2023/10/15

1711 【遠い日の暗殺事件の記憶】浅沼稲次郎事件の時代と安倍晋三事件の時代

 そうか、あの事件は10月12日だったのか、1960年のことであったか。


 大学生だったわたしはその日、大学近くの商店街の床屋で順番が来るのを待っていた。なんだかTVが騒がしいと見ると、この浅沼稲次郎暗殺現場の映像を流している。この演説会の実況中継放送していたのだろうか、何度もこの場面が繰り返された。

 もちろん次の日の新聞にも大きく写真は載った。どの新聞社も演説会場の最前列で取材していたから、沢山の現場寫眞が撮影された。それでピュリッツアー賞を得た人もいた。

 わたしのこの事件に関する記憶は、床屋で驚いたことのほかには、その後の新聞への読者投稿で、「その時に新聞記者たちは何していたのか、写真撮るよりも襲撃男にカメラを投げつけるべきだったろう、けしからん」、というような投書がいくつも載った。それに対するジャーナリスからの反応があったような記憶があるが、おぼえていない。

 あれから63年後の2023年10月14日の東京新聞の記事に、その寫眞で特ダネ賞を撮った記者が、「他人の不幸で特ダネをとったということが心苦しく、それ以来ずっと心の負担になって」というメモを残していたことが書いてある。読者の投稿にも悩んだことだろう。

 その頃の私は、卒論に忙しかった頃、6月を頂点とした安保闘争の余波余熱があった。個人的にもその余波で、就職内定先の大企業担当者とトラブルになっていた。
 そして時代は高度成長期へと移っていく。そんな時期だった。

 2022年の安倍晋三暗殺事件の時も、その現場映像や写真が、多くのマスメディアに流れたが、その多様にして多量であったことは、浅沼暗殺事件の時の比ではなかった。

 二つの事件に共通なの有名政治家が被害者であったことだけのようだ。暗殺犯の動機にずいぶん差があるものだ。どちらが良いとか悪いとかに比較になるものではないが、犯人の動機のあまりの差、そして被害人物の立場のあまりの違いに、隔世の感が強い。

 思えば私の年齢のせいもあるが、浅沼事件のあの頃は先が開けて明るい時代だったが、安倍事件の現今の時代はあらゆる閉塞感に満ちている。(20231015記)



2023/10/10

1710 【懐かしやあのコロナ客船が来航】日本コロナ騒動発祥のクルーズ船が横浜港に復帰

 暑い暑い暑い夏がようやく終わったらしく、秋晴れの日になってきたので、横浜都心部徘徊の市街地再開発事業である。今年の暑さもさることながら、2020年からのコロナによる外出規制は、高齢者に感染でなくても確実に健康被害を及ぼした。
 外出できなくて歩かないから体力が衰えたし、他人との交流がないからボケも進んだ。自分自身の身体で実感しているから、これは世界の高齢者全部がそうだろう。超高齢大国日本の高齢者死亡率が上昇するに違いない。意外にもコロナが高齢者増加しすぎにブレーキをかける、なんてコロナの効用があるのかも。
 
 秋晴れの先日、久しぶりに横浜港の大桟橋を眺める「象の鼻」あたりを徘徊、おお、大きな客船が停泊しているなあ、はて、見たことあるような、え~と、DIAMOND PRINSESS、あ、ダイアモンドプリンセス、聞いたことあるような、あ、そうだ、これは例のコロナ客船だったあれだ。


横浜港大桟橋に復帰してきたダイアモンドプリンセス・2023年10月7日撮影

 2020年2月11日の自分のブログ記事を思い出した。
 あの豪華境クルーズの旅にある船内に、コロナ感染客が次々と発生、横浜港で遭難さわぎのあの船だ。
 コロナがまだ珍しい時期で、わざわざその立ち往生船を港まで見に行ったものだ、コロナ初期騒動とともになんだか懐かしい。懐かしいとは良い記憶にいうべきだろうが、、。

コロナ遭難で横浜ベイブリッジ下に避難のダイアモンドプリンセス・2020年3月1日撮影

 そうか、ようやく復帰したのかあ、わたしは現在のコロナ終息気分らしい世間を疑っているのだが、この船を見て、もしかして本当かもしれぬと思えてきた。

(20231010記)

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2023/10/09

1709【ハイテクも歳には負ける】エアコンに洗濯機に髭剃りも持ち主に似て次々に老朽

 うちにある家庭電気機械類が次々老朽化して壊れていく様は、まるでその持ち主のわたしが高齢化して壊れていくのに殉じているようだ。新品に買い替えたとたんに持ち主が死ぬであろうと癪である。

●充電池髭剃り器が死んだ

 うちにある電気製品でつい先日まで生きていた最も古いものは、髭剃り器である。なんとまあ30年も使い続けてきた。先日から振る舞いが怪しくて、さすがにご臨終が近いらしい。充電してまだ顎をそっている間に止まってしまうのは、充電池が危篤になっているのだろう。

 この髭剃りについては、わたしのこのブログ2009年3月9日記事に、もう20年も使っていると感嘆を述べている。それからもう14年半も経つのだ。結構なお歳で、私と良い勝負なのだろう。

左はオランダ製30年ものシェーバー、右は日本製10年物
 しようがないから新品を買うかと思ったが、もうひとつ乾電池で動く髭剃りがあったことを思い出した。引き出しの奥から探し出して、新品電池を入れたらちゃんと動くのである。これで当分は新規購入しないで行こう。でもこの器械もそのブログ記事に書いたようにそのころ手に入れたのだから、少なくとも10年以上も前のものであることは確かだ。もうよいお年なのであろう。

 この二つの髭剃りに共通することは、どちらもただで手に入れたもの。今回壊れた充電式は、クレジットカードのポイント還元で取得、乾電池式はどなただったかの香典返しリストから選択して頂戴した。タダでも良いものは良いのだ。

●洗濯機がご臨終寸前

注水が老衰した13年もの洗濯機
 10日ほど前から電気洗濯機が不調極まる状態にある。洗濯ものを入れてスイッチ押して待っていても、水が入ってこないのである。すこーしは入ってきているらしい音はしている。

 マニュアルを読んであれこれやってみたが状況は変わらない。こいつも俺と同じに歳とったかと調べると、購入から13年目である。これは古いのだろうか。

 水が自動で入らないなら、人間が手動で水を入れてやればよかろうと考えて、そばの洗面器蛇口から直接に注いでやり、適当な水量でスイッチを押して待っていたら、間もなく動き出した。すぐ停止するかなと見ていたら、すすぎから排水までいちおう動いて2度目の注水が始まった。治ったと期待したが、やはりちょろちょろ注水なので、蓋を開けて人力注水してやったら、また動き出して脱水迄まで終えた。

 フムフム、手間はかかるがこうやって、だましだまし使い続けるかなあ、いやそれも面倒だなあ。久しぶりに手洗いするかと風呂でやったら、懐かしくなった。仕事していたころはあちこちに旅していたから、ホテルで洗濯するのは日常的だった。

 ネットサイトで探すと修理代金は1~3万円ほどとある。3万円出せば新品変えるだろう。また洗濯機の寿命は7年ほどとある。では13年ならもうお陀仏させてもいいか。
 しょうがない、ほとんど使わないままの自動乾燥機をいらないから、安いヤツを見つけて買おう。高いもの買って直ぐに所有者のわたし死んだら悔しいものなあ。
 ネット市場検索していたらあった、19,999円、3.5キロである。これにしようかな、老人二人ならこれで十分だ。

●食堂のエアコンが怪しい

 2017年に買ったばかりなのに、ダイニングルームのエアコンがおかしい。これは販売店保

食堂の7年ものエアコン
証期間が過ぎたばかりなので悔しい。過ぎた今年の冬ににどうにも効かない暖房機のまま春が過ぎた。
 暑くなる直前に修理屋さんを呼んで調べてわかったのは、僅かだが室内機から室内側に冷媒が漏れているという。「とりあえず冷媒を入れておくからまた効かなくなったらまた入れましょう」、という状況である。まあ、この夏は何とか冷房にできたが、これもだましだまし使っている気分である。

 ところが冷えるのは冷えるのだが、室内機からから結露水が室内に漏れてくるのだ。あばら家の雨漏りみたいに洗面器で受けている。雨だれの音がトントントントンとて、なんだか懐かしい。風流と思うことにしてこの夏は我慢してしまった。

居間の23年ものエアコン
 このエアコンは、実は保証期間中に2回も修理を呼んでいるのだから、困りものなのである。これと同時に買ったエアコンがもう一台あるのだが、これは故障もなく動いている。
 また、更に居間とわたしの個室にもエアコンがあるのだが、その2台はここに入居した2002年に購入取り付けたのだから、もう23年も経つ。そてどちらも一度の故障もなく今も動く。今どきと比べるとさぞや電力を食う機械だろうが、丈夫である。

 上に書いた食堂と個室のエアコンは、これらと同じ入居時23年前につけたのが壊れたので取り替えたものだ。その取り換えから6年でもう怪しいのだから、エアコンにも当たり外れがあるものだ。でも事前に見分けるなんてことは誰もできないだろう。
 あ、そうだ、大物の23年もの冷蔵庫があるな、よくもっているなあ、でもいまどきの省エネじゃあないのだろうが、まあいいや。。

 ほかにも最近に壊れて買い替えたものがいろいろある。2年前に携帯電話が壊れてスマートフォンに買い替えた。買い替えたそのスマフォは。たったの1円であったが、電話のやりとしとメールとLINEの受信確認に使うだけだから、特に困ることはない。
 一番よく使ってているPCは去年夏購入したが、その前の10年ものPCも予備機として置いている。実は電話もこのPCでできるらしいが、未だやっていない。

(20231009記)

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2023/10/05

1708【外苑再開発談議】新ラグビー場はPFI入札ダンピングで新規国費投入額抑制されても巨額負担らしい。

熊五郎:ご隠居の9月25日ブログ記事で、神宮再開発の金勘定のことがおぼろげにわかりましたよ。それから9月30日ご隠居談議で、ちょっと脱線気味ながらラグビー場のドジぶりも分かりました。

ご隠居:熊さんにはそれでもよく分からんだろうから、10月2日のブログラグビー場はこの再開発に参加するなって、納税者として書いておいたよ。

●ラグビー場はPFIで81億円で建つ?

:でもねえ、ご隠居、ある人からこんな話を聞きましたよ。実は新しいラグビー場を建てるのに、JSCが入札したらドドーンと安く取った業者が現れて契約したとかするとかってね、それがご隠居のいう540億円どころか、なんと81億円だそうですよ。ご存知でしたか。本当にそうなら再開発やった方が得でしょ。

:それは新ラグー場の建設と運営管理をPFI入札したことだろ、もちろん知ってるよ。

:じゃあ、事実なんですね。なんです、PFIって。

Private-Finance-Initiativeの略称だがね、公共の箱モノを民間事業者に建てさせて運営もさせることを言うのだよ。国立のラグビー場をそれでやろうってんだよ。

:つまり国は土地だけ持っていて、ラグビー場の新建物は民間企業に売ってしまうんですか?

:いやいやそうじゃなくて、新ラグビー場を民間企業の金で建ててもらい、その代わり30年間の運営管理を任せるので、その収益で建設費用を賄ってくれ、という仕掛けだよ。今要る建設費と将来入る予定の収益の差額が、ほれ、熊さんが聞いた81億円だよ。全額を賄いきれなくて81億円赤字になるから、その分をJSCが払うとなったんだね。

(図1)出所はJSC広報

:30年分の未来に入る予定の金を差し引いたら赤字が81億円になる、ということですか、では建てる費用だけならいくらかかるのですかねえ。

:それはJSCが公表しているよ、この施設整備費約489億円と、ちゃんと書いてある、81億円じゃないよ。(図1の最下段の表)

:ふむふむ、この運営対価の412億円ほどが将来収益なんですね、へえ、これをさし引くから81億円かあ、もしもこれが489億円なら差し引きゼロ円ですね、なーんだ、わかりました。

:だからね、捕らぬ狸の皮算用も入っている、そういうリスクを負っているらしい。そこは落札企業を信用するしかない。

:あるいは施設整備費をもう81億円安くしてくれるのでもいいね。まあ、再開発やめてPFIやるとそんなに安くなるのかって勘違いしてました。

●PFI入札でダンピングがあったのか?

:それにしても入札した3者の中で、落札したグループの81億円とはダントツ安さで、他の入札者の金額が225億円とか357億円とかで、あまりに差が大きすぎる、公共事業の入札では、あまり安すぎる金額を入れると失格になる制度がありますよね。

:そうそう、それでねJSCサイト見ていたら、PFIにはそれを適用しなくてもよいのだと書いてあった、いくらダンピングしても失格無しらしい。それは多分、落札者が運営管理もするから。建物があまりに安かろう悪かろうだと自分に跳ね返ることからだろうね。

:あそうですか、失格はないなら安心して大安値を入れたんですね。入札したのは3組だけで、落札したのは鹿島というゼネコンが代表、鹿島は現在のラグビー場の建設をしているから、意地でもこれを落札したかったんでしょうね。

:そういえば、国立競技場は大成建設だった、あれも元の建物をやったゼネコンだね、では野球場と伊藤忠ビルも同様だろうね、ゼネコン業界の鉄の掟があるのかもなあ。

:まあ、それで良いものが安くできるなら、納税者としては歓迎しましょうよ。でも何が原因で、入札額にこれほど差が出たのですかね、JSCサイトを見ても詳しくは分からない。

:ウ~ム、難しいけど、落札者の金額の大内訳の施設整備費、博物館維持管理費、運営対価が公表されているが、このうちであれほど大差が出るのはどれかねえ、維持管理費では大差ないだろうし、運営対価ってのもラグビーやイベントで大儲ける運営なんてないだろうしなあ、やはりこれはゼネコンのお得意の建設費、つまい施設整備費でダンピングしてるような気がするね。

:ということは、他の2者は建設費が140~270億円も億も高額だったのですかねえ、凄いなあ。

:まあ、それでも建設に490億円ほどかかるんだけどね、81億円じゃないよ、いいね。

:はいはいわかりました。ですがね、ご隠居、じゃあ聞きますがね、

:お、いきなり改まってなんだい。はい、聞きましょ。

●再開発とPFIの関係は?

:ここで施設整備費が約489億円と分かりましたよね、ところがご隠居は先回には市街地再開発事業のラグビー場建設には540億円の新規税金投入が必要となる、と言ったでしょ。これら二つの数字の違いは何ですか。

(図2)出所は2023年9月24日岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャー

:おお、ラグビー場の権利変換で、権利床だけでは床面積が3分の一ほどしか手に入らない、残り3分の2の床面積を得るためにはそれを保留床として足して作り、それを自らを買い増しする金額が540億円、これで新ラグビー場全部が取得できるのだね。つまり540億円で建設すると同じことだ、こういうことだよね。(図2の表A赤枠部分

:そうですよ、PFIでは489億円で全部建つ(図1)のに、再開発では540億円かけても建つのは保留床分だけ、全体の3分の2しか届かない(図2表A赤枠)ってのは、おかしいでしょ。

:そうなんだね、わたしもこれには弱ったね、これはどちらかが違っていると考えるしかないね。まだ事業にかかっていないからどちらも不正確だろうが、どちらがより正確かを考えよう。

:え、そうか、間違っているのか、それらの数字の出どころはどこですか。

:PFIの数字は、20220年8月22日付JSC広報室が発表した「PFI方式による「新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営事業等」の民間事業者をせんてしました」(図1)というものだよ。

:再開発の数字はどこからなんですか。

:それは「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業規約」の中の「別表1 保留床の概要及び保留床処分金の額」(図2表A)にあるもので、この表は2023年9月24日に岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャーから引用したが、作成日付は分からない。わたしの推測では、これの作成日はPFIよりも古いように思う。


:では、ラグビー場に関する数字を確かめましょうかね。まずは再開発後の新ラグビー場の敷地規模ですが、JSC資料を見たところ43466㎡とありましたが、岩見資料(図2表C)だと43480㎡です。

:まあ、誤差の範囲だな。

:次は新ラグビー場の床面積です。JSC資料だと70349㎡ですが、岩見資料(図2表A)だと76700㎡です。

:これは誤差の範囲ではない、岩見資料が初期計画数値だろう、それよりも近年のJSC資料を信用したい。

:次は建設費です。JSC資料では施設整備費が489億円です(図1)。一方岩見資料では保留床部分51880㎡で543億円ですから、全床面積78700㎡では床価額は806億円になります(図2表A )。489億と806億とではあまりに違いすぎます。

:延べ床面積の違いもあるが、それにしても違い過ぎるのは、やはりダンピングかねえ。

:たぶん、岩見資料の規約がラグビー場PFI入札よりも前の古い資料なんでしょう、だからラグビー場の床価額の見積もりが甘いのと、予期せぬダンピングのせいでしょうね。

:なるほど、そう考えるしかないねえ。そのうちの権利床価額つまり土地売却金額はそのままだとすれば、806億円から543億円を差し引いて263億円になる。権利床が占める割合が増えて保留床が減ることになる。

:え、ダンピングで543億円の保留床は263億円になる、ということは、ご隠居がこれまで言っていたラグビー場は超高額新規負担で採算が悪いとの説は取り下げですか?

:いやいや、再開発事業規約で見ると(図2資料A)540億円の保留床取得金を新規国費投入計画だが、JSC発表資料で見ると(図1)PFIダンピングで260億に変える必要があるらしいってことだよ、これだって巨額新規税投入には違いないよ。(注:この項の下線部20232008補綴)

:う~む、ほんとうかなあ、そのうちに詳しく分かるのでしょうかね。

:そのうちに出てくるだろう権利変換計画書を見ればわかるよ。

:そんな重要な計画書が表に出るでしょうか、出てこないと思いますよ。

:いやいや、国有地の処分に関する重要な資料だから、当然に公表されるはずだよ。

●野球場がラグビー場から買った土地は?

:その権利床ってのは、現ラグビー場の土地の一部を、野球場に売却した金額に相当するものですよね、現ラグビー場土地は41100㎡で新ラグビー場では43466㎡ですから土地面積が増えているのに、一部を売却したとはどういうことです?、まちがいですかね。

:いや、間違っていないよ。ラグビー場の土地単価は、ラグビー場のそれよりもかなり高いのだよ、固定資産税の路線価を見ても現は新の倍くらい高い。だから現が新に移ると等価交換なら2倍くらいの広さを確保しその一方で野球場の土地は半分くらいに狭くなる。となると野球場を建てる広さを確保するためには、JSCから土地の一部を買う必要があるんだね。それを買ってもまだ等価交換後のラグビー場の土地面積が広い、だから増えているのだろうね。

:その売却金額が260億円ですかねえ、売った土地面積はいくらなんでしょうね。

:それはJSCサイトを見ても分からない、実際の土地評価額はどこにも出ていない。いろいろあちこち見て計算すれば分るかもしれない。

:その計算をやってみましょうか。

:もういいよ、うちに帰ってやっておくれ、歳とって計算に弱くなってしまい、数字いじりしているとむしろボケが進むような気がするんだ。

:はいはい、ご隠居はもともとこのいちゃもんを、自分のボケ防止のためにやっているんですからね、与太話はともかくとしても、これがもとでボケては困ります。

(20231005記、20231008補綴)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで国費新規投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

2023/09/30・見世物スポーツのためにラグビー場に多額税金投入やめよ

2023/09/25・意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

●関連するわたしのブログ記事

【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集


2023/10/02

1707【外苑再開発いちゃもん】国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

・いま環境破壊と悪評判の外苑再開発(正式名は都市再開発法による「神宮外苑地区個人施行第1種市街地再開発事業」)について、わたしはタックスペイヤ―として考えてみた。結論は、国立ラグビー場は再開発に参加するべきではない。

・現在この事業に対する世間の批判の目は、それによる土地利用の改変が緑の環境と都市公園の景観を毀損するものとして向けられているが、事業の採算性つまり損得についてまったく目が向いていないので、わたしはここでラグビー場のそれについて意見を言う。

・この再開発の権利者のひとりであるJSCのラグビー場は国立施設であり、土地も建物も国有財産である。つまり国税を納める者として、わたしもここにラグビー場に限って反対意見を述べる権利がある。他の民間事業者には言及しない。


・現ラグビー場は再開発事業によりその土地を明治神宮野球場と交換するが(正しくは権利変換による)、その結果でラグビー場は543.5億円もの新規支出(事業損)をするそうである。

・ラグビー場が再開発後に取得する土地の位置は、土地平面形状が不整形であり、保全森林を含むし、青山通りの商業地から遠ざかるので、固定資産税や相続税の路線評価額(固定資産税評価は6割以上も安い)を見てもわかるように、現土地と比べて単価が大きく下がる。

・その実金額は正確には分からないが、かなり安価になるはずだ。土地価格が安価になればそれに反比例して、再開発後に取得するラグビー場の土地面積は現在地よりも広くなるはずである。

神宮外苑再開発地区あたりのの固定資産税評価路額(8千円/㎡)

・ところが再開発後のラグビー場の土地は、6割増加どころか僅か6%弱しか増えていない(表C赤囲み参照)。その差分は、多分、他の民間事業者に売って権利床建設費に充てるのだろうが、それでもなお540億円の税金の持ち出し(保留床買い増し=事業損)をしないと、新ラグビー場を取得できない(表A赤囲み参照)。これは本当に等価交換(適正な権利変換)だろうか?

これらの表は2023年9月24日岩見良太郎氏公開ZOOMレクチャーから引用

・ラグビー場が再開発後に取得する(権利変換)土地には、外苑で唯一の自然植生(に近い)と言われる「建国記念文庫の森」を含むが、土地全体形状が不整形でしかもラグビー場建築には面積が不足していて、森を毀損せざるを得ない状況にあるために、世間から非難されている。狭い使いにくい土地と交換したのが間違いである。

・この建国記念文庫の森はその由緒の名称(ここで神武即位があったのか?)からして明治神宮に帰属すべき森であり、ラグビー場には不要で邪魔だから、ラグビー場との交換(権利変換)対象の土地とすべきでない。もし交換したいならこの森は除外して、その南に整形で利用しやすい面積を取得(権利変換)するべきである。

・要するに再開発によって取得する新ラグビー場は、利用しにくい土地を、不十分な面積で押し付けられて、更に540億円もの税金投入をし、しかも環境破壊と非難される羽目になっている。タックスペイヤーとしては看過できない。

・更なる不満としては、現ラグビー場の国有地が東京の都市計画公園削除の元凶であることっだ。これがあるから公園まちづくりを適用して公園削除ができた。というより、これを狙って公園まちづくり制度を作り、見事に悪用したのだろう。政府機関が環境悪化に加担するどころか元凶になることを、タックスペイイヤーとして哀しむ。

・この再開発で他の民間事業者はそれぞれ不動産投資事業として成功するかも知れないが(損しても一向にかまわないが)、国有財産は投資対象すべきものではないだろうし、一方的に毀損されるばかりの結果になり、しかも多額の国税負担を必要とするするならば、これにはタックスペイヤーとして反対せざるを得ない。

・外苑再開発をやりたいなら、ラグビー場(ここは外苑の外)を除外して、その他のやりたい民間事業者でおやりください。

・あるいはまた、見世物スポーツ嫌いのわたしだから言うが、ラグビー場は国営施設としては不要だから、現在の土地全部を他の権利者たちにできるだけ高額に売却してはどうか(市街地再開発事業では転出という)、いくらか知らないが国庫収入にはなる。そこに民間事業者がどうラグビー場を建てようが建てまいが、わたしには関心がない。ただし、公園削除したJSCつまり文科省つまり政府には、「なんという馬鹿なことをしてくれたのだ」と恨みは残る。

(2023/10/02記)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで国費新規投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

2023/09/30・見世物スポーツのためにラグビー場に多額税金投入やめよ

2023/09/25・意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

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【五輪外苑騒動】国立競技場改築騒動と神宮外苑再開発騒動瓢論集





2023/09/30

1706【外苑再開発長屋談議】見世物スポーツに興味ないタックスペイヤとしてはラグビー場に税金投入やめてよ

熊五郎:ご隠居、生きてますかあ。元気そうでよかった。

ご隠居:おや熊さんかい、久しぶりだねえ、うん、どうやらコロナから逃げおおせたようだね。ま、ビールでも飲もうよ。

:ありがてえ、では、乾杯っ、と。どうです、その後ボケは進みましたか。

:ごアイサツだね、うん、昔々仕事で都市計画やってたがね、その古い知識で現今の都市計画にいちゃもん付けるんだが面白いよ、これがボケ進行を少しは遅くしてるだろうよ。

:ハハ、他人が仕事でやる都市計画にケチ付けて、自分のボケ遅延策にするって、安あがりリハビリですねえ、で、今は何にケチ付けてるんですか。

:今というよりももう10年間もケチ付け続けているボケ対策良薬があるんだ、同じ都市計画なのにケチ種が次々と湧いてきてね、ボケてるヒマがない。

:そりゃ結構なことで、あ、分かった、それって神宮外苑再開発でしょ、森や並木が切り倒されるって騒がれてる。あんな洋風庭園に森なんてあったっけ?

:そうそう、オリンピックが来るってんで国立競技場の建て替え騒動があったろ、その2013年からだよ、もう10年もっ経つんだ、あのデカ過ぎ運動場ビルを建てるために都市計画変更をしたのはわかるが、それと関係ない外苑迄ひろげて変更した。

:10年も先のことをオリンピックと同時の様に錯覚させて、どさくさ紛れに都市計画変更に持ち込んだのですね。

:そこにいまの騒ぎの元がある。

:じゃあ開発構想を作ったのははそれより前でしょうから、10年以上もかけてなかなかの戦略ですねえ。そのころのご隠居のブログを読むと、今騒ぎになっている外苑再開発の骨格はもう決まっていたようで、それは当時の各種の公表資料を見れば、ご隠居にはわかったが一般には気づかれなかったようですね。

:世間が言うように今年になって初めて知ったなんてことはないね、昔から世間は都市計画に無関心なものなんだよ。わたしだって初めからよくわからなかったけど、沢山ブログ駄文を書いたのを読んでみると、まるで螺旋を描くように事実に近づいていれ、われながら面白い。


:都市計画で決めた道づくりや建物づくりが始まって、目に見える何かが起こってから騒ぎだすが、実はそれまでには法的手続きが終わっている。でも世間じゃあ、その手続きが秘密のうちに進んでいて、計画が公開されて意見を言う期間があっても、たったの2週間しかない、けしからん、と言ってますよ。

:そうだね、でもね、いきなり公開意見求むってのじゃなくて、それまでにも何度もその機会があるのだけどね、平素からネット公開されている都市計画情報を見るなんてしないものだよ、世間は何せ都市計画に無関心だから。

:ところでご隠居はこの前のブログに、外苑再開発は大赤字で540億円も国民負担だと、刺激的なタイトルで書いてますねえ、世間から大げさと怒られてませんか。

:そう、ちょっと赤新聞的で品がなかったね、怒られてはいないないけど、あの文章読んでもすぐには何か分からないだろうなあ、ちょっと都市計画プロ的なところもあるからね。

:その540億円も国民負担とはなんですか。

:外苑再開発をやるのは、民間の明治神宮、伊藤忠商事、三井不動産の3者と、国家機関の日本スポーツ振興センタ(JSC)だがね、民間事業者が儲けようと損しようと勝手にやってくれ、でもJSCには損しないどころか儲けてほしいと、タックスペイヤーとしては思うのは当然だろ。

:そうそう、それなのに540億円も新規負担するのが、大赤字というのですね。ラグビー場建ててタダとか、儲かるってあるんですか。

:そこが問題だ。そもそも一般的な市街地再開発事業で共同事業するなら、地権者はその土地を活用して新規支出無しで必要な建物が建つって仕組みなんだよ。だからラグビー場を市街地再開発事業で建てるというものだから、これはてっきり税金投入はないものと思っていたんだよ。だからこそめんどくさい市街地再開発事業にJSCは乗ったのだろうと思ていたんだよ。

この話のもとになる外苑市街地再開発事業の諸元
左の表の右上から4段目にある数字約54,359に注意

:でもね、そんな金出さないでラグビー場が建つなんて、ありうるんですか?

:そこが市街地再開発事業だよ、他の地権者と共同してしかも今回の様に非地権者の三井不動産にも参加させて事業をやるんだがね、細かい手法はめんどうだから書かないが、要するに三井とか伊藤忠とか明治神宮という金持ちに金をださせるんだよ、それでラグビー場を建てる。

:JSCが他の民間事業者たちを強請るとか、寄付させるとか?

:まさかそんなことはしないよ、JSCの土地の一部を他の民間事業者に売ることにより、建設費を調達して建てるとの言い方が分かりやすいかな。それが都市再開発法による市街地再開発事業の仕組みなのだよ。ただでラグビー場が建つわけがない。

:では今回の再開発でも540億円国民負担で、これが赤字だとご隠居がいうのは、そのJSCの土地の一部を売ったのだけでは建築費に足りなかったのですか。

:そうらしいね、土地売った金だけではラグビー場全部76700㎡のうち52880㎡分が買うには足りなくて、540億円ほど税金から新規に投入する必要があるらしい。

:へえー、そうですか、ならばもっと土地を多く売ればいいでしょ。

:そうすると計画するラグビー場が土地に入らなくなるのだろうね。ラグビー場を狭くすればいいのかもな?

:競技の都合でそうもいかないのでしょうね。

:とにかくね、ラグビー場が新規投入税金が無くても建つように、事業の仕組みを考えてほしい。例えばラグビー場の土地をかなり高く評価するとかしてね、全員同意型市街地再開発事業では土地評価も同意すれば自由に決められるからね、540億円分を民間事業者から拠出してほしいね。

:そういえば、この外苑は全国各地からの寄付金と労力提供で国営神社を作ったそうですから、今度は国営ラグビー場をそうしてもらいましょうか。

:おおそうだね、昔、国営神社の一部として外苑を作る時に、全国の行政システムをフルに使って、献金とか奉仕の美名でヒト・モノ・カネを徴収して作ったんだね。それは当時の植民地も含めて日本各地への国家神道の布教と明治王権の普及の立派な活動だったろう。

:じゃあ、今回は国営ラグビー場を再開発事業の民間企業からの寄付と奉仕で作ることにしましょうか。それが今回の再開発に乗った民間企業のお役目と考えよう、なんてね。

:わたしは見世物スポーツを大嫌いでTVさえ見ないから、国営ラグビー場なんてどうでもいいんだよ。そもそもオリンピックでよく分かったように、見世物スポーツは完全に商業化されているだろ、なんで国営施設をつくる必要があるんだよ、戦前日本かよ。

:まあまあ、話がが横にそれますよ。

:だからさ、新規に税金負担がないならまあいいさ、JSCが市街地再開発事業に乗ったのはそれが無いからだろうと、わたしはてっきり思い込んでいたんだよ、それが540億円投入とはねえ。

:ではJSCが土地をもっと高く売ればいいのですね。

:そうそう、もしもラグビー場が動かなければ野球場は建たないのだから、そこのところを高く評価しろとね。ラグビー場は今の位置で困らない、移転させたいなら金か土地をもっとよこせってね。

:そうですね、ゴネるのですね、金ないから再開発に乗るのや~めたっ、なんてね。

:まだあるよ、そもそもラグビー場が元凶となる都市計画公園の一部廃止ができたからこそ、明治神宮の土地に三井の高層ビルを建てることができる、この事業の最大貢献者だ。

:あ、そうですね、ラグビー場が公園未共用なので一部廃止できた、そこに三井はビルを建てる、これがこの再開発のキモですもんね。JSCは国の機関でありながら、都市の公園を減少させる原因者・元凶になるとは実にけしからんと非難され、大いに評判を落としている上に、また税金投入するなんて、ますます評判落とすばかりだ。これもゴネ種にしますかね。

:ごねると言えば、ラグビー場が移転先で建国記念の森を破壊すると市民から非難されてている、気の毒にね、そんな森の土地なんか要らないから、もう少し南に敷地を拡げてよこせとごねりゃいいのに、野球場が頑張ってできないんだろうね。

:へえ、建国記念の森なんて、あそこで神武即位があったんですか、知らなかったなあ、そうですか、ラグビー場は踏んだり蹴ったりで、再開発に参加しなきゃよかったかも。

:他の3者から貢献への見返りと非難への補償を受けるべきだよね、それにはラグビー場の保留床処分金の540億円を伊藤忠・三井・明治神宮に乗せ換えて、ラグビー場全部を権利床にすればよいのだ、そういう権利変換に修正してもらいなさい、金持ちばかりの全員同意意型再開だからケンカせずにできるだろ。JSCの再開発コンサルを受託しているらしいURはがんばれ。

:だんだん踏み込みますねえ、ご隠居の与太話は大丈夫ですかあ、まあ、JSCは再開発にうまうまと乗せられたドジなのか、それとも乗らなきゃならない何か政治的な事情があるのか、とにかくタックスペイヤーにとっては、まことに不採算な市街地再開発事業であるってことですな。

:あ、そうだ、どうだろ、また国立競技場みたいに、国立ラグビー場も「白紙撤回」してもらっては、。

:ハハハ、そうきたか、でもムリヤリ白紙のアベチャンがいなくなったしなあ、キシダさんはオリコウサンみたいだからこんなハシタガネって、やらないでしょ。

:そうかもな、まあ、わたしとしてはまだまだ揉めて、ボケ進行遅延特効薬になってほしい。

:え~、その薬代として540億円いただきます。

(2023/09/30記、2023/10/01補綴)

●最近の外苑再開発瓢論4部作(伊達の眼鏡ブログ)

2023/10/05・ラグビー場はPFI入札ダンピングで新規国費投入抑制か

2023/10/02・国立ラグビー場だけ大損の再開発にJSCは参加するな

2023/09/30・見世物スポーツのためにラグビー場に多額税金投入やめよ

2023/09/25・意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

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2023/09/25

1705【神宮外苑再開発は不採算事業】意外にもこの再開発に超多額の国民負担が必要と知った

●外苑再開発は不採算事業

 いま反対運動であれこれ取りざたされる東京の明治神宮外苑再開発事業について、事業採算の基本となる資料の一部を知ったので、忘れないうちにコメントを書く。
 2023年9月24日に岩見良太郎氏による公開ZOOMレクチャーがあった。岩見氏をわたしは知らないが、昨今の都市開発事業(たとえば土地区画整理事業や市街地再開発事業)について批判的な立場にあるらしい。神宮再開発について初めて登場した市街地再開発事業に関する専門家と言ってよいだろう。そのレクチャー内容についてわたしは論評しない。

 そのレクチャー資料の一部に事業資金計画等があり、この事業は市街地再開発事業一般としては権利者にとって大赤字の採算割れ事業であることを知った。ここで言う赤字とは、市街地再開発事業の中で権利者の収支が完結しないで、権利者たちが土地のほかに資金投入をして長期回収する必要があるという意味である。零細な権利者にはできない事業である。

 ここですこしだけ基本を解説する。都市再開発法の適用による市街地再開発事業の一般的な方法は、地権者たちが土地建物を持ち寄って、共同して新たなビルを建てる。そのうちの権利者たちの再開発前の資産に相当する床(権利床)部分を受け取り、その他の床(保留床)を第3者に売却する。この保留床売却金を建設事業費に充てることで、権利者は権利床を無償で取得することができる。(後日補足:なお、ここで無償と書いたが、実は事業の中で金銭支出しないで取得する意味であり、実際には保留床に対応する土地の売却金を権利床取得に充てる)

 これが市街地再開発事業の仕組みの基本であり、その建築規模が巨大になればなるほど保留床売却収入が大きくなり、事業採算性がよくなる。これが市街地再開発事業で建設する建築物がが巨大になる原因である。逆に言えば、だから事業に取り掛かる前に、事業区域の都市計画を変更して事業用地の容積率を上昇させておくのである。外苑再開発では再開発等促進区の地区計画がそれである。

 もちろん事業はそれぞれ事情が異なるから、この基本に忠実である必要はない。低層建築でも、赤字でも、権利者や事業関係者それぞれの判断である。金持ち権利者ならば保留床を他人に売らないで自分が買い取る投資をするだろうし、零細権利者ならば保留床を他へ売却できないならば事業を見合わせるだろう。

●事業費の7割は権利者たちの持ち出し

 では神宮外苑地区第1種個人施行市街地再開発事業(以後、「外苑再開発事業」という)の事業採算はどうか。
 結論から言えば、権利者たちにとっては採算割れが著しい大赤字事業である。何しろ権利者たちの持ち出しがものすごい。普通ならば事業をしないだろうが、金持ちばかりのメンバーだからできるのだろう。

この記事は岩見レク資料の内のここに引用した3件の表をもとに書いた

 全事業費は約3千5百億円(349,053,566千円)である。その全部を保留床処分金で賄うのだが、実はそのうちの7割近くは権利者たちが自己負担しており、非地権者で参加してきた三井不動産が負担するのは3割余である。つまり権利者たち(JSC、明治神宮、伊藤忠等)が、事業費の7割を持ち出しで行うのである。

 金持ちの民間事業者がどのような採算割れをする事業をやってもわたしには関係ないから、それらについては金銭的にはどうぞご勝手にというばかりである。
 せめて思うのは、通常の市街地再開発事業では国と都から多額の補助金が入ってくるものだが、この金持ち事業ではそれが一切ないのが、タックスペイヤーとしては幸いである。それは非都市計画の市街地再開発事業だからだが、それを選んだ権利者たちの金持ちぶりを表している。

ラグビー場建設にも新規巨額国費投入

 しかしJSCは文科省所管の特殊法人である。つまり国家機関であり、税金で運営している。わたしも納税者の端くれとしてひとこと言う権利があるので、その事業採算性についてコメントする。

 そのラグビー場の建設費用であるが、市街地再開発事業だから権利床として取得するので新たな支出はないものと思っていた。つまり第3者等床(多分、三井不動産と伊藤忠)に売却する保留処分金収入でラグビー場は建ち、新たな税金からの支出はないものと思っていた。最初に解説したように、それが市街地再開発事業の常識である。

 ところが岩見さんのレクチャーで見た資料によれば、ラグビー場の建設のためにJSCは、約540億円の支出をするのである。え、なんだこれは?、そもそもこのラグビー場建設を面倒な市街地再開発事業に仕立てるのは、保留床処分金を充てることで新たな支出を回避するためであると思っていたが、違ったか?、しないどころか540億円も支出するのである。

 ついでに書けば、明治神宮は新たに約240億円の支出(投資か)、伊藤忠は約1670億円の支出(投資)である。第3者の保留床取得者として登場する三井不動産の投資支出は約1070億円である。これら民間権利者がいくら投資支出しようとどうぞご自由にである。明治神宮は意外に金持ちなんだなあ、事業後の運営や三井からの地代で回収するのであろう。

 だが国有財産であるラグビー場については、約540億円も支出するのは合点がいかない。タックスペイヤーとしては、それだけの金を出すなら、現ラグビー場の改修費用の方が安いだろうに、とも思う。なんにしてもこの建て替えで約540億円の国民負担を必要とする。

●ラグビー場と野球場の土地交換について

 更に問題があることを見つけた。JSCはラグビー場を再開発前の位置から神宮第2球場の位置に移転して建てる。つまり外苑と土地の交換をすることになる。事業の仕組みとしては交換と言わないで権利変換というが、実は交換と同じである。当然のことに等価交換である。

 そしてこのレクチャーで新たに知った資料の中に、再開発前と後のそれぞれの土地面積があった。現ラグビー場の土地面積は41100㎡であるが、神宮第2球場がある位置に移ると43480㎡となり、事業後は2380㎡増加している。

 ところで事業前つまり現在のラグビー場の土地価格と、事業後の土地つまり現野球場の土地の価格を比べてみよう。正確には専門家による鑑定が必要だが、ここでは相続税路線価を比べてみる(ネットで知ることができる)。

 路線価を見ると、ラグビー場の前の道(外苑西通り)は2010千円/㎡である。一方、野球場の前は1490千円/㎡(国立競技場との間の道では960千円/㎡)である。これだけで土地総額は分からないが、両方の土地の単価の比は想像できる。現ラグビー場の土地は現野球場の土地よりも6割ほど高いのである。(当初3割と書いたが6割に修正した20231002、下図参照)


 ということは、現ラグビー場の土地が野球場の場所に移れば、いまよりも倍以上の広さになるはずである。だがこのレクチャーでの資料を見るとわずかに6パーセント弱の面積増加に過ぎない。とすればその差分の土地価額は建物建設費に変換(権利床)されるのであろうが、それでも建設費には届かないので約540億円の支出をすることになる(のであろう)。

 一方でに入れ替わって建つ神宮球場の移転先の土地(現ラグビー場の位置)は3割ほど面積が減るはずだが、そうはなっていない。減らすと野球場が入らないからそうはいかないのだろう。土地全体の広さは変わりようはないのだから、結果的には野球場(明治神宮)がラグビー場の土地(国有地)を買ったことになり、そのカネはラグビー場の建設費の一部になるのだろう。このような権利変換だろうが、要するに結果的にJSCは土地の一部を売ってラグビー場の建設費の一部に充てるのだ。

 この概略推測計算がどれほど正しいか自信ないが、どうもすっきりしない。権利変換計画書を見れば明確にわかるが、国有地処分にかかることだからいずれ公表するのだろう。

 高額な土地と安価な土地を交換するのだから、広すぎる土地の一部を売却すれば(一部転出補償金)、国民負担はないどころかうまくすればもうかるかもしれないとの、タックスぺーやーとしての考えは甘いのか
 市街地再開発事業だから権利者負担はないものと思いこんでいたのが間違い、ということになる。なぜ国民負担が必要な再開発なのか、もっと国民にとって採算をよくしてはどうか。

●JSCはもっとがんばれ

 JSCは権利交渉でもっと頑張ってもらい。自分が使う建築を自分で買い取り、つまり保留床買取をしなくてもよい方法にしなさいよ。せっかく市街地再開発事業に乗ったのだから常識的に行きましょうよ。
 全員同意型事業なのだから、権利変換で権利証として全取得できるように、三井不動産や明治神宮と談判交渉してほしい。このラグビー場建設事業を委託されているらしいUR都市機構には、再開発プロとしてもっとガンバレと言いたい。

 この再開発ができるようにした、つまり公園廃止をした原因者(元凶)であるJSCは、事業者の中で一番の貢献者であるのだから、もっと強い立場で権利交渉してはどうか。下世話に言えばゴネルのである、町場の再開発によくあるようにね、勿論冗談。
 JSCはこんな赤字再開発事業に乗った(乗せられた)のが間違いだったかもなあ、今のところで建て替えるか修復する方がよいのかもなあ。

 以上は、初めて見た基本資料だけで、年取った今も多少は覚えているプロ的な知識で考えたことであり、詳細なことを知らないヒマな老人のピンボケヒマツブシたわごとである。
 まだしばらくボケ進行遅延策に外苑再開発を利用することができそうで、うれしい。

(20230925記)

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2023/09/11

1704 【組踊を観る】横浜能楽堂で4年ぶりに琉球芸能を見て妙なことを連想

 昨023年9月10日の午後、横浜能楽堂で沖縄の組踊などを観た。このまえ組踊を見たのは2019年(「執心鐘入」と「道成寺」https://datey.blogspot.com/2019/02/1185.html)あったから4年ぶりである。野の能楽堂に来たのは6月の能「二人静」以来である。コロナが引いてようやく能楽堂も満員のようであった。


 わたしが芸能を見るのは能との比較が目的だから組踊「万歳敵討」(ばんざいてぃちうち)さえ見ればよいのだが、その他に踊りや独唱もあった。初めて聴いた独唱は「二揚仲風節」(にあぎなかふうぶし)、歌い手は西江喜春というかなりの高齢者であったが、高音を使い分けて上手であったと思うがよく分からない。しかしちょっと能楽堂の屋根から異界のものが下りてくる気配を感じた。

組踊「万歳敵討」

 「万歳敵討」は仇討ちものだが、プログラムに概要の筋が書いてあるものの、言葉をほとんど理解できなくて、字幕表示を欲しかった。能からの翻案ものならば、元の能を知っていれば類推できるのだが、それもないと会話場面の前場はお手上げである。

 組踊の演技をどう観るのかもわからないが、とくに勉強する気にもならない。だが今回あらためて思ったのは、若い女や若い男の装束と顔の化粧である。若い女はともかくとしても、若い男(若衆)の女に近い衣装と顔化粧の、あまりに美しすぎることである。男と女の区別がほとんどつかない。なお、舞台上に居る人たちは、地謡(歌と音楽担当)には女性がいるが、役者はすべて男性である。


 特に思ったのは、若衆の化粧の特別の美しさであ、あの化粧の目で舞台上から見つめられると、女性はボ~ッとするかも、いや男もそうかももしれない、なんて思っていて、突然に連想したのは今世間で妙に話題となっているジャニーズとかいう芸能タレント事務所の前社長(男性、故人)が、実はお抱え芸人少年専門の強姦魔であった事件である。

若衆徳牛節  若衆の扮装

 要するに近世までは普通であった男色行為が、現代では不同意性行為として犯罪となった(はずの)事件である。芸能界では東西を限らずこの類のことがしょっちゅうある(あった)らしいが、わたしはTV観ず、週刊誌も読まず、芸もゲイも知らぬことばかり。

 それで、もしかしたら組踊の役者たちもかつては、琉球貴人たちの男色の相手であったのかもしれないと、能の世阿弥のことに思い至り、ふと連想が働いた。
 時代は14世紀、時の将軍・足利義満(弱冠16歳)があるとき能を観た時に演じた夜叉若(弱冠11歳)という美少年を気に入り、すぐさま側において寵童とした。これが後の世阿弥である。

 そして世阿弥は時の独裁的権力者の庇護のもとにその天才を発揮して、いまにつづく能楽を大成させたのであった。他の能役者が一般的に貴人の男色の対象者であったどうか知らない。それが時代が近世になって武家の社会での衆道であり、町人の社会では歌舞伎役者や陰間がそうであったようだ。

 そしし話が琉球沖縄に戻れば、その王府における芸能であった組踊は、近世初めに朝貢していた明国からの使者たちを接待するために日本の能を参考にして創作したのだから、その芸能者は男色相手であったかもしれない。これは類推である。
 薩摩の侵攻によって支配を受けるようになった近世からは、薩摩からの支配者の接待があるとすれば、有名な薩摩の男色が持ち込まれたかもしれない。これも類推に過ぎない。

 留意することは、日本では中世・近世において貴族支配階級においても町人階級でも男色は普通のことであったらしいのである。
 中世の説話集「今昔物語」の諸所に男色の話が出てきて、これはなんだと思ったことがある。近世の「東海道中膝栗毛」にも弥次喜多コンビが実は男色コンビであることが出だしあたりに書いてあるの発見して驚いたこともある。

 近世以前の日本では性に対する考えが、近代以後とは違っていたらしい。多分、近代になって外国から入ってきたキリスト教文化が男色を排除したのだろうか。
 三島由紀夫や釈超空のそれを、わたしでも知るように語られるのはこの30年くらいの内か。

 少年強姦事件の社長は、死ぬまでそれが犯罪とは思っていなかっただろう。どんな天才芸能者のを育てたのかしらないが、たぶん、現代の足利義満のつもりだったのだろう。
 時代のもたらす人権と性に関する文化の変化がそれを犯罪に仕立てたが、その時は肝心の当人は死んでいて、これはある文化過渡期の矛盾現象なのだろうか。

 それにしても能楽堂の舞台に現れた美少年(若衆=元服前))・美青年(二才=15~25歳男子)の化粧した舞台顔は、どれも同じように見えるのだが面ではなくて本物の顔だからそれなりに個性がある。能では能面があるから、そうはならない。
 一方、わたしはTV見ないから事件被害者美少年たちを一人も知らないが、たまに新聞の広告面に美少年芸人集団公演とかで全員の並ぶ寫眞が登場するので、彼らなのだろう。
 それがどれもこれも同じ髪形と目付きをしていて、なるほどこれが今流行りの顔なのか、そうか、見ようによれば美少女と紙一重の感、フムフム、これが現代の人気男の顔なのか、へえ~。

ネットで拾った芸人グループ写真

 ついでに地球上世界のLGBTXへの容認度合いの地図がったのでのせておく。概してイスラム世界が不寛容らしい。
性的指向に関する世界地図(東京新聞20230910)

 話が組踊と関係ない方向になってしまった。(20230910記)

ーーーーーーーーー資料ーーーーーーーーー

●開館25年謝恩 横浜能楽堂「中締め」特別公演
第2回「琉球芸能600年」 2023年9月9日午後一時開演

【第1部】
王府おもろ「あおりやへが節」「しよりゑと節」  安仁屋眞昭

若衆踊「若衆特牛節」 佐喜眞一輝 知花令磨

二才踊「麾」 田口博章

組踊「万歳敵討」 謝名の子:東江裕吉、慶雲:新垣悟、高平良御鎖:川満香多、
 高平良妻:佐辺良和、高平良娘:伊波心、列女1:佐喜眞一輝、列女2:髙井賢太郎
 供1:金城真次、供2:上原崇弘
 道行人:嘉手苅林一、 きやうちやこ持:下地心一郎

独唱「二揚仲風節」 西江喜春

女踊「瓦屋節」 田口博章  

歌三線:西江喜春

地謡
歌三線:仲嶺伸吾、照喜名朝國、仲嶺良盛 
箏:名嘉ヨシ子
笛:大湾清之 
胡弓:森田夏子 
太鼓:比嘉聰

ーーーーーーーーーーーー

●これまでの組踊鑑賞記録(まちもり散人著)

怖く哀し女ストーカー「執心鐘入」と能「道成寺」2019/02/10
琉球古典芸能の組踊をみて現代の沖縄問題考える2015/01/19
横浜能楽堂で琉球のゆったり時間を過ごすぜいたく2011/06

●関連「趣味の能楽等鑑賞記録」(まちもり散人著)

●まちもり散人ブログ 「伊達の眼鏡」 「まちもり通信


2023/09/01

1703【百年目の日に想う】次の巨大地震は巨大津波に加えて巨大核毒を伴って現れるはず

 昨日、久しぶりに映画を見てきた。「キャメラをもって男たちー関東大震災を撮るー」と題して、撮影者に焦点を当てた映画であった。その道の人たちには面白そうだが、被害の様相を見たいと思って行った私には生煮えであった。そのせいもあり、明日は震災中に起きた朝鮮人虐殺「福田村事件」を見に行ってこようと思う。 

 ●今日は関東大震災百年目

 今日2023年9月1日は、ちょうど百年前の今日1923年9月1日の昼、神奈川県を震源とする巨大地震が発生した日である。「関東大震災百年」とて特別なイベントがあちこちであるようだ。

 その発生ゆえに多くの人間が死んだからとて、その日から地球が太陽を百周回したとて、生物的にあるいは物理的には何の意味もあるまい。
 だが文化を持つ人間の側では、覚えやすい日に意味づけをする。初七日とか誕生日とかも同じことらしい。多くの人間が死んだことがなんと言ってもその日を100年間とかの節目に思い出すことになる。「関東大震災」で死んだ人間は約10万5000人だそうである。

 ではその「関東大震災」なるものは、地球上の人間のどれほどに影響を与えたのか。地球全体の人類から言えばそれによって影響の度合いはどの程度か。
 その頃の地球人口は約20億人だったから、105千人の死は誤差範囲である。一方、日本人口は約5800万人だから0.18%となる。このように大局的な数字で見るのは意味がなさそうだ。つまり、人間の側が思うほどには地球の側には大したことではなさそうだ。

●近現代日本巨大震災の比較

 では人間側の問題として見ることにして、近現代の日本での大地震による被害を比べてみよう。この表を見て、死者数と被害額(GDP比、GNP比)では、関東大震災がダントツにもの凄い事件であったと分る。

 こうやって比べると記憶に新しい東日本大震災被害額が、意外にランクが低いものだと不思議である。被災区域の広さでは多分ダントツに広かったであろうが、大都市を含まないとこのように評価されるのかと、興味深い。

 ということは、今話題になる次の関東大震災は、この100年で東京一極集中より富が集中しているから、これまでと比較にならない巨額の被害になるだろう。
 その一方で100年前の関東大震災よりも死者は少なく見積もられているのは、100年前と比べて都市人口は増えたが、耐震耐火建築が多くを占めているということなのだろう。

●震災とは地震+津波+核毒

 ただし、ひとつだけこれまでの大震災とは決定的に違うことが起きそうなのは、核問題である。12年前の福島原発事故が今も国際的な問題を引き起こしているように、次の地震でどこかでも同様なこと、あるいはそれ以上のことが起きると、復興は実に複雑なことになる。

 巨大地震が振動による被害だけでなく、巨大津波を伴う水害を引き起すが、これに加えてもうひとつの引き起こす巨大災害に核毒拡散があることをわれわれは知った。
 振動や津波被災は国内で済むが、核毒拡散は海外にも広がるし、その被害発生時間が一時的なものではなくて、人間の生命を超える時間を要することに、われわれは対処できるのだろうか。

 現に最近になって起きた国際問題は、フクイチの核毒汚染処理水の海洋放出に対して、大陸やオセアニアの諸国が懸念や反対を示していることである。とくにチャイナは日本の海産物輸入禁止に至って、経済問題から外交問題へとことは広がりつつある。

 ということは、日本国内時だけじゃなくて、大陸や半島諸国にある核施設において巨大震災が起きると、日本が被災国になる恐れが十分ありうる時代が来ているということだ。
 次の巨大地震でもこの新たな核毒問題が起きることを前提に考えなければならない。さて、それを考えて対策があるのだろうか。これはもうお手上げのような気がしている。

 おもえば100年前の関東大震災も、28年前の阪神大震災も、12年前の東日本大震災もその時は絶望的な被害だったが、なんとか復興しているのだから、人間は偉いものである。
 だから、つぎの関東大震災が来ても何とかなるのだろうと思う、というか、そう思うしかないのである。ただし、その時はこのわたしはもうこの世にいないはずである、というか、そう思いたいのである。            (20230901記)

参照:地震津波核毒おろおろ日録


2023/08/26

1702 【核毒オロオロ】福一核毒汚染処理水放出って尾銅山鉱毒事件・水俣チッソ水銀中毒事件を連想させる

 2011年3月に東日本大地震で大事故をおこして廃止となった福島第1原子力発電所(「福一」という)は、それ以来12年経ってもいまだに廃炉作業中である。メルトダウンした核施設の廃炉というほぼ前代未聞の仕事だから、いつまでかかるのか誰も分からない。

  こういう仕事をしている人たちは、働くことへモチベーションをどう保つのだろうか。労働賃金がかなり良いのだろうか。あるいは誰もやったことにない先進的な仕事という動機づけがあるのだろうか。それにしても、何かを創造するのではなくて、危険な核のゴミを作り捨てる仕事だから、どう考えてもむなしくなるだろうと思う。

 核施設廃炉という超特殊な仕事は、これからどんどん需要が発生する。つまり現在のいくつかの核発電施設が次々と廃炉の時期を迎えるからだ。ここで仕事をした人々は、その専門家として次々と求められる人材になるのだろう。それは世界中の核発電施設にも言えることだ。まさにダーティワークであるが、世の中に必要なことだ。

福島第一原子力発電所と汚染処理水放出先

 さて「福一」はこの8月24日から海に小便のお漏らしを始めた。この敷地に降ったり流れてきたり湧いたり利用されたりして核毒に汚染された水を外に流すことは汚染拡大になるからできない。だから敷地内にタンクをいくつも作ってどんどん溜め込んできたが、溜まりに溜まってもうタンクの置き場がなくなってきたという。いわば膀胱に小便がたまって我慢できなくなって、お漏らしせずにいられなくなったのだ。

 ところが「福一」小便はいろいろな核の毒が含まれている「汚染水」なので、この毒を除去する処理をした「処理水」に変換し、それを更に海水でで薄めてから、敷地の外に漏らすそうだ。つまり「核毒汚染処理薄め水」であるが、みじかく「処理水」というらしい。。それもいきなり海岸に漏らすのもはしたないとて、1キロほど沖まで地中に管を通して放出するそうだ。

 その海には放出処理水を飲みながら生れ育つ魚はいないのだろうか。漁民からは処理水放出大反対の声があるのだから、とうぜん魚はいるのである。
 わたしは2014年9月に「福一」の北隣にある請戸漁港に視察に行ったことがある。地震と津波と核毒の三重苦に襲われて、集落も港も田畑も荒れ果てていた。漁船が陸上の草原に何隻も浮かんでいた。
 その漁民たちは東電からどのような補償を受けたのだろうか。いままたこの「核毒汚染処理薄め水」で直接あるいは間接の漁業被害が生じる恐れがあるらしい。

 これで思い出したことがある。30年以上前のことだが、瀬戸内海の沿岸部の広大な土地に、レクリエーションリゾート地を開発するという公的な仕事に携わったことがある。このリゾートから発生する汚水を三次処理した「処理水」を海に放出する必要があった。
 反対する漁業者と行政当局と事業団体との調整により、いくばくかの解決金を漁業組合に支払い、排水は海岸から1キロ先まで地中に排水管をのばして海に放出した。福一の処理水と同じである。

 そして開発完了オープンから1年後に訪ねて聞いた話に笑った。その処理水放出のあたりの海面に、養殖カキ筏が集まってきているとのことだった。それは3次処理しても残る有機物が養殖カキのエサになるのであった。もちろん元は糞尿だから畑の下肥を同じである。
 まさかこの福一処理水に魚の餌になる物質が含まれるなんてことはあるまいが、核毒が魚類の遺伝子に作用して、巨大な魚が捕れるようになるなんてことは、、あるまい。

 あの請戸漁港と集落は復興したのだろうか。復興して漁業をやっているのだろうか。ようやく復興したら、今度は「核毒汚染処理薄め水」がやってくる。これが東電が言うように本当に魚に影響なくて、それを食う人間に影響がないと言えるのか、それはいつになればわかるのだろうか。廃炉がいつ終るか分からないのだから、こんご毎日毎日「処理水」がやってくる。薄められた核毒は、あのチッソ水銀中毒事件のように、魚類に濃縮蓄積されて有毒になるということはあり得ないのか、誰も分からない。

 そもそも排出以外の処理方法はないのだろうか。これが最も安い方法なのだろうか。例えば水蒸気にして空中に放出方法はあるのだろうか。あるいは敷地全部を大きな湖にして水をためる方法はどうか。この前例は、足尾銅山鉱毒事件で、銅山から流れ出る鉱毒水を溜めるために作った巨大な人造湖の渡良瀬遊水地である。このことは10年前のブログに書いている。参照:https://datey.blogspot.com/2013/12/875.html

福島第1原子力発電所と渡良瀬遊水地の同スケール比較

 「福一核毒汚染処理薄め水」をボトルに詰めて、福一名物で売るのはどうか。ふるさと納税の返礼品にしてはどうか。どなただったか政府自民党の偉い方が、その処理水は飲めるとおっしゃったとのことだから、これもありうるだろうと思う。(20230826記)

参照:地震津波核毒おろおろ日録