久しぶりにオペラを観た。モーツアルトの魔笛である。調べたら2018年横須賀芸術劇場で宮本亜門演出で、これも魔笛を見て以来のオペラ見物であった。
それから今日までの間に、コロナ騒動で芝居全般に見物しにくい環境だったし、外国引っ越しオペラが来ても高価過ぎて行けなかったこともある。1年に一回くらいはオペラに行きたいと努力しているが、能楽に比べて高い。
韓川県立音楽堂の舞台 20231111オペラ魔笛カーテンコール |
今回は神奈川県立音楽堂で、横浜シティオペラによる公演であった。音楽専門の舞台だから、舞台には紗幕や装置はなくて、暗転そしてそのままプロジェクションマッピングであった。シーンによって具象と抽象を折り交ぜた映像が、反響板だけの舞台の背面や上面に映し出されるのも、まあ悪くない。
だが最初に登場する大蛇が、もろに大蛇そのもの過ぎる具象映像であり、その後も邪悪の表現にたびたび巨大な蛇体が映って気持ちがよくない。もう少し抽象化してほしかった。
ザラストロ神殿が、何やら古典派の建築様式の映像で登場するが、そのほかの場面はほぼ抽象映像だった。あの支離滅裂な物語を整理分類して見せる分け方かもしれない。
舞台上には、奥に置き舞台が横長に配置されて、舞台が前後2段になっていたほかには、背の高い椅子が3脚、場面により位置を変えて配置され、舞台に変化を見せる。
総じてあまりに簡単すぎて、これは能舞台にプロジェクションマッピングしてると同じだなと見ていた。これもよしである。
当然のことにオーケストラピットはないから、舞台上手に電子オルガンとピアノが並ぶだけで、その前で指揮者が棒を振るのだった。
今日のオペラの出来をどうのこうのと言う能力はわたしには無い。いちおう楽しんだから、良かったのだ。歌手たちの歌も良かった。定番の夜の女王のコロラトゥーラ・ソプラノもやっぱりすごい。でもこれってどこか曲芸でも見るように聞いてしまって申し訳けない。
わたしは魔笛については、歌と曲が素晴らしいから好きだが、ストーリーの支離滅裂に呆れる。コミカルな狂言とシリアスな能を細切れにして交互に演じるというところか。これはパパゲーノが主役つまり狂言の太郎冠者である。今日のパパゲーノ役は良かった。
そういえば、いつものわたしが見るオペラは(料金の都合で)天井桟敷並みだが、今日は能舞台並みの近さで見た。やはり芝居は近くで見る方がよい。
今日のオペラは珍しく全部日本語であった。これまで劇場で観たいろいろなオペラはほぼ全部が、イタリア語かドイツ語だった。魔笛もこれまで見た3回ともドイツ語だったし、ユーチューブで見てもそうだった。ドイツ語は大学で習ったけどわかるわけではない。
だが、魔笛を観るの何語であるかは関係ない、あの美しい歌さえ聞ければすべてOKである。見ていればなんとなくわかる。そうして今回の日本語さえもそうだった。つまり、それくらい支離滅裂な劇ということだ。ウィーンのフォルクスオパーで観たドンジョバンニもそうだった。
ウィーン VOLKSOPER HEUTE DON JOVANNI 1994/11/26 |
久しぶりにオペラ舞台をみて直ぐに思ったのは、役者たちの背格好がずんぐりしていることだった。見ているうちに馴れたが、このところユーチューブで西欧の舞台ばかり見ていたからだろうか。
今回はザラストロやくは背が高くて恰好よかった。タミーナ役も背格好も容姿も歌もよかったが、演技はイマイチ。
パパゲーノとパパゲーナのこどものキンダーラインとして、子役をあんなに大勢出したのなら、クナーベ3人をこそ本来の子役にしてほしかった。
以上、久しぶりのオペラに、思いつくままにまとまりのない感想である。
この音楽堂でオペラを見たのは2回目である。あれはもう20年以上前のこと、モンテヴェルディ作のオペラ「オルフェ―オ」であった。
西欧でオペラが始まった頃の作品であり、古楽器の演奏の小オーケストラも舞台に上がっていたが、演奏会形式ではなくて舞台上の演技空間と一体になっていた。演技空間に中二階があった記憶がある。映像をつかうこともなく、それも面白かった。
県立音楽堂は大改修したのだが、さすがに階段型の客席の前後関係の配置を変えることができなかったらしく、椅子の前後が狭いままであるのが困る。後から来た奥の人を入れるには、席をいったん立って通路に出て、後から来た人を入れてから元の席に戻って座るのだが、わたしの様に足が悪いと実に困る。相手をおおいに恐縮させるのが困るのだ。
もっと困るのは、これもこちらが年取ったせいなのだが、客席空間そのものが階段だからその上り下りを歩くしかないのが大いに難点である。客席内の上下通路の一本で良いから幅を広げて、手すりを付けてほしいと思う。すぐできることは、今の両サイドの縦通路の壁に手すりを付けることだ。
(20231111記)
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伊達美徳=まちもり散人
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