2013/03/12
730震災核災3年目(2)次の巨大津波は迫っても事前危険排除都市計画は無いらしい
昨日の「729地震津波火事原発3年目(1)」のつづき
●災害危険排除建築から津波防災地域づくりへ
災害危険区域指定の制度について、ちょっと調べたのだが、どうもよくわからないことがある。
この制度は建築基準法という、安全な建築をつくるための法律である。一つの建物が地震や火災に強いようにすることとともに、複数の建物相互の関係で環境が悪化しないようにすることを決める。
その中に「津波、高潮、出水等による危険の著しい区域」を、災害危険区域として地方公共団体の長(県知事、市町村長、特別区長)が決めることになっている。
ここの「等」には、何が含まれるのだろうか。「核毒」も含まれるとしたら、福島でも使えるだろうが、今のところそうしていいない。
というのも、全国の災害危険区域の指定状況を調べる能力はないだが、ウェブサイトをパラパラと見た限りでは、どうもこれまでの指定状況は、いちばん多い例は、がけ地崩壊危険区域である。
市街地の開発で崖地が崩れて死ぬ事件がおきたので、災害危険区域を指定したらしい。
そのほかは河川の洪水による出水、例外的なのは伊勢湾台風による高潮地域がある。どうも津波による区域指定は、今回の東北地方より前では、奥尻島だけらしい。
気が付いたことは、災害危険区域のどれもこれもが、実際に災害が発生して、死者とか負傷者とかが発生した地域だけらしいのだ。全部を調べてはいないので確信は持てない。
指定条件の「危険の著しい」区域とは、「危険の著しいと予想される区域」とは違うのだろう。
以前から思っていてこのブログにも書いたが、日本では人柱が建たないと政策は動かないのだが、やっぱりそうらしい。
ここに「関東の津波リスク」という図がある(2013年3月3日朝日新聞朝刊から引用)。
これを見ると、いつの日か、いや、明日かもしれないが、やってくる東南海トラフの大揺れによる大津波を思うと、今のうち災害危険区域を事前的に指定するべきだろう。
大津波がやってきて死人がでてから指定しても遅いのは、3・11津波で経験したとおりである。
まあ、事前指定するにはいろいろ問題はあるだろう。事後指定した東北地方の被災地でも、指定反対がずいぶんあったらしい。なにしろ、そこにもう住めなくなるのだから。
多くの地域で指定した目的は、防災集団移転事業という補助金欲しさのためという目先の必要性(それが悪いと言っているのではない)もあるらしい。
そのことはこれから後に問題が見えてくるだろうが(これについては別に後述する)、今は、それどころではない、というのが現場だろう。
ところで、2011年に「津波防災地域づくり法」という新法ができている。この法に「津波災害特別警戒区域」を指定する制度がある。これは県知事が決めることになっているのは、津波は市町村の範囲を超えてやってくるからだろう。
この指定区域では建築の制限をすることができるので、建築基準法の災害危険区域と似たような制度であるが、もうすこし柔軟で広く使える制度らしい。
建築基準法による災害危険区域は、区域の危険を排除するけれども、その区域を今後どうするのかという都市計画の視点が欠けていると思う。
津波防災地域づくり法は、その名のごとく地域づくりの視点からの制度である。この違いについての考察は、更にしてみたい。
しかし、WEBサイトで探したかぎりでは、現時点では津波防災地域づくり法による津波特別警戒区域指定したところは、まだ日本中にひとつもないらしい。
事前指定すると住民が逃げ出して人口減少が進むだろうし、不動産価値が下がると文句言う人がいるだろうし、行政では難しいのだろう。
でも早く決めて手を打たないと、今晩にでも明日にでも津波はやってくるかもしれない。それでは「防災」地域づくり法にならないけど、いいのだろうか。
(明日の記事につづく)
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