2023/11/04

1729【お願いだから元号やめて】役所が元号を強制して西暦を嫌うのは高齢者虐待か福祉か

 じつは老人問題についてもっと高尚なことを書くつもりで、厚生省とか総務省の高齢者人口を調べていたら、つい、腹が立ってしまってこんなイチャモン文章になった。

 ネットに出てくる人口統計のグラフはものすごくたくさんあるのだが、まずこんなものをダウンロードした。


 これがいつのグラフなのかしらと眺めていて、ふと気が付いたのは、「平成62年」と書いてあるのだ。わたしは昔から元号を使わない主義なので、平成ってけっこう長かったのだと思った。でもその数字の傍に西暦2040年と併記してある。未来の数字である。

 はて、じゃあ、これは平成62年も未来のことか、え、平成天皇はそこまで生きるのか、そんな年があるはずないだろ、そして元号はとっくに令和とかって変わってるのに、これはどうしたのだろう。
 政府の文書にありえない年代が堂々と載っている。虚偽そのものである。そこまでして元号を使いたいのか。
 グラフによる人口増減について調べることを忘れて、怒りが頭に登った。なんだ、このいい加減な年代は!、ありえない年号を記してはずかしいと思へ。

 ほかのダウンロードしたグラフも元号と西暦と両方書いてあるから、煩瑣で見づらくて仕方ない。そこで元号年を消してみたら、実にすっきりして見やすくなった。

 庶民のわたしでも日常に扱う羽目になっている、いくつかの政府機関や自治体機関等の統計ばかりか、書類に元号が書いてある。それがいつのことか分からずに迷うが、こちらが書き込む欄には、必ず西暦にすることにしている。

 以前には明・大・昭のどれかを選べと指示するる書類ばかりで、西暦を選ぶ欄がなかった。だからわたしは元号を無視して西暦を書いているのだが、それで突き返された経験はない(もしかして先方が抗議敬遠して勝手に書き換えているかも)。近ごろは元号でも西暦でも選べるようになってきて、なかには西暦だけになっている書類もある。じょじょに西暦化するらしい。やればできるのだ、はやくやれ。

 統計のような長い時間とか国際的な比較をするには、同じ時間の物差しを使うのが常識である。 
 日本人が世界史的歴史観に欠けるのは、元号で歴史を考えるからだろう。官公庁が率先して西暦にするべきだ。このグローバル時代に狭い島国根性のままでよいはずがない。義務教育で教科書はどうなっているのだろうか。まさか元号一点張りではあるまいな。

 わたしが昔から西暦を使うのは、その方が内外の歴史的事件を、あれは何年前だったかと計算するのが便利なためであった。
 昭和のころは和暦西暦換算式を覚えていたが、これに平成と令和の換算式が加わると、もうその式を覚えられない。もちろんそれにはわが頭の老いも加わっている。元号使用は高齢者虐待になっているのだが、役人どもは高齢にならないと分らないのであろう。

 このブログの2019年4月の記事に書いた和暦西暦換算呪文を再掲する。わたしは歳とって、もはやこの呪文を覚えることさえできず、おぼえていても暗算ができなくなった。

 和暦西暦換算呪文(元号年に括弧内の数字を加えると西暦年変換)
  ・明治いやむなしい(1867)
  ・大正ひどくひどい(1911)
  ・昭和ひどくにごる(1925)
  ・平成ひどくはんぱ(1988)
  ・令和じわっといや(2018)

 考えようによっては、この換算式を毎日頭の中で働かせて暗算していると、ボケの遅延策になるかもしれない。そうか、元号使用の強制政策は、政府による高齢者者健康福祉政策であるのかもしれないな、、。
 というわけで、これは2023年11月4日の記録である。

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伊達美徳=まちもり散人
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2023/11/03

1728【今年の新語流行語候補】TVを全く見ない老人でもこれくらいは珍語流語を知っている

  毎年のこの時期になるとその年の「新語流行語大賞候補語」なるものがマスコミに登場する。それらについて自分がどれほど知っているか、いわば社会認知度を測るのにちょうどよいとて、毎年その中の幾つを知っているか記している。

 世の中の流行語とか新語とかは、TV放送を通じて社会に出てくる度合いが、かなり高いらしい。ところが、わたしはTV放送をほとんど見ない習慣である。理由は簡単、時間も内容もあちら様の都合に合わせるしかないし、くだらなすぎる広告ばかり強要して見せるからだ。人生が残り少ない年寄りには、あまりに時間の浪費でありすぎる。
 だから紙の新聞とネットの中からだけで知っている新語流行語である。当然に全候補語の半分も認知できれば、よくできた方である。

 さて今年も、新語流行語大賞候補30語なるものが登場したことを新聞で知った。最終的には10語に絞られて12月だかに発表される。毎年そのどれほどを知っているか測定している。その件は、今年もベストテン発表後にやってみようと思う。

 それで今日はその候補30語でわが新語流行語への認知度を測ってみることにする。
 ことのついでに、2022年から2018年までの、それぞれの年の候補30語へのわが認知度を見ることにした。ネット検索してそれぞれの年の30語を拾って、知らない語に赤✖印をつけた。記憶で書くので多少は誤りもあるだろうが大きくは違わないはずだ。

わたしの毎年の新語流行語認知度合いの成績
  2023年:15(50%)、2022年:11(37%)、2021年:11(37%)
  2020年:21(67%)、2019年:12(40%)、2018年:15(50%)

 年によって意外に認知度にばらつきがあるのは、どういうわけか。こうやって並べてみると、もちろん知っている言葉の範囲であるが、その年に何があったか思い出す。

 最も高い認知度は2020年である。それはこの年には急激に新型コロナ関係の新語が登場したことである。その関係の言葉は、TVだけではなくて新聞にもネットにも頻繁に登場したから、わたしも知っている新語が多く、認知度がこの歳は67%と高率になった。

 逆に低成績の2019年、2021年、2022年には、何か共通なことがあるのだろうかと睨んでも、知らない言葉の性質を分析するのは無理である。それらの年はたぶん、わたしが全く興味ないTV娯楽関係とスポーツ関係の言葉が多いのだろうと推測する。
 とすればわたしの新語流行語認知度が高い年は、娯楽関係よりも政治や社会の事件が話題として優先して多かったことになり、あまり平和ではなかったのであろう。

 と、いかにももっともらしく書いたが、もともとこの新語流行語を、誰がどうやって選ぶものか知らない。まあ言葉によるシャレ遊びの世界だろうから、年寄りのヒマツブシのお供にしたのである。

(20231103記)

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2023/11/02

1727 【老いの日々】老人がぶつぶつ解からぬ独り言をしゃべるのはボケの故ではないのだ

 太平洋を隔てた地に住む大学同期仲間の畏友が、こんなことをEmailしてきた。

ーーーーー

老人のボケ現象は、大きな化け物の如く、掴みようがない。
でも、人はそれぞれこの化け物に対処しているらしい。
私は、自分と話をする。

  独り居で声出し自分と会話するバイリンガルだと話がはずむ
            アメリカ 大竹 博(朝日歌壇・高野公彦選2021) 

キャリフォルニアでどこかへ出かけると、数時間運転しっぱなしでいることがおおい。
ただ運転しているとボケの化け物が意識に入り込んできて、邪魔をし悪さをはたらく。
そこで架空の助手を側に置き、一人で二人会話をはじめる。この状態を外から観察すると、
"気が狂った"様に見えるかもしれないが、とにかく面白いし、ボケ除けにもなっている。

言葉の選択も考えて、時には米語だけではなくて、日・独・仏の知っている単語を加えてバイ・リンガルやトライ・リンガルにする。
妻が外出して、独り居のときも同じようなことをする。

ーーーーーー

 これを書いてきたのは、文中にある短歌詠みその人である。大学時代の寮生活と登山の仲間で、今はUSA市民権を得てCALIRORNIAに暮らしている。
 この20年くらいは毎年のように訪日してきて、昔の山岳部仲間と飲み会をしていたが、この数年はコロナでそれが叶わなくなっている。だが、ネット時代だからEmaleとZOOMでのやり取りは頻繁で、年寄りにはまことに都合が良い道具だ。
 上記のようなことを先日書いてきたのは、わたしが同期仲間たち宛の下記のようなEmailへの返信の一部である。了解を得て引用した。

ーーーーーーー

 わがボケ遅延策にご助力を!    20231031 伊達美徳より

暑い暑いと言っていた夏がようやく終わったと思っていたら、もう11月ですよ、冬ですな、歳をとると月日が速く過ぎる。
そしてわが身の老い具合にも加速度がつく気配です。それに無駄な抵抗をしようと決心したのは、先ごろある契機で妻を介護する身になろうとしている現実を知り、これはもうちょっと生きねばならぬと悟ったからです。「願わくは花のもとにて春死なむ・・・」なんてうそぶいていられない。

そこで脚腰を保つために毎日の買い物を遠回り歩きすること、頭の中を保つために毎日わがブログに駄文泣き言を書くこと、とりあえずこの二つを実行してみることにしました。今日で2週間連続記録中です。
そしてお願いは、その毎日のブログ駄文を読んでいただきたい、できれば時にはコメントをいただきたいということです。それを毎日書くための張り合いにしたいのです。
恐縮ながら、わがボケ遅延策にご助力を、、、。

 ●ブログ「伊達の眼鏡」URL https://datey.blogspot.com/

年取りはコロナのせいで遠くに見聞に出る機会が激減してしまい、ブログに書く記事も昔のことを引き合いに出して、今の世にイチャモンをつけるしかない、なんとも情けないと思いつつ日々を送っております。
ではお元気でお過ごしください。

ーーーーーーーー

 ということで、老人が何か解からぬ独り言をしゃべっているのに出くわしても、あいつもついにボケた、なんて断定してはいけないのだ。
 今日のブログ記事は、太平洋を隔てる八十路半ばの老人二人の、コロナとネット時代における老境の記録である。

(20231102記)

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2023/11/01

1726 【人と熊】減少中の人間と増加中の野生熊とが生存領分争い開始か

 近ごろ街の中とかその周辺で、野生の熊の出没ニュースが多いようだ。要するに人間と熊が出会う機会が多いということだ。

 今の時期の熊は、冬眠に備えて食いだめするために、あちこちで食料をあさっている時期らしい。もともと山中に棲むクマだが、山中だけでは冬眠に必要量を食うことをできないらしくて、人間世界にまで餌あさりに出てきてしまうらしい。今年は異常気象のせいで、山中に木の実などのエサが少ないのであろうか。

 しかし、熊にしてみれば、いつものように秋の食いだめをやっていて、ついつい人間世界に踏み込んでしまうのだろう。そうして人間側の都合で害獣駆除とて、鉄砲で撃たれ、、罠にかかり、殺されるのだ。
 熊は殺されると知っていて人間世界にやって来るのか、知らないで来るのか分からぬが、今年もたくさん駆除されるのだろう。

 新聞の社説に、「クマ被害最多」とタイトルがあり、おや、熊が人間から被害かと読んでしまった。もちろんそうではなくて、人間が熊から被害とのこと、このタイトルは主語を間違っているよ。


 でもその熊の側の気分で本文を読んでいくと、この社説をもしも熊が書いたら、人間と熊を入れ替えると、ほぼこのままで熊の嘆きになると気が付いた。
 そうだよなあ、筆者が熊ならば、「人間による熊の被害が続いている」と書きだすはずだ。耕作放棄地の藪や空き地の草だらけ敷地とか、もう人間には用がないからいいだろうと入り、熊の領分が増えたと思っただろう。それで殺されてはたまらないだろう。

 人間側の事情はわからないが、無用になったらこちらにくれてもいいだろ、もともとは俺たちの先祖が棲んでいたところだぞ、お前らが勝手にやって来て、田畑にしたり、村や街にしたのだから、不要になったらもう返してくれ、と熊はいうだろう。
 あ、これってなんだか今、戦争が起きているパレスチナみったいだな、昔々に日本人が中国東北部に満州開拓なんて地元農民を押しのけて入り込んだのも似ているような。

 昔々、わたしは野生の熊に山中で出会った経験がある。大学山岳部の夏山合宿で、日本アルプスの剱岳直下の劔沢の河原でキャンプをしていた。昼間だったが沢の水流を隔てた向こう岸を、親子らしい黒い熊が右方の上流側から歩いてきた。こちらは初めて巨獣を見て、ただ茫然としていただけ。20mほどの距離だったが、あちらはこちらに関心を持たない様子で下流方向へ歩き去った。

(20231101記)

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2023/10/31

1725 【10月尽】あの超ダサかった渋谷が無国籍イベントのハロウィン騒ぎの場になる時代とは

 よそから人々に遊びに来てほしいとあれこれやっても、うまく行かない日本の各地がある一方で、こうやってよそから人々になにがなんでも来てほしくないと、条例を布き警察までも出てきて規制する街がある。

 どうして渋谷がハロウィンで騒ぐことになるのかわけが分からない。ただの駅前交差点とゴチャゴチャした商業の街だよ。まあ、あのゴチャゴチャが良いのだろう。

 ハロウィーンなんて今やまるっきり無国籍イベントなんだから、どこでやってよさそうなものだ。どこか寂しくて困っている村や町で、「バーローウィン」イベントなんてやってはいかがかな。
 それにしてもよく分からないのは、こうやってマスコミが来るな来るなと書き立てると、ますます人が集まるだろうになあ、来年からはマスコミ報道規制をするかもね。

 あ、そういえば最近のわたしの渋谷訪問は、2019年の暮のことだったから、もう5年も無沙汰であるのだ。そうか、この後に行っていないのはコロナパンデミックの故であるし、それに加えてわたしが年取ってヨレヨレになってきたこともある。コロナと年齢が協力して、わたしの渋谷だけではない外出活動の足を引っ張ったのである。

 その前はよく行ったものだった。コロナでもうパタリだ。今はどんな風景に変わったか、行ってみたいけど、いまやどうでもいいやとも思う。ある程度は知識として知っているのだが、どうせ超高層ビルだらけの、ありふれた都会になったのだろうなあ。見なくても分かっているような気がしている。
 
 わたしが初めて渋谷駅前に降り立ったのは、1957年のことだからもう66年も昔であったか。あのごちゃごちゃゴミゴミの街に、東急文化会館だけがいかにも都会的に建っていた。ほかに大きな建物は、東横デパートだけだった。

2008年 東急文化会館が断末魔のころの姿

 今、ハロウィンで話題の駅前交差点を渡った先の方は、ごちゃごちゃしてポッと出の田舎者が行ってはいけない感じの街だった。とくに今のハンズのあるあたりは、いわゆる連れ込み宿の街だった。そして新宿や池袋はもっともっと怪しげな街だった。
 その頃の渋谷は思い出すと、何となくダサいという言葉がぴったりだった。いつのころからか若者の街になったが。それは西武デパートが来てからだったろうか。
2011年 渋谷スクランブル交差点の面白くもない風景

2012年 東横線渋谷駅が健在だったころの姿

 そんな渋谷の変転を永らく興味を持って見てきたものだ。昔はブログなんてなかったから書いてないが、2012年からいくつか書いている。それでも読めば懐かしい。

●2018/10/09【渋谷アスレチックステーション】久しぶりに渋谷駅から外にでてみれば高齢者の足腰を鍛えるサービス充実を再確認https://datey.blogspot.com/2018/10/1165.html

●2016/11/18【東京・渋谷駅定点観測】日夜変わる渋谷駅で老人ウロウロ、立体迷路はら三途の川と黄泉の国へつながるかも  https://datey.blogspot.com/2016/11/1133.html

●2015/03/12 ただいま渋谷駅は巨大な立体迷路遊園地かつ健康ウォーキングランドでバリアフリーくそくらえ http://datey.blogspot.com/2015/03/1066.html

●2013/03/28玉久三角ビルから東横デパートへと渋谷の変わりゆく姿を追うhttps://datey.blogspot.com/2013/03/746.html

●2012/05/08渋谷駅20世紀開発は21世紀再開発時代 http://sites.google.com/site/dandysworldg/sibuya20120508

(20231031記)

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2023/10/30

1724 【新聞広告ご馳走】どれ食っても同じ味にちがいないと見えるご馳走極彩色写真に辟易

 新聞が来ても全く見ないページがかなりある。とにかく全面広告ページは全く見ない。スポーツページも99%見ない。ごくたまにスポーツ界キャンダルが載ると読むだけだ。

 ところで、こんな料理の極彩色の全面広告ページに、つい目が行った。派手な総天然色写真の「おせち料理」が、もう予約の季節なのか全面広告に登場している。しかし、全体を見てもどれかを見ても食欲がわかない。同じ味に見えてくる。

 むかし、この外注型お節料理を何度か購入したことがある。夫婦二人には食べきれないし、そもそも味がどれも同じようなもので飽きてしまう。正月3日目には食卓に残飯の散らかる様相を呈してきて、見るのも嫌になる。


 また別のページの全面カラー広告には、毎食事用のおかずであり、家庭にどさっと冷凍で送り付けてくるのを、毎食時にレンジで温めるらしい。
 フム、歳とって老人一人か二人で食べるのに便利であるような気がする。和洋中なんでも日替わりで食べられて、便利そうだ。

 だが便利には見えても、美味にはちっとも見えない。見たところ食材は異なるようだが、どれもこれも同じような色で、皿に同じようにレイアウトされているから、どれを食べても同じ味に違いないと思えてくる。まあ、実物は魅力的な味と姿だが、この広告写真の出来が悪いのであろう、たぶん。

 それで思い出した。昔々のこと、東京駅前の大きなオフィスビル内に仕事場があった頃、昼前になると弁当屋がオフィス内にまで売りに来たものだ。外の店に行くと混雑するのでよく利用した。毎日異なるメニューであった。

 初めのうちは毎日違う料理の弁当を食って楽しんでいたが、毎日その同じ弁当屋から違うものを買っていても、いつも何を食っても同じ味になってきて、嫌になってしまった。弁当が変わったのではなくて、こちらの口が変わったのだ。
 多分、大きな厨房で大量の弁当を作るのだろうが、同じ厨房でいつも同じ作業員や同じ機械が量産体制で作れば、材料に関係なく同じ味になるものだろう、と思った。

 この広告写真の同じ様に並ぶおかずを見ていて、そのことを思い出した。わたしは食い物には恬淡としているのだが、これは願い下げである。朝昼晩と異なるおかずで毎日の飯を食うのはいいことだと思うが、毎度またこの味かあ、なんて思いたくない。

 まだ飽食の時代が続いているようだ。だが、国際情勢が不安定なコロナ後世界が来ると、食糧難の時代が来るだろう。その頃はどのような生活をしているのだろうか。1940年から10年間ほどのあの酷い生活がまた来そうだ。その頃はわたしはこの世に居ないから、知ったことではない。

(20231030記)

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2023/10/29

1723【コロナ後戦乱世界到来】ああ、これが期待していたコロナパンデミック後に拓く新世界だったか、ガックリ

 イスラエルとパレスチナの戦争が、またまたまたまた始まっている。1948年のそもそもからず~っと中東戦争である。いい加減にしろ、バカめ。

●休戦決議案って去年冬にもやったよなあ

 そして先日、国連安全保障理事会でで人道的休戦決議案が、否決されたそうだ。世界各国のそれに対する態度は、みたところ半分半分であるから、今、地球は真っ二つに割れつつあるということか。

 このニューズを読んでいて、あれ、これって去年にもやったぞとデジャビュになった。でもこの戦争は今年からだよ、あ、そうか、忘れそうになっていたが、ウクライナでも戦争をやっているんだ、その戦いをやめろと、人道的な決議案を去年の3月に出して、やっぱり世界が半分に割れていると思ったことがったのだ。

2022年3月24日の国連決議案賛否の国別色分け

 そうだよ、去年2月末にプーチンがウクライナに攻め込んだという大事件のことを、世界はすっかり忘れたのか、同じ人道的という言葉をつかった決議案であった。そして未だにその戦争は止まらないのが、何とも人類はバカになったものだとつくづく思う、情けない。

●火事場見舞いに1兆円

 そしてその真半分になった分断世界の片方に、わたしの住む島も属してしまっている。この島の政府は、中立ではなくて一方の味方に入れ込んでおり、この1年7カ月ほどでウクライナ支援金を、なんと65億ユーロもつぎ込み、味方の各国では5番目に多いとのこと。

 65億ユーロって1兆円を超えるんだぞ、驚いたなあ、他の支援各国を見るといずれも西ヨーロッパと北アメリカの国々であり、東洋ではわたしの住む国だけとはねえ。何の縁もない遠方の人の火事見舞いに1兆円とは、この国はそんなにもお大尽であったのか、それにしては、、、。

●国名表記の不思議

 ところで国連の今回の人道休戦決議案への賛否一覧の各国名を見ていたら、なんだか変である。実でにどうでもよいことだけど書いておく。

・国の名前については、平等に表現するべきであると思うが、一部の国だけが「国」がついているのは何故か。
・そもそも外国語だから、「日本」のほかはカタカナ表記にするべきと思うが、漢字が混じるのはなぜか。
・とにかく中国、北朝鮮、米国、豪州、韓国、英国を何とかしてもらいたい。他のほとんどがカタカナ表記だから、これらもそのようにして、平等な表現としてもらいたい。

・コンゴ民主主義共和国だけが、なぜ民主義共和国なんてついているのか、ほかの国だってありそうだぞ。例えば朝鮮人民民主主義共和国とかね。
・そもそも北朝鮮と言う国名ではないだろうに、ここだけがどうして地域名を国名のように書いているのは何故か?

 ついでに、日本と書いているが、これってその国の人だけがそう言っているだけで、その他の国の人たちはがそう呼ぶことはほぼ皆無であり、全く別の名称で呼ぶことを誰もが知っている。この巨大な国際的ギャップを埋める気は、だれもないのかしら?

●これがコロナパンデミック後の新世界なのか

 それにしても、コロナパンデミックは落ち着いたらしいが、その最中にはこのブログにも何度も書いたが、パンデミック後の大変化が来た世界を見てから死にたいものだと思っていた。今ようやくそれが来つつあるのか、期待してワクワクしているのだが、、、

 それでいま気がついたのは、実はもうコロナパンデミックがもたらした大変化の世界に突入しているのかもしれない、ということだ。そう、このウクライナ戦争と中東戦争が典型的なコロナ後の世界であり、これから同じ様な戦争が次々と起こるのだろう。

 地球上の人間が真半分に分かれて戦う日が来つつある気配が濃厚だ、そうか、この戦争の地球こそがコロナパンデミック後の新世界であったか、ああまったくもう、期待外れもはなはだしい、ああ、コロナに罹って死ねばよかった、つくづくそう思う。

(20231029記)

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2023/10/28

1722 【横浜ドヤ街は変わるか】産業労働者の街から貧困高齢福祉の街へ、その次は都心共同住宅街か

 横浜都心名所の寿町地区はドヤ街といわれてきたが、なんだかジンワリと共同住宅ビル(日本型マンション)の街に変化していくようである。
 かつては産業労働者の街だったのが、この30年くらいで貧困高齢者福祉の街にすっかり変わったのだ。その人たちは簡易宿所なる安宿に住宅同様に寝泊まりするのだ。

 そしてこのところ、その高齢福祉の街に都市型共同住宅ビル(名ばかりマンションのこと)が入り混じろうとする動きが見えている。もしかしてこの横浜都心の一等地ともいうべき寿地区が、都市型住宅地に変わるのだろうか。日本型ゼントリフィケーションとでもいうことが起きるのだろうか。

 寿町地区を徘徊して、コロナ明けの建設風景を拾ってきたので、ここに記録しておく。
 寿町地区俯瞰写真に、最近の建設の動きを記してみた。


 この俯瞰写真の左方(正確には南西方向)の①には今年の初めに共同住宅(いわゆるマンション)が建った(下図)。寿町地区に周辺から攻めてくる共同住宅群の一つである。

寿町入り口から振り返り見る⓵の共同住宅ビル

 ⓵の隣の街区には、②の賃貸住宅の建設がたけなわである。これは簡易宿所(いわゆるドヤ)ではないらしい。この敷地の南西側には首都高の高架があり、24時間騒音と排ガスを出しているから、たぶん、分譲型共同住宅では売れないという判断だろう。なお、ここには下駄ばき住宅型の戦後復興期の防火建築帯が建っていた。

寿町フリンジの長者町1丁目の賃貸共同住宅ビル

 この賃貸共同住宅ビルの向いには、片方を高層ドヤビルに、もう一方を共同住宅ビルに挟まれて、高層共同住宅ビルが建設中である。ここも首都高高架に近いし、幹線道路沿いだからかなり騒音が激しいはずだ。
長者町1丁目に建設中の住宅ビル

 寿地区に入り込み、⓸に空き地が長らく放置されていたが、ようやく工事を始める気配である。ここは簡易宿所の建て直しであるが、斜め前に昨年できた高層ドヤビルと同じ経営者であるらしい名称が書いてある。高齢者対応を積極的に行っているらしい。

寿町4丁目の⓸簡易宿所建設現場

 寿町の真ん中あたりには寿公園があり、炊き出しなどを行っている小公園である。その斜め前にあった3棟の中層ドヤビルを取り壊して、新たに大きな敷地として新ビルの建設が始まった。ドヤ街の真ん中だからドヤの建て直しだろうと見れば、なんと共同住宅と表示が出ている。
 おお、ここの様にまわりがドヤと福祉施設ばかりの場所、寿地区でも最も寿らしい立地にも、共同住宅ビルが登場してきたのか。はて、どのような住民が住むだろうか、興味が湧いてくる。
寿地区の中心の松陰町3丁目に登場する⓹共同住宅ビル

 この共同住宅ビル工事現場の近くには、今年の夏に建て直してオープンした高層簡易宿所ビルがある。元は5階建てのドヤビルを建て直して、名前も松影会館なる寿地区らしい風格から、漢字もカタカナも全くないBayside Yokohamaとなったのに驚く。
松陰町3丁目のドヤビル建て替えの⑥BaysideYokohana

 この新ドヤビルの並びには、昨年に売り出した分譲型共同住宅ビルが建っている。このビルは多分寿地区では最大規模であろう。ここには以前には、下が企業オフィスで上階にはUR賃貸住宅があった。いわゆる下駄ばき住宅である。ドヤビルではなくて、ここがドヤ街となる以前からの企業立地であったのだろう。
 周りはドヤに取り囲まれていたから、建て直しが始まった時にはどのようなものが建つのか興味があった。結局は一般的な分譲型共同住宅ビルになった。面白いことにここも全く漢字もカタカナもない、ローマ字だけのネーミングである。前述⑥の高層ドヤビルももしかしたらこれを真似たのかもしれない。
 この大規模な強度住宅の出現が、その後にこの街の共同住宅化をもたらすかもしれないと思っていて、例えば⑤の出現はその故かも知れないと思うのだが、自信はない。
 なお、この共同住宅ビルについてはここに詳しく書いた
寿町地区内で最大の⑦新築共同住宅ビル

 寿町地区の右(正確には北東)のフリンジ松陰町1丁目にも、大型の高層共同住宅ビルの建設中である。
松陰町1丁目にも新築の⑧分譲型共同住宅ビル

 寿町地区の南東のフリンジ地区は、首都高の高架道路があるために、最も環境が良くないので、ほぼ共同住宅はないのだが、それでも一昨年に竣工した共同住宅ビルが2棟並んでいる。全く同一の姿だから、同一デベロッパーによるものらしいが、名称は異なる。ただ面白いことに、これら2棟とも全く漢字カタカナを使わず、ローマ字だけのネーミングである。
南東部フリンジの高速道路高架沿いの⑨共同住宅ビル

 寿町地区は横浜都心の一角の約6ヘクタールの広さである、いわゆる「ドヤ街」である。この街には、旅館業の中高層ビルが片寄せてびっしりと立ち並ぶ。素の宿泊室は約8000室、日常的にその宿泊室に宿泊して暮らす人たちが約6000人とされる。その宿泊室は5~10㎡でバスユニッはなくて、共同便所、コインシャワーである。

 主たる宿泊者は、高齢の単身男たちであり、多くは低所得で生活保護対象である。つまりそのような人たちが高密度(ヘクタールたり焼く1000人!)に暮らしている、住宅街である。そのような街になったのは、それなりに横浜らしい歴史がある。

 この街ももちろん歴史的には都心部の街として産業的な用途との対応で、普通の住民たちが住む中高層共同住宅も少数ながら存在してきたが、一方で厳然として低所得者のためのドヤ街としての歩みが続く。

 コロナ明けの横浜都心には、あちこちに共同住宅(日本語でしか通じないマンション)が建ちだしてきた。ある種の聖域的なイメージがある寿町地区にも、ビル建設の動きがあり、その中にはドヤ建設もあるのだが、ドヤビルを共同住宅に建て替える動きも起きつつある。

 近ごろのドヤ建設は、30年以上前に木造からビルに建て替えたころのドヤビルが、今や老朽化してきたことと、宿泊入居者の高齢化に対応する機能更新が必要になってきたことにあるらしい。
 その中には積極的に超高齢宿泊者対応に特に力点を置く例もあるようだ。かつては設けないことが普通だったエレベーターは当然のことに必須だし、中には介護はもちろんのこと、看取りさえも可能な宿泊室を設ける者もあるとのこと。詳しくは知らないが、一種の介護老人ホーム的になっているだろうか。

 これほどの高齢者が集住するとなると、街なかにはいろいろな福祉関係の自動車が行き交うし、メインストリートのドヤビルの軒並みに一階には、福祉介護関係施設が並ぶ風景が見られる様になったのは、この10年くらいのことである。この20年ほどで、労働者の街から、高齢者福祉の街へと変転した。


 その高齢者福祉の街が、じわじわと共同住宅の街へと変転していく気配があるのだ。寿地区の周辺あたりから強度住宅ビルが押し寄せるのはこれまでもあるし、今も見られるが、さらに最近になってドヤ街の真ん中あたりで共同住宅ビルの出現がみられるのだ。

 それらはたがいに排除するのか、どちらから優先するものか、うまく共存するものか、実はよく見えないのだが、興味のあることだ。
 次に起こりうる大型共同住宅の建設は、やはり高速道路沿い以外の3方のフリンジの地区からだろう。今のところ注目しているのは、南西部入り口あたり(長者町1丁目)にある向かい合った2軒のパチンコ屋閉店後の土地利用転換である。共同住宅建設が近いような気がする。

この左右の元パチンコ店がどのように建て替わるのだろうか

(20231028記)

●このブログの最近の寿町地区活計記事
・1690【横浜寿町の変化・1】横浜都心部の関外にある貧困ビジネス街はどう変わりつつあるか2023/06/10
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2023/10/27

1721【おとなの性教育】人間の性が男女二つしかない時代が終る先の世界を見たい

 このところ新聞にちょいちょい登場する「外観要件」なる法律用語であるらしい言葉、それって要するにアレの恰好のことであるらしい。アレを想起させる見出しが新聞の第1面に登場するとはねえ、どうも居心地が悪い。尻のあたりがモゾモゾする。



 もしもそれが顔に関する「外観要件」ならば、美しいとか可愛いとか醜いとかって条件を備えていると、何らかの要請によリ「外観要件」になるんであろう。
 それがアレ、いやアレのことを法律用語で堂々と書いてあるから遠慮することはない、「性別の性器に似た外観」のことである。この「似た」と言うところを読むと、なんだかニタッとしてしまうのが恥ずかしい、いや、新聞第1面で恥ずかしがってどうする、続いて精巣・卵巣・陰茎などが登場するのだ。

 さて、それらの用語を語る大新聞記事、そのニュースソースの判決を語る裁判官、あるいは検察官など、これらの外形要件を大真面目に語り書くときに、そのブツの外形を頭の中に描くのだろうと思うと、ニヤニヤしたくなるのは、不謹慎だろうか。

 そこでこれはいかん、この記事は大人の性教育なんだなと、まじめに読みだすのだった。読んでいくと第2面ともなるともっと直截になり、陰核(クリトリス)、陰茎(ペニス)、精巣(睾丸)なんて医学用語?さえ出てくる。さてこの新聞を声を出して読むことになったら、ちょっと躊躇するだろうなあ。

 いやいや、いまや三面記事どころか第二面の記事に登場する言葉に、これらが堂々と登場する時になった、と言いうことは、いわゆる三面記事ともなると、チンポコ、ヘノコ、オマンコなんて堂々と登場、更には画像も登場するに違いないと、急いでそちらを見たのだが、どこにもないのであった。なんでだろう?、記事の出来が悪い。
 ついでに書くが、ヘノコなる言葉は今やだれでもどこでもいつでも堂々と発言するようになってしまって、男のアレの隠語であることを忘れられてしまったらしい。哀しむべし。

 この種のことにわたしはあまり興味を持たないでいたが、このところ急にこの類の大人の性教育事件がちょくちょく登場するようになった。優勢思想による強制断種手術事件もそのひとつである。またつい先ごろには、なんとかと言う芸人プロデゥサーの男が少年芸人たちをつぎつぎと性的暴行したと元美少年たちが訴える事件があった。

 私はTVを観ないから、これについても特に興味なかった。だがこの話題の新聞やネットの大騒ぎで、この男はどんなことをしたのか推理をしたら、要するに男色の相手を強制したらしいと分かった。おお、西欧のキリスト教的規範輸入の前までは、歴史的にも普通にあったのだな、でもそれが何をするのか詳細なことはどこにも登場しない。まさかTVには登場?

 これでは性教育にはならない感もあるのだが、その点で言えば今回の外観要件事件、いや、「性同一性障害特例事件」(性が2回も登場するのがオカシイ)の方が露骨に表現されていて、ワイセツ感ある用語が登場するのが、なんだかオカシイ。

 それにしても男と女というものは、生物的な自然科学の厳然たる分類と思って生きてきたのだが、それが人間の心や医学という文化的側面から次第に突き崩されていく現代に直面して、さてこれは面白いことになって来たぞ。

 こうなれば今に男女の分別が全くなくなる、あるいは両者は左右両極にあってその間は虹のごとくに各種の性がある、あるいはグラデーションを持って変化してゆく、そんな性同一性障害なる言葉が溶け去る時代が来るにちがいない。
 そうなればそうなれば文化的態様も大きく変わるに違いない。興味津々である。それならばそれを見届けてから死にたい気がしてきた。無理だろうな。

(20231027記)

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2023/10/26

1720【中越震災19年目のコメ】豪雪山村の棚田から毎秋にやってくる新米コシヒカリの美味いことよ

  新聞記事に、今年は異常に暑かったので、米の名産地新潟でも、品質の等級が下がっているとある。そのようなところに、越後の山村から、今年もうまいコメがやってきた。



 ここのコシヒカリの飯は実に旨い、冷めてもうまいのだ。その証拠にはこのコメを収穫す棚田は、有名なブランド米の南魚沼コシヒカリ産地に隣接するのだから、事実上は同じところである。

 その棚田のある集落の名は「法末」(新潟県長岡市)と言う。今から19年前の2004年10月23日の夕刻、大地が大きく揺れて、山地は崩れ、集落は崩壊した。中越大震災である。

中越地震による法末集落の大崩落

 その集落からこのコメはやってきたのだ。そう、法末集落も1年もの間、集落民みんなが避難していたが、いまや復興してまた米作りをやっているのだ。

 わたしは震災翌年からNPO仲間たちと一緒に、この住民100人ほどの集落の復興支援を手伝うようになり、次第に後退しながらも10年も通った。わたしたち仲間でできることは、その集落の生活仲間となって、一時避難で消えようとする集落の生活を、また元の様に戻そうとする人々を応援することであった。一軒の大きな茅葺屋根の家を手に入れて拠点とした。

 中でも耕作放棄されていた棚田を復活して、米作りをさせてもらったのは貴重な体験であった。NPO仲間の誰も知らない米作り術を、集落の人たちに手とり足とりで教わると、美味いコメができて嬉しかった。
 一方の教える集落民にも楽しいことであり、初めての収穫のときは集落の人たちを集会所に集めて宴会をして食べてもらったものだ。
 年中行事の復活など、多くの交流がここから生まれ、10年ほど素人米作りを伴う集落維持支援活動が続いた。

 その仲間のひとりが集落に居ついてしまい、米作りで生計を立てることなり、仲間で出資して営農会社を立ち上げた。その会社は今もつづいており、毎年秋に新米ができると出資への配当として5kgがやってくる。
 今年は異常に言暑い夏だったが、どうやら平年並みのできを保つとのことである。そして味は、やはりうまいのであった。でも、今年から3㎏に減配となったのが残念。

法末集落展望

 わたしは雪国育ちではないので、この集落が豪雪の地であり、毎冬2~3mの積雪が普通で、時には4mを超える雪に出くわす冬も体験して驚きつつ、雪国の暮らしに大いに興味を覚えたが、さすがに住みつく気は起らなかった。
 その真っ白な景観に魅了されたが、冬のほかの緑の景観はもっと素晴らしかった。春から夏そして秋へと移り変わる田畑や野山の日々の景観を、まるでわが身にまとっている日々は、実に楽しいものだった。冬にあまりに深い季節の底へと誘われたから、反動的に春夏秋が浮きたつ日々であった。

法末集落棚田の四季

 さてあの大震災から20年にもなろうとしている今、集落はまた静かに老いてゆき、耕作放棄の田畑も増えているらしい。農業会社はその棚田の耕作を引き受けることで、米を作り続け、東京で直接販売も手掛け、それが豪雪山村を維持しているようである。

 美味いコメを食いつつ、それを産むあの巧みな水利技術が支える美しい棚田に、新幹線で米作りに通っていたころを思い出し、集落人同様に老いたわたしはもう行くことはないであろうと考えている。あそこはもしかしたら、いったん出るともう二度とは入れない別天地はたまた桃源郷であったかと思うのだ。

(20231026記)

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