久し振りにお上りさんになって、印旛饂飩(インバウンド)大盛りの銀座雑踏をぶらつき、さらに歌舞伎も観てきた。この前にこのあたり来たのはコロナ以前だった。あの頃のここでの自分の動きも思い出して、今のよろよろ老衰ぶりにガックリとするのであった。
銀座4丁目交差点であたりを見回して、久しぶりにしてはあまり変わらないなあと思う。浦島太郎気分にならない。だがふと、なんだか欠けているような気がする、おお、そうだ、三越も服部時計店もあるのに、三愛ビルが無いのだ。
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| 印旛饂飩(インバウンド)の波に浮かぶ銀座の街 三愛が消えた |
そうか、あのガラスの円筒ができたのは、建築学生の頃だったかしら、こんなところにあんな床効率悪い建築建ててなんだろうと思ったが、あれは広告塔だったのだな。で、もうあの広告塔の時代じゃないのかしら、後にどんな広告塔が建つのだろうか。
東へ歩いて三原橋まで来たら、すっかり様子が変わっている。ここの地下に映画館とか飲み屋とかあったが、今はどうしてるのかなあ。ここにあった小さな戦後近代建築を撤去した跡の道路ふくらみは緑地になっていて気持ちよろしい。
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| 三原橋で超高価な寝床の男 |
ふと見れば、植え込み際の石張り床に毛布にくるまり悠々と寝ている人がいる、ほう、住民かしら。その彼の半畳の寝床の地価の高いことよ。この東京一等地の大騒音に中に秋の日を浴びて悠然と寝るのも風流なものだ。羨ましいような。
| 芝居小屋の華やかさが薄れたか歌舞伎座 |
東銀座の歌舞伎座にやってきた。そういえば、この再開発ビルのデザインは建築家・隈研吾だったなあ、冗談地口が浮かんでくる、東京都心にもクマが出没か、と。この角地のビルも合わせて建て替えると、目立ってよかったろうになア。
| 今日はここで三谷かぶき芝居見物 |
本日の目的はここで芝居を見ることだ。この前ここに入ってからもう10年くらいだろうか、建て直してすぐの頃だったか。そういえばあの頃は銀座通りからここまで歩くのはなんでもなかったのが、いまや杖を突いてゆるゆるヨタヨタとしている自分がいる。
今日の目当ての出し物は、「三谷かぶき」である。三谷幸喜作・演出の歌舞伎仕様の喜劇で、義経千本桜の四段目のキリを題材とのこと。面白そうだから見に来た。実はこれまで三谷幸喜の芝居をじかに見たことはない。2、3の映画を見た程度だ。
歌舞伎だって見たことがあるとはいっても、実はめったにないのだ。だから両方とも不案内だが、この辺で三谷作品を見ておかないと、見ないままに死ぬのも癪だを思っていた。それがちょうどこれを見る機会になっただけ、それ以上のことはないのだ。
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| わが名前入りのチケットとはねえ |
ただ知っているのは、この出し物は「四の切」のパロディらしいので、面白いだろうと勝手に思い込んだのだった。そして結論を先に書くが、じつは全然面白くなかったのだ。いろいろな意味でがっくりした。今どきの歌舞伎俳優をほぼ知らないこともある。
三谷喜劇だから面白いギャグがあるらしいが、TVを見ないわたしに現代のそれを理解できるだかとの事前の疑問はあった。現場では皆が笑っているからギャグだろうとは思っても、どれひとつわからなかったのは、予想通りだった。
わたしでも理解できるであろう時事的なギャクが全然なかった。今揉めているタカイチさんなどギャグ種に最適だろうと思うのになあ、商業興行演劇では無理なのかねえ、楽屋落ちのようなギャグはあったのかねえ。
ではストーリーが面白いというか、興味深かったか。人形浄瑠璃から歌舞伎狂言へと移行する初期の事件を喜劇にしてみ見せるというあたりに、歴史的興味を引くものがあったが、これが三谷の狙いだろうか。
前半の舞台裏のあれこれが面白くもなく長く続くので、肝心の四の切の舞台は出ないままに終わるかと心配したが、杞憂であった。回り舞台の回転にほっとした。ようやく芸を見せてくれると期待した。
だがしかし、四の切芝居もドタバタ過ぎて鼻白むばかり。例えば欄干渡りを左右で二人(2匹)でやる趣向は面白いので、中途半端ではなくて立派にやって見せてほしかった。また、せっかく僧兵に扮した役者もいたのだから、立ち回りを見せてほしかった。宙乗り迄も見せろとは言わない。わが老衰による理解度低下を棚に上げて文句を言っている。
全体に期待が大きすぎて空振りした感がある。東京新聞(11月14日)にこの三谷歌舞伎劇評(歌舞伎研究家・矢内賢二)が載っていた。褒めていないのだ。そう、設定に鋭さを欠いている、との評に対して、何となく賛同する。思うに前半では思い切りギャグって、後半では芝居をしっかりやって見せて、そのギャップの意外感をオチにするってのが、いいような。
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| 東京新聞掲載矢内賢二劇評の一部 |
とは言いつつも、久しぶりの銀ブラ、芝居小屋の華やかな雰囲気、客席で食う弁当の美味さ、階段座席の上り下り苦労、芝居見つつのわからぬながらもあれこれ飛ぶ思いなどなど、秋の日のまあまあ結構な暇つぶし時間であった。
たぶんこれでもうここに来ることはあるまい・・・こういう歳よりお決まりフレーズを、これから何回言うことだろうか。あ、そうだ、近所の横浜能楽堂が休止中のために、能の公演にも長らく行っていないが、再開したら同じように理解できなくなっているだろうか、心配になってきた。
(20251118記)
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