横から見ると、なんだかいろいろな建物がごちゃごちゃくっついているようだ。
しかもまるでどこかの旅館みたいに、後から後から増築していったらしく、いろいろな色や格好をしている。
教会ってのはこれほど大きな建物が要るのかしら、修道院でもあるのかな。近くの歩道橋から見ると、なかなか巨大である。
向こうのショッピングピングセンターに引けをとらない、いや、ショッピングセンターの別棟かしら。
向こうのショッピングピングセンターに引けをとらない、いや、ショッピングセンターの別棟かしら。
正面にまわってみたら、おおキリスト教会である。これははなんと言う様式だろうか。ゴシックというか、曲線もあってバロックか、球形ドームも見える。
近づけば、まわりを鉄柵で厳重に囲ってある、しかも2重に。
あれ、キリスト教会は普通ならいつでも誰でもは入れるぞ、ここはやっぱり修道院なのか。妙に敷居が高い施設である。
案内板がある。なになに、
「ヨーロッパ文化を継承した聖なる祝祭の地、アニヴェルセルヒルズ横浜。丘の上のチャペルと3つの豪華な邸宅で行われるウェディングがテーマです」
「ヨーロッパ文化を継承した聖なる祝祭の地、アニヴェルセルヒルズ横浜。丘の上のチャペルと3つの豪華な邸宅で行われるウェディングがテーマです」
ウェディングがテーマってどういうことか、はて、アニヴェなんとかって聞いたような、って首を傾げていて、思い出した。
そう、ここは結婚式用の教会なのだ、しかも、いま、横浜みなとみらい21新港地区に進出しようとして、横浜市の審議会で問題になっている、あの事業者の結婚式場である。キリスト教会風建築はまさに儀式場であり、修道院風建築群は宴会場であった。
とたんにこの建築群がキッチュに見えてきた。うまいこと真似て作るものである。
ここは港北NTセンターの地下鉄駅のすぐそば。
まわりはいかにも高度成長時代の都市プランナーががんばった形の、広々とした広場とモールと現代的な建築群がある。
その建築群が現代風のタイルやガラスを多く使い、屋根はフラット、壁は四角と平面を基調とした、モダニズム系統のデザインである。そして多様多色な広告が建築を彩る。
良くも悪くも現代消費社会を、いかにも計画的に作りましたと、そういう風景である。
それに対してこの結婚式場建築は明らかに異形である。一見すると白亜の西洋様式建築群が整っていて広告物は一切ない。実はよく見るとなんともばらばらな建築群だが、それは多分、玄人のわたしの目が見たからだろう。
一般に異形であることをもって悪いといっているのではない。
異形は時にランドマーク性を持って地域に個性を与えるが、ここでは異形がどこか地域から浮き上がり、あるいは地域を排他する異教徒的な風貌を持つのが気になる。
人を寄せ付けない鉄柵、すくない開口部、さまざまな増築(のように見える)など、この日常の中の突然の非日常風景は、どこかうさんくさい雰囲気である。
現代の結婚式場とはそういうものになっているのか、わたしには不思議きわまるのであた。
一般の人たちはどう思うだのろうか。歩いている人に聞いてみる勇気はなかったが、多分、なんだかカッコウイイ、ちょっと素敵、なんて言いそうだ。
わたしが見た日は平日だから式はないのだろうが、何組かの客らしい人たちが、黒い服のここに係員らしい人に案内されて鉄柵の中を歩いているのが見えた。
この「ビジネスモデル」(事業者の言葉)は成功して繁盛しているのだろう。だから新港地区でもこれでやりたいのだろう。
こうして実物を見てから、またはじめに戻って新港地区での例の計画の絵を見る。
この遊園地というかテーマパークのような姿が、実は鉄柵の檻の中にできる異教徒の世界を思わせる空間になるのであるかと、なんとも不思議な思いにかられるのである。
まあ、いつもは信仰心もないのに、結婚式で一時的に異教徒になるのだから、そうなるのだろうか。
それで思い出したのは、松本市の北の郊外にある「信州ゴールデンキャッスル」である。もとは四賀村といったがのんびりした山里に、突然にベルサイユ宮殿風(自称)の建物が出現して、度肝を抜かれる風景がある。
これがまた鉄柵で囲まれた結婚式場建築である。ここは成功した居酒屋経営者の出身地で、その母親のために建てた御殿がその元だそうである。
この山間の異教徒的というよりもラブホテル風かレジャーランド風というか、そんな風景は、考えてみれば街の中にあるよりも過疎地にあるほうが違和感をかんじる人数が少ないから、まあ、いいか、、、これも不思議な風景である。
港北センターの結婚式場がここにあると、まさに修道院風風景である。ベルサイユ宮殿風よりもそのほうが似合っただろうになあ。
(まだまだ、つづく、次は赤レンガの風景を考えてみたい)
参照→横浜ご近所探検隊が行く(横浜景観事件の連続コラム全編はこちらからどうぞ)
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