2023/11/30

1753【紅葉の季節】故郷生家の森の紅葉から思いを巡らす街の紅葉そして人工の紅葉

 今年の紅葉は平年と比べてどうなのだろうか。夏から秋へと暑かったから、紅葉は遅いのか逆に早いのか、どちらなのだろうか。

 ここに載せた紅葉黄葉風景の写真は、2014年11月10日撮影である、場所は岡山県中西部にある高梁盆地の神社境内で、ここはわたしが生まれ育って少年期までを暮らした生家である。故郷の盆地で暮らす同年友人が撮って送ってくれた。
 少年の頃には紅葉なんてものには全く興味なかったから、このような紅葉風景を送ってくれて、改めて美しいと感動したのであった。

 その生家の神社は、盆地を取り巻く丘陵の中腹斜面の街から見上げる位置に、裏に山を背負った森の中であった。生まれた時から自然の四季の移り変わりの中におぼれるほどにどっぷりと浸かって生きていた少年にとっては、あまりに日常的すぎて身のまわりの自然の変化には全く気を止めるようなことはなかった。周りの森もの樹々も裏山の森も全て自分の領分だから、それはまるで身体の延長である。自然を客観的に見る目はなかった。

 ところが、ある日のこと、突然に自然を感得した得難い体験の記憶がある。中学生になったばかりの頃だったような春のある日だが、真昼の森の中から森の外の雑木林のあたりをぼんやりと見ているとき、それは急にやってきた。
 樹々の萌える若葉のひろがる枝葉、その色彩のグラデーション変化、風による木の葉や草のさやぎ、鳥の鳴き声、森の樹々の合間からさす日の光、それまで気に留めることなかった自然の姿が一気に押し寄せてきた。

 それはいったい何だったのだろうか、しばらく立ち尽くしていた。自然がわが身の外にある客体としての自然が見えてきた”事件”があった。それはどこか外から来たのではなく、身の内から湧き出てきた感情であった。何か特別なきっかけはなにもありはしなかった。

 たぶん、それはその日から大人になるステップを登り始めるという少年にとっての、心と体の儀式だったのであろう、と勝手に思っている。遠い少年の日のその不思議な体験を、不思議なほどにありありと覚えている。もっとも、自然が美しいと悟るにはまだ時間が必要であった。

 それから20年ほども後のことだが、これに似た体験をしたという知人にひとりだけ出会ったことがある。また何か外国の小説であったとかすかな記憶だが、これと似たような体験する少年の話を読んだことがあり、ときに思いついて探すのだが見つからない。

 故郷の盆地にはもう20年も行かないし、もう行くことはなさそうだが、上の写真のような紅葉は今もあるらしく、先日のこと、故郷の盆地に住む知人が、街から見上げた神社の森の中に、今年もイチョウの大木の黄葉が目立っていたが、もう落葉したと便りをくれた。

 さて、今わたしが住む横浜の近所に紅葉黄葉の名所がある。街路樹のイチョウ並木がかなり多い。有名なところは日本大通りであろう。紅葉狩りの名所ならば三渓園である。これまで何度も出かけたものだ。

横浜三渓園紅葉風景 2021年

横浜大通公園 銀杏黄葉 2015年

 銀杏並木と言えば、今話題の明治神宮外苑である。上の日本大通りの銀杏本来の姿のそれと比べると分るように、外苑では強い剪定をして、槍の切っ先のようにとがった姿にしている。それはここが明治王権のシンボル空間だからである。その先にある絵画館に視線を集中する人工の仕掛けであり、その視線を強要する人工景観をわたしは好まない。
明治神宮外苑の銀杏並木 2013秋

 近ごろは紅葉や黄葉の樹木に、夜間にライトを当てて見せるということがしきりに行われているらしい。わたしは実は見たことが一度もないのだが、見たい気がおこらない。ライトの当て方が人工的でわざとらしい風景になるに決まっているからだ。いっそのこと紫色でもあてて紫葉狩りでもしたらどうですか。

 ネット検索で紅葉ライトアップを探すと腐るほど出てくる。これではご免を蒙りたい。雪景色でも花見でも瀧でも何でもかんでもライトアップして、しらじらしい風景に変えてしまうのが気に食わない。これも視線を強要して不自然極まる。

ネット検索サイトに登場する紅葉ライトアップ風景

 自然の風景を光で改変するライトアップも風景破壊であるし、こうも夜まで明るくされては植物の方も寝不足であろうから枯れてきて自然破壊になっているに違いない。
 これからクリスマスがやって来て、個人の家をキンラキラキラさせるのはそれぞれ勝手ながら、景観についての美的感覚に頭をかしげさせるのである。
 ここに並べた写真を見て気が付いたが、計らずも自然のままの紅葉から、人工の極致の紅葉へと並んでいるのが面白い。

(20231130記)

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伊達美徳=まちもり散人
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