、都市計画当局が許さないだろ。
熊:いやそれができるのですよ、つい先日のこと東京都都市計画がそれをOKしたのですよ、そして公園内の樹木が1000本も伐り倒されるんだそうです、石川幹子先生によるとね。
隠:そりゃ石川さんが激怒するだろうあ、まさか公園の中にビル建てるために公園やめるって、そりゃできないよ。できたとしても削減面積と同等以上の公園を近くに新設するのが常識、そうしないと住民が許さない。
熊:だから今日は昔の都市計画家のご隠居に聞きに来たんですよ、それでいいのかなって。
隠:ホントかい、ちょっとネットで調べるかな、ほーほー、そういうことか、公園削減都市計画変更案案を2月4日に東京都市計画審議会で承認してる、う~む、世の中が変わったなあ、もう昔の都市計画家はついていけない。
熊:ね、都市計画で樹木のことは書いてないけど、かなり広く公園面積を削除してるでしょ、だから木も伐るのかと。
隠:そうだねえ、昔も今も都市計画で決めた公園を減らすのは、よほどの理由じゃないとやらないものだが、神宮外苑のような広い公園にビル建てたいから一部の公園を減らしたなんて時代が変ったんだねえ、渋谷の宮下公園の有様と言い、フン、そうしたいなら公園でも道でも川でもつぶしてビル建てればいいでしょ、どんどんやりなさいよ、。
熊:おやおや、ご隠居は人間が丸くなったか、あ、違うか、もともとあの神宮外苑そのものを嫌いだから、どうでもいいのですね。
隠:うん、まあ、そんなところだな、見世物小屋だらけだし、あんな権威主義そのもの公園なんて、わたしは好かないね、あ、そうだ、樹木伐るならあの銀杏並木を伐りたおしてしまいなさいッ。
●秩父宮ラグビー場を公園から除外する仕掛け
熊:まあまあ、わたしの話も聞いてくださいよ。神宮外苑用地は全部が都市計画公園だけど、今回のビルを建てるあたりは外苑用地隣のラグビー場用地なんですよ。
隠:そこはたしか国有地だよね、国の機関のJSCが管理してるけどね、そこも都市計画公園指定してあるよ、おかしいね、結構広いけど、そこを公園から外したのかい。
熊:そうなんですよ、でそこに超高層ビルを建てるようですよ。そこでちょっと調べたんですよ、どうしてそんな芸当ができるのかね。
隠:ほお、熊さんも都市計画に興味持ってきたな、いいことだよ、で、分ったのかい。
熊、えへん、ご隠居に都市計画を教えますよ、それはね「公園まちづくり制度」ってのを東京都が作っていて、それに適合するなら公園を削ってもいいよとなるんですね。
隠:なんだよ、公園を削ってよいと堂々と行政が言うようでは、もう世も末だね、いや、こっちが時代遅れかな。
熊:でね、その制度適用の都市計画公園の条件は「未供用区域のままで50年以上未整備状態が続き、公園機能が発揮されていないし、建築制限等により市街地の更新が進まない」ところだって。隠:ふうん、そうかい。都市計画だけ決めていつまでも事業実施しないでいる弊害を取り除こうという制度で、法律じゃないけど法の運用だね、そういう制度も必要だろうがね。
熊:外苑用地は公園として供用してるけど、ラグビー場は未供用区域だかららしいのです。でもね、それがどうもおかしい、現実は長期間ラグビー場であって、公園機能を十分に発揮しているし、市街地の更新が進んでない場所どころか、ラグビー場しか無いのだからもともと市街地でもないから、条件が合いませんよ。
隠:おお、そうだねえ、ラグビー場のところは、戦中までは女子学習院という学校だったけど、戦災で焼けて移転してその跡地にラグビー場を建てた。
熊:ラグビー場は外苑用地の公園内に建つ野球場と同じくスポーツ施設だから、公園に適する施設でしょ。今すぐ供用指定可能なのになぜ未供用だったのですか。
隠:そりゃ単に供用手続きを怠っていたからだろうね。
熊:あるいはラグビー場地主の文科省が、東京都の供用要請を拒否したのかもね。
隠:どっちにしても供用して当然だったところだが行政の不作為で未供用のままだった、そこをつかれて「まちづくり公園制度」を適用して、ラグビー場を公園から外してしまう都市計画提案がじもとから出てきて今回OKした、う~む、頭の良い奴がいたもんだねえ。この制度が無かったらできなかったね。
熊:ところがどうも気になるのは、この制度はこのラグビー場を公園から外すために、ここに宛てて作った制度のような気がするんですよ。
隠:なんだいそりゃ、。
熊:だってね公園まちづくり制度制定と、神宮外苑の最初の地区計画の都市計画決定とは同じ年にできているのです。つまりその時には既に今回の公園削除して再開発できるように仕組んでたような気がする。地区計画はその地区の権利者の提案ですが、提案の裏にはそんな取引があったのかもしれないと思わせます。
隠:う~む、ありうるかもね、違法じゃないけど裏口入学臭いね。でも事情通にでも聞かないと分らないね、それにしてもこれは国の機関のJSCが率先して公園を削除した、つまり政府が公園を減らしたんだよ、いっぽうの民間の明治神宮は減らしてないんだね、今どきはそういう世の中かい、まあ、わたしは世間から遅れてしまって、もうどーでもいいけどね。
●過密でも市街地でもないのに市街地再開発事業とは
熊:またそう言う、しょうがないね、じゃあ次の質問ですよ。この再開発計画を発表したのは、三井不動産を代表として、JSC,明治神宮、伊藤忠の4者で、事業名称を(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業としているんですよ。これってどう思いますか。
隠:おお、それは都市再開発法によっる方法で事業を行うってことだね、ほお、公園を法定再開発するのは珍しいねえ、法が予想してないよ、そもそも再開発するほど過密じゃないのが公園だからね、すごいこと発明というかひねり出す奴がいるもんだ。
熊:そうでしょ、そこでどうして市街地再開発事業を行うのかを調べたら国交省のサイトに「市街地再開発事業の目的:都市再開発法に基づき、市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る」と書いてあります。でも、この外苑地区再開発ではこれらのどれひとつにも当てはまらない、だって既に整備されている優良なる環境ですよ。
隠:おうおう、修復や建て替えは必要かもしれないが、いまさら市街地再開発事業事業なんて大げさにして大改造する必要はないな。都市再開発法の適用条件に合うのかなあ、都知事から認可されるのかなあ。再開発やるなら外苑前交差点北東の建て混んだ三角地こそとりこむべきなのにわざわざ除外して、やりやすいところだけやるとは筋が悪い。
熊:そうでしょ、それぞれ大きな土地を持っているのだから、それそれが建て直せばいいでしょ。なぜ市街地再開発事業って共同事業にするのでしょうか、いろいろ面倒な手続きがあるんでしょ、何かメリットあるんですか。
隠:この事業手法でやると国や都から補助金をもらえたり、不動産開発にかかわるいろいろな税の減免措置もあり、一般に行政的支援など受けられるメリットがある。
熊:みな大企業だしJSCは国の機関ですよ、補助金や税逃れ目当てに市街地再開発事業にするんですかねえ、みみっちい。
隠:いやまあ、その辺はまた別の意図もあるのかもしれないね、わからんなあ。
●実は国有地を民間に売り渡す事業であるとは
熊:あそうだ、ラグビー場と神宮球場を土地を入れ替えて建て替えるから、それに法的な裏付けある事業制度が必要なのかも。
隠:おお、そうかい、民有地と国有地の交換分合があるんだね、そのへんで法定再開発とする公的担保が求められるのかなあ、わからんなあ。
熊:ラグビー場の土地と明治神宮の土地を等価交換するのでしょうね。
隠:あ、そうだ、その入れ替えで国有地の一部をを神宮外苑に売り渡すのだねえ、そうかそうか、そういうことか、国民の財産だから、がっぽりと高く売って儲けてほしいものだね。
熊:なにを言ってるんですか、交換するって言ってますよ、国有地で儲けるなんてどうしてですか?
隠:いいかい、よくお聞きよ、今度の都市計画変更で今のラグビー場の土地は、公園から除外されて土地利用規制が緩和され容積率も上昇したから、土地価格も大きく上昇したはずだよ。そうでなくてももともと神宮球場の土地よりもラグビー場の地価は路線価で2倍半くらい高い、今回の都市計画変更でそれがもっと差がつくはずだよ。
熊:計画図を見ると、交換移転後のラグビー場用地の広さは、現在とあまり変わらないようですねど、いいのですか。
隠:計画図のように野球場とラグビー場の同じ面積で交換すると、地価が高いラグビー場が損することになる、だからラグビー場は土地価額で損しないように差額を金銭で受け取るね、つまり国有地の一部を明治神宮に売却することになるんだね。
熊:あ、そうか、もしも等価の土地面積で交換すると、ラグビー場用地が広くなりすぎて、野球場のほうは土地が狭くなって困りますね、なるほど。
隠:その差額で受け取る金、つまり土地の一部売却金をラグビ-場建設費にあてるのだろうね、だから国民としてはここで国有地を種にがっぽりと儲けてほしいというのだよ。
熊:こりゃいいね、つまり再開発利益を納税者の国民にしっかり還元してほしい、ハハ。
隠:でね、ここで市街地再開発事業がでてくるのだけど、事業の施行者は三井不動産という民間会社だよ、つまり国有地の売買の手続きをやるのは国じゃなくて、不動産屋なんだね。
熊:おお、JSCは手練れの不動産屋に手玉に取られる心配があるなあ、う~む、この前の国立競技場建設のときには少なくとも60億円を国民に損させた大ドジをやったけど、またドジやって大赤字を出すかな。
隠:まあ、市街地再開発事業は法定事業として、それなりに公正に事業が進む担保があるという面では、適切な事業手法選択と言えるかもしれないね。でもねえ、それは通常の売買じゃなくて権利変換という複雑な特殊な手法でやるのがこの事業の特徴だから、JSCはちゃんと理解できるのかなあ。考えようによっては、国有地売買手続きを市街地再開発事業というブラックボックスに入れて国民の目から見えなくしてしまう恐れもあるな。
熊:JSCは今回の仕事は、ラグビー場の建設事業だけじゃなくて、国有地の移転にともなう不動産事業もあるから、都市再開発法をしっかり勉強してほしいですね。
●神宮外苑再開発は猥雑な門前町づくり
隠:おい、熊さんや、ワインでいい気持ちになってきたぞ、もっと飲ませろ。
熊:なんだか目がすわってきたな、このあたりで本音を聞くかな、それにしても、ご隠居はこの神宮外苑地区の再開発の過程と結果の姿をどう見ますか。
隠:うん、もうどうでもいいよ。あんな明治王権国家丸出し戦争駆動装置の残影景観なんて、公園削除の毒を食らったからもう皿まで食らえばいいよ、並木も林も伐り倒して超高層ビルでも見世物小屋でも林立させて丸の内と日比谷に対抗するってどうだい、明治神宮は内苑だけに森があれば、外苑はもうどうでもいいよ。
熊:おや、酔っぱらいのたわごとかな、本気ですかい。
隠:そもそもだな、競技場やラグビー場も含めて、当初から神宮外苑ってのは神社の縁日の賑わいの場なんだな、昔はどこの神社でもお祭りの日は、境内に屋台や小屋掛けがたくさん登場して香具師が啖呵バイやってたり、怪しげな見世物があったり、駄菓子やおもちゃの店が並び、露店茶店が出て来たものだよ。参道の前の門前町には土産屋や宿屋があったりして、神社の外回りは本来は猥雑なもんだよ。
熊:そうそう、今でもその雰囲気は浅草にはありますけど、外苑ではないですよ。
隠:だからね、その屋台やサーカス小屋が一年中あるようになっちまったのが野球場や競技場やラグビー場だよ、現実としてはあの絵画館もそのひとつだね。
熊:サーカスや見世物じゃないでしょスポーツ施設ですよ、あ、そうか、今じゃあスポーツ競技場は見世物小屋ですか、そういえばそうだなあ。
隠:それが運動体育の施設であるのはどうしてかというと、近代日本が富国強兵国家として壮健なる青壮年を育てるのがここでの目的だったのだよ、元が練兵場という軍事施設だったしね、象徴的な事件は1943年の神宮競技場での学徒出陣壮行会だよ、外苑はそれを引きずってるいるんだな。
熊:大勢集まる参拝客ならぬ見物客には、昔の門前町のように土産物屋や宿屋もいる、だから再開発でホテルやら商業施設を建てる、つまり日本の歴史文化的には正しい方向なのですか、本当かなあ、でも公園がそれでいいのですか。
隠:公園と言ったってあそこは民間施設だよ、たまたま宗教法人だけど、野球場やテニス場の賃貸業やってるれっきとした民間業者だよ、布教活動じゃないから収益事業として税金も納めてる、後楽園と同じだよ。
熊:じゃあ、経営的にここらで再開発しなけりゃ困るって事情でもあるのかしら。
隠:そうだなあ、明治神宮にも伊藤忠にも三井不動産にもなにか事情があるんでしょ、ここで無理矢理公園再開発やらないとコロナで破産するとか、、ね。
熊:でもラグビー場は国の機関のJSC経営だから、民間事業者とは違うでしょ、普通に建て直せばいいでしょ。
隠:うん、そうなんだけどね、ここを取り込んで外苑と一緒に広く市街地再開発事業にすれば、不動産事業としてうまいことできるとの民間知恵者がいたんだろ、で、神社の縁日の日常化計画に持ち込んだね、あ、知ったかぶりで言ってるけど、もちろん実情ぜんぜん知らないよ、わたしは単に面白がって妄想してるだけだよ。そろそろ酔っぱらってきたな。
熊:でも、ご隠居、都市計画公園を減らす計画なんてことが、これを前例にこれから次々と起きてきますよ、いいんですか。
隠:もう眠いけど、今後の都市計画のためにいろいろ言いたいことあるし、都市公園についてもいろいろ思うことある、暇つぶしにしゃべるかね、もっとワインを飲ませろよ。
熊:意外に酒癖悪いね、じゃあ焼酎をどうぞ、では聞きましょうかね。
隠:では、さてさて、公園にもゼントリフィケイションの時代が来た、、フワア、スヤスヤ、ZZZ、、。
(2022/02/14記)
●もっと神宮外苑都市計画駄文を読みたいお方は下記参照
1 件のコメント:
熊さん/ご隠居のやりとりは読むのに煩わしく、せっかくの内容が入ってこない。。
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