2011/09/14

496核毒汚染地域になぜ戻るのか

 どうにも、わからないことがある。
 福島第1原発から発射した核毒は、田畑に山林に学校に住宅にと、ふりそそいでいるのだが、これを除染(これは除洗かしら)といって汚染した毒を除くのだそうである。
 除染が必要なことはわかる。そこからさきがわからない。だって、その場所で除いた核毒は、いったいどこに行くのだろう。

 たとえば水で洗うとして、その水の流れた先に毒が移転するだけだろう。その移転先をまた除染して、そこから移転先をまた…、ようするにイタチゴッコである。
 川から太平洋へ行くのかしら。川の汚染、海の汚染が大変なことになる。海の除染なんでできるのかいら。
 
 今朝の朝日新聞に、こうある。
「福島第一原発から半径20~30キロ圏の「緊急時避難準備区域」を抱える福島県の5市町村が、区域の解除に向けた復旧計画をおおむね完成させ、近く国に提出する。各市町村は住民が帰還を完了する時期について、来年3月末を軸に調整している。とはいえ住民が戻るには放射性物質の除染が不可欠。自治体側は「すぐには見通しがたたない」と不安も抱えている」

 おなじく、こういう記事もある。
「筑波大の恩田裕一教授や気象研究所などのチームは6~8月、計画的避難区域に指定されている川俣町山木屋地区の3地点の森林で土壌の汚染度や大気中の放射線量を調べた。
 この結果、土壌のセシウム134と137の汚染度の合計は、広葉樹林が1平方メートルあたり71万ベクレル、杉の若齢林が47万ベクレル、壮齢林は91万ベクレルと、チェルノブイリ原発事故での「強制移住」レベル(55万5千ベクレル)の汚染だった」

 このような濃度の核毒が森林にあるなら、もちろん田畑にも、住宅地にもある。
 チェルノブイリでは強制移住したレベルの地域を、フクシマでは除染して復旧するのだろうか。
 もうちょっレベルが低い(らしい)「緊急時避難準備区域」では、除染して復旧するらしいが、これって本気だろうか。

 まず第1の問題は、どうやってその広大な地域をくまなく、除染作業を行うことができるのか。森林は丸坊主となると水害が起きるだろうし、田畑は表土が命なのに洗ったり他に持っていってしまったら作物ができなくなるし、住宅地や市街地は私有地にどうやって対応するのか。

 第2は、そうやってとりのぞいて溜まった膨大な量の核毒の蓄積するものを、どこにもっていくのか。そんなものを持っていけるところは、いまのところたった一箇所、福島第1原発敷地のみである。そんなにひろいのかしら。

 第3に、そんな大量の猛毒ばかりの中で、だれが除染作業に働くのだろうか。それをやるべき人は、発毒責任のある東電の社員たち(株主たちも)だろう。

 第4に、その期間である。そんな広大な地域をすべて洗うとかチリなど取り除くとか、いったい何年かかるのだろうか。その間に避難している人たちは、もうひとつの生活を築くしかないから、除染後にもどる人がどれくらいいるだろうか。

 第5に、その膨大な費用である。これは当然のことながら、東電と株主とですべて負担するべきである。

 どうもわからない。
 しろうとかんがえでは、現実にはとてもできることではないような気がする。
 故郷を捨てがたい人々によりそうべき政治や行政の立場からは、除染して復旧するといわなければならないことは、よくわかかる。
 しかし、それは、問題を先のばしにするだけであると、わたしは思う。
 どこかで除染をあきらめて完全撤退、どこかは除染するが再居住も撤退もあるという、線引きをせざるをえないだろう。

 そして積極的撤退の政策を手あつくすすめるべきであると、わたしはおもう。
 それは人口減少時代の日本の居住政策のありかたと、共通の大問題の課題である。

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