2023/11/10

1735【神宮外苑再開発】市民側都市計画家二人目が登場して新た問題を指摘

 東京の明治神宮外苑と隣の国有地や民有地と合わせて、巨大なビル群を壊してまた建て直す計画が進行中である。東京のあたりではちょっとした評判である。

●二つの大きな問題

 とくにまわりの市街地と比べて樹木が多く繁っているのを、この建設事業のために切り倒し移植し捕植するという緑空間大変更への異論が、緑に飢える都心市民たちから多い。市民側に立つ緑の専門家が、それを理論構築している。

 そしてもうひとつは、都市計画で公園に指定されているのに、再開発で超高層ビルが建つことになったという都市風景大転換への異論の声も市民から大きい。これにも市民側にたつ都市計画の専門家たちが登場して、理論構築している。

 事業者はこれら異論に耳を貸すことなく、これで行くのだと粛々と進める気配である。事業者側にもそれらの専門家がいるはずだが、今のところ全く姿を見せない。どうも、事業者側の専門家が逃げ回っている気配も感じる。
 事業者側の専門家と市民側の専門家とが、直接に専門的な論をかわすことなく進んでいるのは、かつて都市計画家の端くれにいたわたしとしては、なんとも居心地が悪い。

 市民側の緑の専門家としてはランドスケープアーキテクトの石川幹子さんが論陣を張って、一歩も引かないでいる。だが事業者は知らんぷりを決め込んでいる。
 もうひとつの専門領域として都市計画が、実は重要な問題をはらんでいる。都市計画という法定行為の進め方に矛盾が露呈してきたようにわたしは思っている。

 市民側の都市計画家は、大方潤一郎さんと大西隆さんという、斯界の大御所が二人も登場した。どちらも大学人である。大方さんは登場してもうい1年くらい経つだろうか。ネットでお話を聞いていると都市計画の講義を受けている感である。

 最近になって大西隆さんが登場した。外苑再開発騒動はもう2013年頃からやっているのだが、当初の新国立競技場騒動の段階では、市民側の専門家に建築家が多く登場したが、都市計画家はまったく登場しなかった。ここにきて都市計画家が二人も登場とは嬉しい。

●大西隆さんから新たな問題提起

 つい先日、大西さんのレクチャーを初めてネットで視聴した。その中で、この事業への都市計画上の問題点として、これまで誰も指摘しなかったことを挙げておられたので、ここに書いておきたい。
 それはこの事業が憲法に抵触する恐れがあるとの指摘である。わたしが理解した大西さんの外苑再開発憲法抵触論は次のとおりである。

 この再開発のために、明治神宮の土地に定めてあった都市計画を変更した。その決定権者は東京都知事である。その変更において、外苑の所有する土地の都市計画の容積率の一部を、他の土地に移転して利用させることにした。そしてその移転による対価を移転先から得て、再開発事業を行うことを可能にさせた。その事業の認可権者も東京都知事である。
 うまり、これは東京都知事が宗教法人明治神宮に特別の利益供与を与えたことになるので、憲法20条に抵触の恐れがある。

 わたしにはこの大西さんの論を判断する能力はない。だが、直ぐに思いついた実例がある。まずは東京の「永田町二丁目地区再開発計画」といわれる日枝神社と隣地開発である。
 その日枝神社は、所有する土地の容積率を隣の民有地に移転して対価を得て境内地の整備を行い、隣地では受け取った容積率と自分の土地の容積率を加え更に地区計画で容積割り増しを受けて、巨大超高層ビルを建設したのである。これも東京都知事が定める都市計画の変更であり、宗教法人日枝神社の土地への都市計画の特例措置と言えるだろう。
 どうでもよいのだが、ここの超高層の土地って、昔々のことだが乗っ取り騒ぎやら大火災やらがあった変なホテルの跡地だよなあ。有名な山王ホテルもあったな。

日枝神社と容積移転先の巨大超高層

 もうひとつ思いついたのは、東京日本橋の福徳神社関連再開発である。日本橋室町東地区再開発と言うらしいが、これは低容積神社部分と隣地の高容積超高層という組み合わせで、特定街区で容積移転を行った。これも東京都知事決定である。
 どうでもよいのだが、もう10年近く日本橋に行ってないが、あのあたりはなんとなく江戸の街の雰囲気があったけど、もう全く風景が変わってるだろうなあ。

 日本にはほかにも神社とか寺院を再開発区域に含む再開発事業はたくさんある。それぞれ異なる事情だから一概には言えないが、基本的には神社仏閣の宗教行事用建築は低層であるから、その上空の未利用容積率を宗教活動以外に使うように事業を構築するはずだ。そしてこの時に容積率等の移転や割り増しという特例措置を、ほぼ必ず生じさせている。

 大西さんの容積移転憲法抵触発言をわたしが正しく理解したかどうか自信はない。大西さんのお考えはもっと複雑かもしれない。
 だが、神宮外苑再開発において行おうとしている容積移転による特例措置は、既に実態として神社仏閣において幾つも行われてしまっている。それらをどう考えようか。

 なお、ネット検索していたら、神宮外苑の近くでは愛宕山とその麓で行う再開発が、外苑と似たようなことらしい。愛宕山は芝公園の愛宕地区として都市計画公園に指定されているのだ。都市計画愛宕地区地区計画と愛宕地区第一種市街地再開発事業である。
 どうでもよいことだが、あの講談で有名な愛宕神社男坂の急階段をわたしはもう登る能力を失ったな、麓にNPOオフィスがあったから花見時によく登ったなあ、そういえばこの辺りは森蛭の領分だ、そのオフィスも蛭の餌食になって消えた。愛宕神社宮司は能のワキ方で有名な人でよく能楽堂で見たなあ。

 そしてまた、その増上寺のある芝公園では外苑に適用して物議の種になっている「公園まちづくり」制度を使って再開発を行おうとしているようだ。

 今日はこれくらいにしておこう。

(20231110記)

◆【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集
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伊達美徳=まちもり散人
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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

地方分権一括法( 1999.7)のもとに都市計画法・建築基準法等の法令改正、数度にわたる都市計画法運用方針の改正、さらに2020.12に神宮外苑地区市街地再開発事業の「事業の目的」「施行区域要件」の適用が適切であるとの(自治法上の)技術的助言(昔の課長通達)を出した国土交通省に元々の責任があります

まちもり散人=伊達美徳 さんのコメント...

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